Till Eternity

どこよりも遅く、どこよりも曖昧に・・・・

2023 ドラフト点検 日ハム編

 今回取り上げるのはファイターズのドラフトです。ここについては色んな取り方ができる。「野球太郎」の表紙を射止めた良いドラフトだったと言い切ることも、逆に補強ポイントを埋められなかったと見ることも可能。最下位ですからね、なのに五人で打ち切っちゃったし。

 私はといえば前者です。細野を評価していたので、それがまさかの外れ外れでも獲れたわけですから御の字かと。というわけで今年のドラフトは、楽天に巨人、西武とファイターズ、ここまでが勝ち組だと思っています。あくまで私の中の話ですがね、ええ。異論は認めます。

 以前、細野の指名が遅れたのは、外れ一位での競合を嫌がったチームが、周りの出方を読み誤り意識的に避けたのではないか、というようなことを書いた。

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 第一回ドラフトでの鈴木啓示のケースも恐らくこのパターンであろうとも。まぁ、今になって穿り返しても詮無い話。ナチュラルに細野の評価が低かったという論調が、すでに主流になっている。所詮は結果が全てのこの世界ですからね。

 与四死球率の高さや、秋に一部で一勝しか挙げられなかった点も、その評価を補強する格好。正直いえば、また数値かって感じ。数値や数字に固執するなら、被打率が東都六人衆の中で一番低かった点は、なぜ度外視なのかよと。悪い数字だけを論って、やっぱりこいつは外れ外れ一位、とするのはフェアじゃないでしょと。

 この秋、細野と対戦する打者は皆、明らかに待球作戦を取りファーボール狙いでした。普通そうします。東洋に喰われたら、そこは入れ替え戦行きを意味しますから。だからこそ非打率があそこまで低く収まった、というのもある。あっちが出ればこっちは引っ込む。つまり数値はあれこれ並べて、いろんな角度から眺めるべきかと。因みにその与四死球率にしても、四年次の髙橋遥よりは良いので、プロ入り後制球が良くなる可能性だってある。

 もちろん欠点は他にもたくさんあります。以前指摘したようにインステップは、腰や膝ヘダイレクトに影響するでしょう。なので一年通じて上で登板するのは難しい。ただそういった欠点のあるなしに関わらず、近年の大学生は総じて追い込みを掛けられていません。よくここで高校七年生というのはそこ。そもそも即戦力といえるような物件の方が稀。なので先に挙げた数値の悪さについても、前向きに織り込むべきだと思います。

 上手くいけば、WBCで日の丸を背負える逸材だと素直に思う。いきなりWBCと大きく出ると気が遠くなるかもしれませんが、今回の指名選手を眺めてみても、その可能性について言及できるようなスケールの大きな選手はそうはいない。細野の器の大きさ、私は評価します!

 何はともあれこうまで書いた以上、期間はどうしましょう、三年ぐらいが妥当か、 ドラフトオタとして細野と武内、ここでしっかりと比較検証していきたいと思います。


 

 

 二位の進藤はディフェンス型の捕手で、大型の若月だと思ってください。時折センター中心に大きいのを打つ可能性もありますが、打っても二割そこそこではないでしょうか。強肩は買うが、二位の頭は少し早いように思ったな。

 捕手の指名というのは本当に難しい。私はアマレベルの捕手は野手という括りで見た方が良いとするタイプです。プロは半年で同じ対戦相手と二十試合以上するわけですが、アマは違います。大学でも年に五試合ぐらいか。しかも春にやって次が秋だと、まったく違う選手になっている可能性もある。そんな中で鍛えられたインサイドワークを、プロの基準で評価することに意味があるとは思えない。

 つまりどれだけアマ時代に優れたリードをしていても、結局プロ入り後、ほぼゼロベースからやり直す。”野球偏差値”とか、その類の表現もあるけど、あれって意味あるのか。もしインサイドワークに拘るのなら、自頭が良い選手を獲るのをお薦めします。なのでアマの捕手に限っては、統一筆記試験でもやったらどうか。それと捕手専用のスカウトを用意するというのもあり。ただ今回の指名で、上武大が球界において一流大学として認められた、そんな気がしました。

 三位の宮崎はフィジカルモンスターだそうです。去年の秋、関甲信リーグで無双し頭角を現した。ホームラン五本で打率は六割で長打率に至っては実に1.175って。しかし、それでも二位だという。いったい一位って誰なん・・ ・・?

 西武の指名の中でも指摘したが、テイクバックが決まっておらず、これぐらいかな、って感じでバットを引いています。左打者なら仮にそうであっても、三遊間に転がしていれば何とかなる。でも右の場合はそうはいかない。ファームではそこそこやれても一軍では苦労すると思う。

 過去にそんな選手は結構な数いました。阪神だけに限っても、江越や赤松。最近の例だとヤクルトの並木が小柄ながらこのタイプか。三位明瀬で、四位宮澤が良かったと思うのだが、それはもうええか。

 四位の明瀬五位の星野は共通点の多いよく似た選手。実は今年、タイプの被る高校生を重ねて指名するチームがいくつか出ている。楽天は二位、三位で、共にフォークを武器とする大型右腕を、阪神は三位、四位でほぼ同じタイプの右のショートを。そしてファイターズが大型の右の野手。星野は外野一本で、明瀬は一塁か三塁だが、肩は強いので恐らく外野も試されると思う。

 実はこの二人が似ているのはそれだけではない。共に元プロから指導を受けている点が同じ。明瀬は中学時代にモーヤンこと小川から、そして高校はわざわざ佐々木誠が監督をする鹿児島城西へ。なんでもプロ経験のない方から指導は受けたくなかったそうで。その気持ち、判らないわけではない。

 特徴は豪快なフォロー。右であれだけ大きなフィニッシュを取るのは、 竹原(元ロッテ)以来か。初めて見た時、左投げ右打ちかと確認したほど。

 

 そういえば、話はまったく逸れて恐縮なのですが、左投げ右打ちで甲子園を沸かせた天理の中村監督が勇退だそうで。

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 左投げ右打ちはMLBには結構いるのですが、日本では野手に限ると本当に珍しくて、たぶん中村がプロ入りした時、戦前、戦後に阪急や阪神で活躍された山田伝以来だったと思います。ただそのデンさんも日系二世だと記憶しているので、生粋の日本人では中村が左投げ右打ちのNPB史上初めての選手ではないか。

 プロでは花は咲きませんでしたが、天理史上最高の主将であり、指導者としても母校を甲子園に導いています。同世代として尊敬する指導者が、この世界を去るのは残念ですね。本当にお疲れさまでした。

 でっ、唐突に明瀬に戻りまして、フォローの大きさが上の画像の通り呂明賜ばり。結局左肩の開きが早くて強いのでしょう。恐らくアマの指導者なら直していたと思う。小川も佐々木もこの子の個性ということで手を入れなかった。そこは良いのだけど、軸が三塁ベンチ寄りに傾くのが気になります。そこにはメスを入れるべきだったと思います。

 左打者ならお尻に体重がかかるタイプでも、外は当て逃げ、内は巻き込むように捌くことで何とかなるが、右打者はそうはいかない。今のままならプ口のアウトコース低めはストレートも変化球も打てないと思う。

 ただ150㌔投げるだけの背筋や強い右手首を上手く使えば何とかなるか。系譜で言えば、口ッテの山口や広島の内田と相似形。馬力はあるし、投手としても才能のある打者は、総じて身体の使い方が上手いので期待しましょう。

 今年、 ドラフト指名された野手の中で、一番理想的なスイングをする高校生はと問われたら、文句なく星野だと答えます。バットの描く弧が綺麗で、ヘッドがしっかりと立っている。もっと前に書いておけば、今になって後悔している。

 因みに去年の高校生野手の中では大阪桐蔭の伊藤のスイングが秀逸であった。このあたりで再三書いた。

tilleternity.hatenablog.jp

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 本物のレベルスイングというのは、まさにこの星野であり、伊藤のスイングだと思う。正直、並みの環境ではこのスイングを会得するのは難しい。もっと言えば、アマの指導者でこのスイングを教えることは無理かもしれない。ただ黄金期のPLだけは別格で、どの打者もほぼ教え込まれていた。

 なので星野の打撃フォームを初めて観た時、一瞬で色んな思念が目まぐるしく頭の中を駆け巡り、そしてこのスイング、間違いなくプロの指導を受けている、そう閃き、同時に元阪神佐野の姿を思い浮かべた。

 

 佐野は阪神の編成部を退職した後、地元に帰り母校前橋工業のコーチのようなものをしていると聞いたからだ。

 ”身体の横で振るバットのヘッドをいかに立てるか”、これは文字で起こしてもややこしいのに、どうやって子どもに教えるのか、指導者にとって悩みの種ではないか。

 スイング自体を、こうしろ、俺を真似ろと、手取り足取りで伝えることは可能かもしれない。問題はそれで目の前を140㌔以上のスピードで飛んでくる小さなボールをどうバットで当てましょか、というところ。これも非常に難しい。

 当てられるようになってからスイング軌道を変えていくのか、スイングをしっかり教え込んで固めてからボールを当てられるようにするのか、そこも大きなポイントだ。

 私は後者じゃないと理想のスイングを身につけるのは難しいと思う。しかして、その指導を体現するのは並大抵ではない。指導者の頭の中でこのスイング、というものがはっきりと描けていないと無理。あれもいいかも、これも行けるではダメなのだ。そこまで確信するには、最も高いレベルでの野球の経験が必要ではないかと思うのである。なので佐野さんの姿が思い受かんだ。

 星野はこの夏予選で結構騒がれたし、名前が平仮名だけってことでメディアも取り上げた。果たして星野は指名に至ったが、ここまで特に佐野との関係を記した記事はない。しかし星野のスイングからは、間違いなくプロの手解きの跡を感じるのである。

 

 今年のセリーグのMVPを受賞した村上が、三年前のドラフトで下位指名されたその直後、”この指名、渾身のものになるかもしれない”、と書いた。

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 理由は上の記事にあるのだが、つまりは村上のフォームが、あの年指名された投手の中で一番理に適ったものだったから。同様に星野の打撃フォームも惚れ惚れするぐらい素晴らしい。特にヘッドの走りは見事である。聞けば星野は去年の秋から右肘を痛めていたそうだ。復帰するまで、左腕を鍛え上げていたのだろうか。星野のヘッドの立ったスイングはその左腕、左手首がもたらすものだ。

 では来年から大活躍するかと問われれば、投打の違いはあれ大卒の村上でも三年かかったように、やはり時間が欲しい。しかも一流の投手や大舞台で打った、という経験が星野にはない。そこは去年の伊藤櫂人が上か。

 プロ入り後、ポイントは右手の使い方になるのであろう。左腕でバットをリードし、利き手である器用な右腕で微修正し、バットを押す直線的な動きでスイングを支える。明瀬にも言えるが、共に左腕なり左半身の使い方は上手いので、一軍の扉を開ける鍵は右腕、右手をどう使うかだろう。二人してそこも同じということで結びとしたい。

 

 とりあえず鎌ケ谷の試合はGAORAで中継がある限りチェックしたい。プロの阪神ファンにそう言わせるものが二人にはある。