なんだかんだでドラフトまで一週間を切りました。マイペースを旨とはしているものの、後三度は更新したいところ。なので足早に進めたいと思う。
それでは高校生編の続きをどうぞ!
<本日の足早>
先日思わせぶりに次回は松尾などをと書きました。名門大阪桐蔭の扇の要、その松尾から書かせていただきます。
松尾 汐恩(大阪桐蔭)
実は夏の大会の最中、松尾には大きな欠点があると書いた。このあたり、
現状ではインコースのストレートは少々甘く入っても打てないだろうとし、
”根拠ですが、まず松尾は左腰を開くのが早いところにある。そこは本人もかなり意識しているようで、トップを深めに取り、上半身を必要以上に捩じってみせるのは、少しでも左腰の開きを我慢するためではないか。そのため投手から見れば背番号がはっきり見えるほど。
しかしそれでも左腰は早く開きがち。本来打者は前の肩と腰のラインでギリギリまで壁を作り、そこで溜め込んだ力を一気に爆発させスイングスピードに活かす。しかし松尾のように壁を作り切れず、左腰が先にほどけてしまうと、その分スイングの始動、初速が鈍くなるよう思います。そのため身体に近いインサイドのストレートのポイントに対してはバットが間に合わない。”
と書いた。
まぁそもそもインコースを綺麗に捌いて見せる高校生なんていません。がっ、それ以上に左腰の開きの早さが気になるということ。
ただプロで大成した選手でも、左腰の開きに問題を抱えていた打者はいくらでもいました。例えば今岡もそうでしたし二岡も同様。
今岡は野村に干されながらも四年目ぐらいには矯正できていた。二岡は左肩で踏ん張って、回転軸を斜めにしながらもその欠点を自分のものに取り込んでいった。つまり癖の範囲で収まり大事には至らなかった(二岡はもう少しやれたとは思う)。
だいたい長嶋も山本浩二も落合も左の腰の開きは早かった。なのでそこについて殊更あれこれと言うつもりはない。
松尾について過去の選手の姿を重ねてまで考えたいのは、今岡や二岡にしても、下のカテゴリーにいた頃にどうだったのか、といったところ。つまりは、東洋大時代の今岡や近大時代の二岡にはそういった癖はなかったのだ。プロ入り後早々、えげつないインサイド攻めに仰け反らされ、アウトコースのスライダーに泳がされているうちに、左肩から腰のラインや壁を崩されていったわけで、結論を急ぐなら、高校のレベルですでにそれが崩れている松尾をどう評価すればいいのか、そこに尽きる。
甲子園でホームランを連発する右のスラッガーは、ほぼ毎年現れます。松尾とよく似たタイプはといえば、ここ十年なら中村奨や北條を思い浮かべる。正直、二人とも良いバッターだと今でも思ってはいる。まだ何とでもなる、そう思う反面、ここまでの空回りに、一ファンとして喪失感を感じてもいる・・・・。
元々この二人、癖持ちであった。中村奨は金属特有の衝突打ちを、北條は軸足をズラす上に膝の送りの甘さを、それぞれ抱えていた。
正直、松尾の上位指名にはリスクを感じる。ただ、彼は左軸に重心が残りステップの幅が狭いところに光明を感じてはいる。我が阪神の1位指名も囁かれているだけに、彼の将来に幸多かれ、そう願わずにはおれない。
捕手の上位指名に物申す!
ここで松尾から少し話が逸れるのであるが、捕手の上位指名について思うところがあるので書いてみたい。
正直、これを調べながら作ってて心底疲れましたわ、誰か誉めて・・・・。
もうあんまり書く元気もないので、気が付いたことだけまとめると以下の通り、
・ 上位指名の歩留まり悪し(1、2位の討ち死に13人、1位で文句なしは森のみ)
・ 3位指名の正捕手が多い
上の表をどう見るか意見は別れると思うのですが、上位下位に関係なく歩留まりが悪いような・・・・。アマの捕手の見極めには各球団苦労している、そうも感じる。
それと高卒の正捕手は4人(中村、曾澤、森、田村 ※ 松川は保留)のみ。やはり高卒の捕手上位指名はリスクが高いように思う。
ここで再度松尾について触れておくと、彼については捕手というよりも野手という括りで評価したほうが良いと思うのですが、いかがでしょうか・・・・?
それとスカウトに捕手上りが少ないのも、評価が上手くいかない一因であるかもしれません。
捕手経験者は引退後裏方に回るにあたりいろいろと他に需要があるので、なかなかスカウトにまで辿り着かないというのもあるのか。ただ令和の昨今、打撃コーチには右投げ左打ち専用が一人は必要、とか言われていますので、捕手専用のスカウトがでてきてもおかしくはない、そんな風に考えたりしています。
イヒネ・イツア(誉)
ソフトバンクが宣言しましたか・・・・。ドラフト当日、結果的にどこかが手を挙げるとは思ってました。そこに早々の1位表明。ソフトバンクなら確かに、そう肯いてみたり、これ以上奇をてらうのはやめた方がと思ってみたり、まぁある意味この十年、球界のパイオニアであり続けたわけですし、行くところまで行ってもらいましょう。
不作の今年なのだから、1位指名は当然ありだと思っています。
でっ、ここで ”身体能力” の高さと野球の関係について、少し書かせていただきたい。
”身体能力” の高い選手は、一般的に習得が難しいだろうと思われている技能でもすぐに自分のものにする、そんな傾向があるというのは色んなスポーツ現場から漏れ伝わってくる。恐らく野球においても同様の部分はあるのだろう。
しかして野球界には旧態依然とした体質が残っている。また、打撃や守備においては ”技術” という側面も色濃く、それ故に ”野球道” などと語られたりもする。「良い選手になりたければ、近道などないと思え!」 そんな説教を繰り返し聞かされたものです。
特に高校野球においては指導者と選手の間で、チームとして個として、上を目指していくのならその道すがら、少なからず軋轢はあるもの。
指導者「冬場はこのメニューで練習やっておけ!」
選手 「・・・・わかりました、でも、それに意味とかあるのでしょうか・・・・」
指導者「い、意味・・・・? 黙ってやっとけや!」
選手 「でも、やってみたい練習は他にもたくさんあるし・・・・」
指導者「先輩はみんなこれで上手くなったんだ!」
選手 「人は人だし、自分たちに合った練習方法について考えてみたいので・・・」
指導者「やかましーっ! 何度も言わすな、黙ってやれーっ!」
まぁここまで極端かどうかは置いておくとして、ドラフト候補の選手を生み出す過程においても、決して一筋縄では収まり切らないドラマがあるのだと思う。
上のやり取りが一概に良いか悪いかは判りません。ただ野球が ”確率” のスポーツであることを踏まえるならば、一理あると思える部分はある、個人的にそう思う。
たとえば、投手がアウトコース低めに150㌔の球を何球も続けて投げられたとしても、また打者がその球をバックスクリーンに打ち返せても、共にそれが月に一度というのならお話にはならない。更に言えば、その投手が三度の登板に一回、打者が十試合に一度、それができるようになっても同様に駄目だろう。つまり、プロになるべき選手に問われてくるのは、自らのベストパフォーマンスの ”再現性” であり、選手の優劣はそこに集約されると言っても過言ではない。
あえてパラフレーズするならば、身体能力の高い選手が、教えたらその日のうちに150㌔の球をアウトコース低めにビシバシ投げられるようになりました、ということと、それができるようになった選手が、登板の度に、毎イニングどの打者に対しても、またどんな局面でもそれができるまでになった、というのは別の次元の話だということです。
はっきり言えば、”再現性” については、”身体能力” との因果関係は薄いのではないか。というのは、江越を眺めていてつくづくそう思えてしまう。因みに江越の打率におけるキャリアハイはデビューの年で、ピークはと言えば四試合連続本塁打を記録した二年目の4月。更に申し上げるならば、入団直後の春のオープン戦の段階で、走攻守において今できているレベルのことはすべてクリアしていました・・・・。
愛すべき選手であり、阪神を離れて欲しくはないと思う反面、さすがに何とかならんもんかと思わず考え込んでしまいます。
確か一昨年だったか、MLBとNFL、NBAの黒人選手の比率について書いたことがある。
五年前の数字ながら、MLBにおける黒人選手の比率はたったの7.7%。NFL、NBAはそれぞれ、69.7%に74.7%。アスリート大国アメリカにおけるこの数字をどう見るか。MLBはアスリートから見放されたという向きもあるのだろうが、恐らくそれだけではないと思う。ベースボールの特殊性を垣間見る思いです。
野球界における双子問題
脱線ついでに ”身体能力” と野球についてもう一つ。
野球界では双子が共に活躍した、というケースがほとんどない。因みにサッカーでは結構よく聞く話である。個人的に二十年前までは、W杯やヨーロッパ選手権を真剣に観ていたので、双子選手と言えば、例えばオランダのデブール兄弟やケルクホフ兄弟、またスウェーデンのラヴェリ兄弟などが、サッカー界沸かせた双子の代表と言えるのではないか。
今でもサッカー界には双子の活躍例は多いと聞く。
ラグビー界においても、イングランドのアンダーウッド兄弟や、国内では彦坂ツインズが記憶に新しい。
では野球界はどうか? この秋ソフトバンクを離れる松田には双子の兄がおり、結局プロにはなれないまま社会人野球でキャリアを終えた。その昔、我が阪神の暗黒期に、アスレッチックスの本塁打王カンセコの双子の兄がMLBではパッとせず、日本の弱いチームなら何とかなるやろ、って感じで売り込みを仕掛けてきたことがあった。結局、”うちには和製カンセコ(金子:田丸案件)がいるので” ってことで断りを入れ難を逃れた。確か近鉄が引き取ったと記憶している。無論まったく駄目だったということは言うまでもない。
双子の兄や弟は、本人にとって最も自分に近い ”個体” であることに間違いはない。それは ”身体能力” という点においても同様だろう。にもかかわらず、日米野球界において成功事例がほとんどない(まぁ、あえて言うのなら、この国の野球における双子の成功事例は達也、和也の上杉兄弟だけだろう・・・・)。
ほぼ同じ ”身体能力” の持ち主だというのに、これだけの差が出るというのは何故だろうか? あえて持論を続けるが、その謎を解く鍵は ”再現性” と、それを支える個の能力にあると思っている。
ベースボール界では修行に準じるプロセスが、形を変えながらも残っているのだ。また日本球界では逸材発掘において、”次男を狙え!” というのもあって、そのあたりについてはいつか書いてみたいと思う。
内藤 鵬(日本航空石川)
恐らくは1位で消えるであろう候補の一人である。スイングスピードは確かに群を抜いている。一方で、DeNA細川や、ソフトバンクのリチャードとどう違うのか、という声も上がっているようである。もっと動画のサンプルを観なければという気もするが、私もそこに一票だ。もちろん細川もリチャードも良い選手だと思ってのことである。
西村 瑠伊斗(京都外大付)
京都の王貞治、だそうです。去年の秋五試合5発。この夏は六試合4発。特に夏の打席数は18、四死球は実に10。まさにマークされる中で本塁打を量産したと言える。
本人は王さんの昔の画像も入念にチェックしているとのことだが、右投げ左打ちの彼がいくら真似たところで、左投げ左打ちの王さんの一本足打法の完コピは無理だと思うが・・・・。
つまり、あの門田も片平も、左投げ左打ちだからこその話。ただ、彼の一本足も良い感じではある。例えるならば長島政権下で王さんの前を打ったこともあるスイッチヒッター 口イ・ホワイト。彼も来日してすぐ世界の王のオーラに平伏したのか、左では一本足を試していた。そして結構な域に達してもいたのだ。なんとなく打席で猫背気味な今の西村の姿と被る。
個人的には高校時代から一本足というのはどうか、といのはある。高いレベルの野球に触れ、体が前に流れボールを迎えに行ってしまうのを何とか堪えるための苦肉の策、それが一本足のように思うからだ。つまりあのレジェンドイチローも、高校時代から振り子をしていたわけではない、そういうことだ。
この選手についてもプ口がどのように評価しているのか知りたい。打席の彼はサイズ以上に小さく見えるが、マワンドに上がればMAX145㌔の右腕であることも申し添えておこう。猫背ながらきっと背筋も強いのだろう。
三塚 琉生(桐生第一)
西村同様注目している投手兼外野手が桐生一の三塚、こちらは左投げ左打ち。彼こそ一本足をと思ったりするのだが、だから取り上げたというわけではない。今年の高校生でスイングから凄みを感じるのはまさしく彼だ。
右打ちの大砲の希少性が声高に叫ばれる昨今ではあるが、実はその裏で、同様に左投げ左打ちも絶滅寸前、大砲どころかその存在自体が激減の傾向にある。今年など探してみるとセリーグは近本、 パリーグは島内ぐらいか。言うまでもなく共にアベレージヒッター。真の左の大砲はすっかりと途絶えて久しい。
減った理由は右打ちの希少性が声高に論じられる背景と同じ。こいつはという身体能力の高い右利きの選手が、少年野球の頃から左打ちに変えられてしまう。つまり増殖する右投げ左打ちの煽りを食って、実は左投げ左打ちも人知れずベンチや控えへと追いやられているのだ。
利き腕でバットを操作できる右投げ左打ちは上違が早く重宝される。逆に右投げ右打ちや左投げ左打ちの打者は、育成に時間が掛かるというのもある。きっと目の前の結果を欲しがる指導者から敬遠されるのだろう。
アウトコース低めをセカンドの頭どころか右中間に持っていく、そんな左投げ左打ちの打者にしかできない巻き込むようなスイングを、三塚は体現できる逸材である。絶滅危惧種代表として指名して欲しい。
ちなみにこちらも元エースで最速は144㌔だそうです。観たことはないけど付け加えておきますね。
本日は以上です。