Till Eternity

どこよりも遅く、どこよりも曖昧に・・・・

2023 ドラフト点検 日ハム編

 今回取り上げるのはファイターズのドラフトです。ここについては色んな取り方ができる。「野球太郎」の表紙を射止めた良いドラフトだったと言い切ることも、逆に補強ポイントを埋められなかったと見ることも可能。最下位ですからね、なのに五人で打ち切っちゃったし。

 私はといえば前者です。細野を評価していたので、それがまさかの外れ外れでも獲れたわけですから御の字かと。というわけで今年のドラフトは、楽天に巨人、西武とファイターズ、ここまでが勝ち組だと思っています。あくまで私の中の話ですがね、ええ。異論は認めます。

 以前、細野の指名が遅れたのは、外れ一位での競合を嫌がったチームが、周りの出方を読み誤り意識的に避けたのではないか、というようなことを書いた。

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 第一回ドラフトでの鈴木啓示のケースも恐らくこのパターンであろうとも。まぁ、今になって穿り返しても詮無い話。ナチュラルに細野の評価が低かったという論調が、すでに主流になっている。所詮は結果が全てのこの世界ですからね。

 与四死球率の高さや、秋に一部で一勝しか挙げられなかった点も、その評価を補強する格好。正直いえば、また数値かって感じ。数値や数字に固執するなら、被打率が東都六人衆の中で一番低かった点は、なぜ度外視なのかよと。悪い数字だけを論って、やっぱりこいつは外れ外れ一位、とするのはフェアじゃないでしょと。

 この秋、細野と対戦する打者は皆、明らかに待球作戦を取りファーボール狙いでした。普通そうします。東洋に喰われたら、そこは入れ替え戦行きを意味しますから。だからこそ非打率があそこまで低く収まった、というのもある。あっちが出ればこっちは引っ込む。つまり数値はあれこれ並べて、いろんな角度から眺めるべきかと。因みにその与四死球率にしても、四年次の髙橋遥よりは良いので、プロ入り後制球が良くなる可能性だってある。

 もちろん欠点は他にもたくさんあります。以前指摘したようにインステップは、腰や膝ヘダイレクトに影響するでしょう。なので一年通じて上で登板するのは難しい。ただそういった欠点のあるなしに関わらず、近年の大学生は総じて追い込みを掛けられていません。よくここで高校七年生というのはそこ。そもそも即戦力といえるような物件の方が稀。なので先にに挙げた数値の悪さについても、前向きに織り込むべきだと思います。

 上手くいけば、WBCで日の丸を背負える逸材だと素直に思う。いきなりWBCと大きく出ると気が遠くなるかもしれませんが、今回の指名選手を眺めてみても、その可能性について言及できるようなスケールの大きな選手はそうはいない。細野の器の大きさ、私は評価します!

 何はともあれこうまで書いた以上、期間はどうしましょう、三年ぐらいが妥当か、 ドラフトオタとして細野と武内、ここでしっかりと比較検証していきたいと思います。


 

 

 二位の進藤はディフェンス型の捕手で、大型の若月だと思ってください。時折センター中心に大きいのを打つ可能性もありますが、打っても二割そこそこではないでしょうか。強肩は買うが、二位の頭は少し早いように思ったな。

 捕手の指名というのは本当に難しい。私はアマレベルの捕手は野手という括りで見た方が良いとするタイプです。プロは半年で同じ対戦相手と二十試合以上するわけですが、アマは違います。大学でも年に五試合ぐらいか。しかも春にやって次が秋だと、まったく違う選手になっている可能性もある。そんな中で鍛えられたインサイドワークを、プロの基準で評価することに意味があるとは思えない。

 つまりどれだけアマ時代に優れたリードをしていても、結局プロ入り後、ほぼゼロベースからやり直す。”野球偏差値”とか、その類の表現もあるけど、あれって意味あるのか。もしインサイドワークに拘るのなら、自頭が良い選手を獲るのをお薦めします。なのでアマの捕手に限っては、統一筆記試験でもやったらどうか。それと捕手専用のスカウトを用意するというのもあり。ただ今回の指名で、上武大が球界において一流大学として認められた、そんな気がしました。

 三位の宮崎はフィジカルモンスターだそうです。去年の秋、関甲信リーグで無双し頭角を現した。ホームラン五本で打率は六割で長打率に至っては実に1.175って。しかし、それでも二位だという。いったい一位って誰なん・・ ・・?

 西武の指名の中でも指摘したが、テイクバックが決まっておらず、これぐらいかな、って感じでバットを引いています。左打者なら仮にそうであっても、三遊間に転がしていれば何とかなる。でも右の場合はそうはいかない。ファームではそこそこやれても一軍では苦労すると思う。

 過去にそんな選手は結構な数いました。阪神だけに限っても、江越や赤松。最近の例だとヤクルトの並木が小柄ながらこのタイプか。三位明瀬で、四位宮澤が良かったと思うのだが、それはもうええか。

 四位の明瀬五位の星野は共通点の多いよく似た選手。実は今年、タイプの被る高校生を重ねて指名するチームがいくつか出ている。楽天は二位、三位で、共にフォークを武器とする大型右腕を、阪神は三位、四位でほぼ同じタイプの右のショートを。そしてファイターズが大型の右の野手。星野は外野一本で、明瀬は一塁か三塁だが、肩は強いので恐らく外野も試されると思う。

 実はこの二人が似ているのはそれだけではない。共に元プロから指導を受けている点が同じ。明瀬は中学時代にモーヤンこと小川から、そして高校はわざわざ佐々木誠が監督をする鹿児島城西へ。なんでもプロ経験のない方から指導は受けたくなかったそうで。その気持ち、判らないわけではない。

 特徴は豪快なフォロー。右であれだけ大きなフィニッシュを取るのは、 竹原(元ロッテ)以来か。初めて見た時、左投げ右打ちかと確認したほど。

 

 そういえば、話はまったく逸れて恐縮なのですが、左投げ右打ちで甲子園を沸かせた天理の中村監督が勇退だそうで。

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 左投げ右打ちはMLBには結構いるのですが、日本では野手に限ると本当に珍しくて、たぶん中村がプロ入りした時、戦前、戦後に阪急や阪神で活躍された山田伝以来だったと思います。ただそのデンさんも日系二世だと記憶しているので、生粋の日本人では中村が左投げ右打ちのNPB史上初めての選手ではないか。

 プロでは花は咲きませんでしたが、天理史上最高の主将であり、指導者としても母校を甲子園に導いています。同世代として尊敬する指導者が、この世界を去るのは残念ですね。本当にお疲れさまでした。

 でっ、唐突に明瀬に戻りまして、フォローの大きさが上の画像の通り呂明賜ばり。結局左肩の開きが早くて強いのでしょう。恐らくアマの指導者なら直していたと思う。小川も佐々木もこの子の個性ということで手を入れなかった。そこは良いのだけど、軸が三塁ベンチ寄りに傾くのが気になります。そこにはメスを入れるべきだったと思います。

 左打者ならお尻に体重がかかるタイプでも、外は当て逃げ、内は巻き込むように捌くことで何とかなるが、右打者はそうはいかない。今のままならプ口のアウトコース低めはストレートも変化球も打てないと思う。

 ただ150㌔投げるだけの背筋や強い右手首を上手く使えば何とかなるか。系譜で言えば、口ッテの山口や広島の内田と相似形。馬力はあるし、投手としても才能のある打者は、総じて身体の使い方が上手いので期待しましょう。

 今年、 ドラフト指名された野手の中で、一番理想的なスイングをする高校生はと問われたら、文句なく星野だと答えます。バットの描く弧が綺麗で、ヘッドがしっかりと立っている。もっと前に書いておけば、今になって後悔している。

 因みに去年の高校生野手の中では大阪桐蔭の伊藤のスイングが秀逸であった。このあたりで再三書いた。

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 本物のレベルスイングというのは、まさにこの星野であり、伊藤のスイングだと思う。正直、並みの環境ではこのスイングを会得するのは難しい。もっと言えば、アマの指導者でこのスイングを教えることは無理かもしれない。ただ黄金期のPLだけは別格で、どの打者もほぼ教え込まれていた。

 なので星野の打撃フォームを初めて観た時、一瞬で色んな思念が目まぐるしく頭の中を駆け巡り、そしてこのスイング、間違いなくプロの指導を受けている、そう閃き、同時に元阪神佐野の姿を思い浮かべた。

 

 佐野は阪神の編成部を退職した後、地元に帰り母校前橋工業のコーチのようなものをしていると聞いたからだ。

 ”身体の横で振るバットのヘッドをいかに立てるか”、これは文字で起こしてもややこしいのに、どうやって子どもに教えるのか、指導者にとって悩みの種ではないか。

 スイング自体を、こうしろ、俺を真似ろと、手取り足取りで伝えることは可能かもしれない。問題はそれで目の前を140㌔以上のスピードで飛んでくる小さなボールをどうバットで当てましょか、というところ。これも非常に難しい。

 当てられるようになってからスイング軌道を変えていくのか、スイングをしっかり教え込んで固めてからボールを当てられるようにするのか、そこも大きなポイントだ。

 私は後者じゃないと理想のスイングを身につけるのは難しいと思う。しかして、その指導を体現するのは並大抵ではない。指導者の頭の中でこのスイング、というものがはっきりと描けていないと無理。あれもいいかも、これも行けるではダメなのだ。そこまで確信するには、最も高いレベルでの野球の経験が必要ではないかと思うのである。なので佐野さんの姿が思い受かんだ。

 星野はこの夏予選で結構騒がれたし、名前が平仮名だけってことでメディアも取り上げた。果たして星野は指名に至ったが、ここまで特に佐野との関係を記した記事はない。しかし星野のスイングからは、間違いなくプロの手解きの跡を感じるのである。

 

 今年のセリーグのMVPを受賞した村上が、三年前のドラフトで下位指名されたその直後、”この指名、渾身のものになるかもしれない”、と書いた。

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 理由は上の記事にあるのだが、つまりは村上のフォームが、あの年指名された投手の中で一番理に適ったものだったから。同様に星野の打撃フォームも惚れ惚れするぐらい素晴らしい。特にヘッドの走りは見事である。聞けば星野は去年の秋から右肘を痛めていたそうだ。復帰するまで、左腕を鍛え上げていたのだろうか。星野のヘッドの立ったスイングはその左腕、左手首がもたらすものだ。

 では来年から大活躍するかと問われれば、投打の違いはあれ大卒の村上でも三年かかったように、やはり時間が欲しい。しかも一流の投手や大舞台で打った、という経験が星野にはない。そこは去年の伊藤櫂人が上か。

 プロ入り後、ポイントは右手の使い方になるのであろう。左腕でバットをリードし、利き手である器用な右腕で微修正し、バットを押す直線的な動きでスイングを支える。明瀬にも言えるが、共に左腕なり左半身の使い方は上手いので、一軍の扉を開ける鍵は右腕、右手をどう使うかだろう。二人してそこも同じということで結びとしたい。

 

 とりあえず鎌ケ谷の試合はGAORAで中継がある限りチェックしたい。プロの阪神ファンにそう言わせるものが二人にはある。

2023 ドラフト点検 西武編

 西武は今年もクジに勝利し武内を射止めた。常にクジに勝っているわけではないが、三球団以上の大勝負に強い印象がある。あれこれ裏から手を回すことばかりが得意であったこの球団が、依然クジ運に恵まれたままというのはどうなのか。一方でクジを外し続けるような球団や監督は多い。この矛盾・・・・。

 いい加減バチが当たれよ、そう思う方も多いのではないか。もしこのあたりについて、私を納得させられるような言説があればお聞かせ願いたいものだ。

 

 大向こうを唸らせるような指名、それはすなわち西武のドラフトであった。最近は減ったが、今回は久方ぶりにそれがあったような気がする。

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 村田は超大型の強打者という噂が都市伝説化していた地方大学の雄。いかにも西武らしいお家芸ともいえる指名。

 ひと昔前なら指名と同時に、”えーっ! 誰それ?” となり、196cmのサイズを聞いてさらに大騒ぎ。根本が仕切った頃の西武のドラフトと、それをめぐる世間の反応はいつもそんな感じであった。しかし今となっては、あぁ、西武がやりそうな指名だね、で終わってしまった。

 実際、村田の在籍する皇学館大には、 ドラフト当日、三重のローカル局だけではなく、東京のキー局が、さぁー来いとばかりにスタンバイ。指名を今か今かと待ちわびる。村田と監督、部長の三人は、今回の候補者の中で誰よりも眩い照明を、しかも開始から六巡目が終わる七時前まで、二時間以上も浴びっぱなし。村田君、たぶん視力落ちたと思うわ・・・・。

 時代が変わったとか、情報化社会の行きつく先だとか、確かにその通りなのだけど、プ口野球の楽しみ方がこれほど変わるのかと。 ドラフト会議の存在について、今回ばかりはいろいろと考えさせられた。未だ見ぬ怪物を世間が認知するタイミングが、シーズン開幕から、キャンプ初日 → 入団会見 → ドラフト → ドラフト前へとどんどん手前になって来ている。王道の高校野球の星についても、甲子園で発見するものではなく、地方予選が全試合配信されるようになった以上、先回りのレースは既に始まっているのかもしれない。

 まぁ考えてみればスカウトが漫画になって脚光を浴び、 ドラマ化までされている以上、表の世界と地繋ぎになり、裏も表もなくなったということなのだろう。ただこういう本来アンダーグラウンドな世界のものに対して、定期的に表側からチェックを入れるというのはよくあることだ。古くは「あなた買います」が映画化されたのが1956年、もう七十年近くも前。であるだけに逆に、なぜこうも身近になるまでに時間が必要だったのかと、四十年以上前に、学生服にラジオを忍ばせ、授業中にラジオ関東のドラフト中継を聴いていた私の頭の中は混乱するのである。

 プ口野球の裏側であった部分が表の世界として扱われる、そこまでは想定内である。だが、その中でも下位指名のキワモノ的な村田にまでスポットライトが直撃する、という点が理解できない。本来そこはオタクの領域なのに、ということである。

 ”娯楽はプ口野球しかなかった”、昭和を語る上でよく聞くフレーズである。そうまで言われた1960年代、こういう話があった。

 ドラフトの翌朝、当時松下電器の社員であった福本が、スポーツ新聞を読んでいる先輩に、

 「なんかおもろい記事おまっか?」

 「おまえ阪急に指名されてるで!」

 これで初めて知ったという。

 また当時は、たとえドラフト一位で指名されても、拒否する選手が続出。それは巨人であってすらも同様。70年代に入ってさえその半ばで、二年連続振られた阪神などは、その後もしばらくドラフトではスター選手を指名するより、確実に入団してもらえる選手を獲れ、がお約束であった。

 それが今や、独立リーグで苦労してでもプロを目指し、その末の育成指名に随喜の涙を浮かべる選手もいる。時代が変わったとつくづく感じ入るのである。

 そして何より今回、 ドラフト会議のワイドショー化がほぼ完成を見た。視聴率には信ぴょう性を感じないが、関東でもそこそこの数字を取り、地方では20%を超える地域もあったのだとか。野球がこの国で最も輝いたのは巨人のV9時代だというが、当時のコアなファンがどれだけドラフトの存在について識り、 そして候補者やそこから来期の戦力について語ったであろうか。

 また当時、子供たちは皆野球選手を目指していたというが、それは世間が典型的な子供像を語る上での常套句のようなものでしかなかったのではないか。昨今のNPBを取り巻く環境を私なりに精査するに、同じ物差しで測るのは難しいが、決してプ口野球黄金時代の在りし日と比較して、電通の子会社が出す関東地方の地上波の視聴率以外、その人気が落ちたようには思えない。

 まさに今回のドラフトの扱われ方がそうであるし、世の中を眺めるにつけても、たとえばゲームアプリの「プ口野球スピリッツA」に興じる若者の姿が、通勤通学中の一つの風景として日常的にそこかしこにあることに驚きを感じている。また事実、売り上げも他の追随を許さない。この熱や環境が整っているうちに、NPBは新規戦略を練るべきだ。これ安泰と胡坐をかいていたらえらい目に遭うぞ、とだけ申し上げておこう。

 

 それでは西武の指名を振り返りたい。

 今年の投の一番人気は、三球団競合の武内で間違いない。しかし去年の荘司同様、まだ私にはピンとこない。まずいかり肩なのでどうか、というようなことを書いた。言いがかりといわれればそれまでか。

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 ドラフト前から評価も高く、事前に一位の表明が西武、ソフトバンクからあってそれは固まった。となると後は提灯記事の連鎖。そこが面白くなくて難癖つけた面はある。

 私が武内を評価しないのは、ボールの質にある。これは好みの問題だが、”キュッ”、とか ”グッ” 、とかそういう動きをするボールを投げる投手が好きなのだ。それはストレート、変化球共に。ボールが活きてる、そう感じる瞬間が私の惚れるか否かの分岐点。

 残念ながら武内の投球からはそれを感じなかった。150㌔越えの左腕となれば、奪三振がイニングを上回る例は決して珍しくはない。ましてガバガバな東都のストライクゾーン。しかし武内の場合奪三振は平均して7ぐらいか。それはリリーフでマウンドに上がった場合も同様。制球はそこそこなので、打たせて取るタイプという線で落ち着くのであろう。がっ、そこが私には物足りなく映る。

 ただ左腕の評価は難しい。正直言えば苦手。動画だけ眺めていても判らない部分が多い。特にセンターからのカメラの場合、バックスクリーン左側から映すので、右投手の投球動作は良く判るが、左となると極端に言えば常に背中を向けているので難しい面が多い。じゃあ現場で観ろよ、と言われればそれまでなのだが、なかなかそうはいかない。お察し願いたい。

 左腕で見立て違いと言えば、三年前、伊藤将司の二位指名を、佐々木より上だから悪くはないが、中森がいたのに、と書いて見事に外した。もちろん中森はこれからの投手であるが、この三年で29も勝った伊藤に対して失礼な真似をしたと自らの不明を恥じている。

 伊藤が凄いのは、打者有利のカウントでも楽にストライクが取れるところ。右の外、左の内で力ウントを稼ぐ。プロの厳しいしトライクゾーンで、この芸当を果たして武内ができるのか、春から注目したい!

 

 二位の上田阪神の一位指名も囁かれた投手。球威はあるが、身体の開きの早さをどう凌くかがポイントになる。またテイクバックは小さく、去年ハムに入った金村に似ているが、球持ちは金村の方が良かったように思う。パワーで押し切るスタイルのままだと、中継ぎで便利使いされる気がする。

 金村が13番目の選手で上田は16番目。そんなもんかと思う反面、 ドラフト前の大方の意見としては、去年は不作で今年は豊作。その意見に概ね賛成ではあるが、この二人の位置を見ている限りはよく判らなくなる。

 三位の杉山は、私の評価一覧に書き漏らした投手。私の中では今年一番の高校生左腕は仁田で、次が杉山。東松、福田よりも上との見立て。表を書いてしばらくしてから忘れていたことに気づいた。何を言っても後出しじゃんけんになるが、宮城に一番近い投手と思っていた。今年高校生NO. 1の変化球投手とも言える。

 このレベルを三位で獲れるということは、やはり今年は豊作で良い気がする。個人的には限りなく二位に近い素材。お値打ち指名だと思う。

 


 四位の成田は馬力型右腕。ショートアームというか、せっかちなフォームながら指に引っかかったボールは威力十分。しかしこの夏、光星に10安打、8四死球の11失点で見事に炎上。高校野球にピリオドを打った。この試合の結果を聞いて、今年の光星は強い、優勝候補に挙げた根拠でもあった。

 果たして西武がこの子をどう育てるのか。まず同期の杉山がクイック、牽制、フィールディングと一通り完璧にこなすので、劣等感に苛まれるところからのスタートだと思う。

 五位の宮澤は北大法学部に籍を置く独立リーガー。 学歴命の藤島大が聞いたら誉めそやしそうな投手。 できればファイターズが指名して欲しかった。 なぜ指名できなかったのか? 四位で明瀬を指名した以上、それは叶わぬ願いであった。

 タイプ的には元ヤクルトの五十嵐と相似形。球質も似ている。担いで押し込むように投げるが、そこからのボールは威力十分。この位置まで残ったいたのが不思議でもある。中継ぎの層を厚くしたいチームなら、もっと上で指名されてもよかったと思う。これまたお値打ち指名である。

 

 冒頭で触れた六位指名の村田。実力的には高校七年生である。特にトップの位置を作れていない点に、まだまだこれからだと感じる。日ハムの三位指名を受けた宮崎も程度の差はあれ同様で、二人して打席ではこのあたりかな、という感じでバットを引いている。

 投球ごとにトップの位置がまちまちではあるが、共に身体能力、特に村田は腕力があるので何とかなっている。しかし間違いなくプ口入り後苦労するだろう。恐らく最初からトップを作る構えに変えられると思う。そこからノーステップ打法で打つ村田の姿が目に浮かぶようだ。

 たとえ紅白戦でホームランを打つようなことがあっても、それはまぐれというか事故でしかなく、来年イースタンでは何とか二割三分打てるよう努力して欲しい。

 七位の糸川は潮崎枠。これではコーチも迂闊に手を出せないのではないか。ならば編成トップが責任もって指導してもらいたいものだ。

 総括するなら、三位の杉山と五位の宮澤の二人はまさにお値打ち指名。個人的に上位の二人はそれほど評価していないが、世間のそれは当然のように高く、よって西武が今年のドラフトで勝ち組であることは間違いない。来年は投手は揃っているので、優勝は無理でもAクラス復帰は十分あると思う。

 勝ち組ドラフトと結論付けた割には、何だか熱のないおざなりな文章になった。正直に白状すると、西武のスカウトやその手法は好きではない。いわゆる山師タイプが多いからだ。今はどうか判らないが、十年以上前の西武のスカウトは、球団から貰う給料と同じぐらいを、他で稼いでくるような奴ばかりであった。

 スカウトがアマ球界と良好な関係を築くことは、仕事の中でも一丁目一番地である。なので、大学や社会人チームに有望な高校生の口利きをスカウトがする、というのは普通に行われている。たとえば八幡南高校時代ほぼ無名であった武内に、国学院大を薦めたのは中日の九州担当スカウトである。

 スカウトとしては選手や高校、進学先とすべてに恩が売れるし、大学側もスカウトが言ってくるなら間違いないとして、有難く話を進めるのが礼儀というか筋だといえる。つまりウインウイン、八方良しだ。更に武内のように活躍すれば、その絆は深化するであろう。

 そういう関係を発展させたようなケースもある。中大の野球部二年に永井という選手が在籍している。名門福岡大大濠出身。しかしサイズはなく選手としての実績は今一つ。聞けばソフトバンクの永井編成本部長のご子息だそうだ。

 永井部長はこの夏視察で甲子園を訪れた際、U18にも選ばれた浜松開誠館の新妻を手放しで誉めている。

 

 非常に嬉しそである。因みに新妻は中大進学が内定している。永井が口利きをしたかどうかは判らないが、息子の大学に良い選手が進むことに満足しているようだ

 繰り返しになるが、スカウトは選手を指名し迎え入れることでパイプを作るのではない。主に日頃の活動や行いを通じ、たとえば有望な高校生の情報を伝えるなどして関係を深めていくことも重要である。

 しかし西武のスカウトの場合、そこに行き過ぎた面があったように思う。たとえば、超名門私立大学の野球部への口利きをしてやるから、親や学校法人側から金を引っ張れないか、というようないわゆる裏口入学斡旋とか、花が咲く手前の高校生に、大学を紹介してやるから四年後はうちに入れよ、とか・・・・。

 東北学院の岸が、地元楽天を蹴って西武を逆指名した際、 なんか変だな、そう感じた方は多かったのではなかろうか。 あの年、右ではNO.1投手である。巨人なら西武の倍は積んだであろうし、楽天でも少し上の金額の提示は可能であったと思う。随分と前から西武と岸はデキていた、というか縛り付けられていた、と見るのは私の心が汚れているからであろうか。

 根本氏が球界に遺したものは多いと聞く。亡くなってから数年を経てもなお、”根本はまだ生きている” そう囁かれたドラフトを何度も見てきた。しかし、この人の負の功績として、行き過ぎたマネーゲームを助長させた点を指摘する者は少ない。

 西武のスカウトには、根本の寝技を変な風に曲解した、いわゆる輩が多かった。

 今はそうでないことを願うばかりである。

2023 ドラフト点検 巨人編

 今年の巨人のドラフトは評価に値すると素直に思っている。高校生を指名しなかったことで批判に晒されているが、今年の高校生レベルなら、という割り切りがあったのであろう。

 実際、世代トップは下級生の頃から四天王と持て囃され、それが裏目に出たようだ。四人のうち一人は育成指名、一人は指名漏れ、結局一位は前田のみ。もっとも騒がれた佐々木に至っては、アメリカ留学を打ち出し志望届すら出さない有様。その背景には世間を満足させる成績を上げられなかったという、ある種の後ろめたさがあったと察する。

 世代ごと総崩れとは言わないが、コロナ禍もあって描いていたような成長曲線に至らない選手が多かった。つまり巨人の高校生指名ゼロは、ある意味想定内なのである。

 それでも今回の本指名選手平均年齢が24歳にも達するとして、問題視する意見は多い。育成を放棄したのかという声も上がる。そこはもっともかもしれない。

 選手の育成サイクルは、個人的に三年とみている。24歳というのは、高卒後にそのサイクルが二回転している年回りに当たる。

 イメージとしては、骨年齢が成人に達し身長の伸びが止まる16、7歳前後で描く成長サイクルの円の弧が最も大きくなる。そこからサイクルが回る度に円は小さくなっていく。それだけに旬を過ぎた選手の指名には慎重となる。

 つまり高校で一回転、その後大学社会人で二回転、計三度の成長サイクルをすでに回し終えた選手ばかりを今更指名してどうするのか、という理屈。巨人の今回の指名に疑間符がつきまとうのも致し方ない話ではある。

 これだけ指名選手の平均年齢が高いというのは、長いドラフト史の中でも初めてかもしれない。過去を振り返ると、アホの極みと嘲笑されたわが阪神の1995年のドラフトぐらいか。あれはある意味伝説であった。だがあれでも指名選手の平均年齢は23歳である。

 ここで少し脇道に逸れ、暗黒史の中でも一際黒光りするあのドラフトについてご紹介したい。

 指名した四人の高齢社会人選手が、誰一人として戦力にならなかったなんて序の口。にもかかわらず後にスカウトが、もう少しコーチにはしっかりと指導してもらいたかった、と言い出すに及んでは失笑というか、開いた口がというか、つまりはこれこそが暗黒臭なのである。

 あのドラフトの翌春のキャンプ、指名された新人船木、中ノ瀬、林の三投手は一軍キャンプに揃って抜擢された。その中でも特に林の投球を、当時ABCの解説者であった稲尾が激賞。必ずや戦力になると関西メディア各方面に喧伝・・・・。

 もちろん誰が見てもというか、テレビ越しにわれわれが眺めても、あんなもん良いわけないやろ、というのは明白で、実際その通りにまったく役に立たず、三位で指名されたというのにたった二年で解雇。

 今もってあの時の稲尾の見立ては謎なのだが、私なりに深読みするなら、林を担当したスカウトが人の好い稲尾に、

 「サイちゃん、キャンプでは新人の林を誉めて欲しいんだよね、ちょっと自信喪失気味でさ。神様と言われた大投手に褒めてもらえれば、本人励みになると思うんだよ。」

 みたいなおねだりが、人知れず裏で執り行われていたと思う。それぐらい稲尾が林を一方的に誉めたのは不自然であった。

 林本人を励ますのではなく、スカウトとしての自分の無能ぶりを帳消しにする意図であったことは言うまでもない。当時のスカウトの糞っぷりと、処世術の狡猾さは見事でもあった。

 因みに指名時船木は高卒四年目、中ノ瀬、林は五年目の社会人。つまりプロ入り解禁から指名を見送られ続けた投手ばかり。四位の曽我部は名古屋学院大卒業時に、社会人野球3チームのセレクションを受けて、いずれも不合格という猛者であった。

 言うまでもなく1995年とは、わが阪神が暗黒期真っ只中。補強ポイントなぞはその全てであったというのに、あの四人を指名してドラフトを切り上げたのである。

 振り返るにあの年のドラフト中位以降の選手としては、清水(東洋大→巨人)、横山(横浜→横浜)、日高(九州国際大付→檻)、武藤(創価大→近鉄)、石井(東京学館→ヤクルト)、佐久本(大和銀行ダイエー)、鶴岡(神港学園→横浜)、益田(龍谷大→中日)、など結果論ではあるが、多肢多彩ではないまでも、まったくいなかったわけではない。

 しかもその後、上にあげた日高、佐久本、鶴岡、それ以外にも口ッテの四位指名であった早川、近鉄の五位指名の平下をそれぞれトレードなどで獲得する(日高に至ってはFAで)という愚行に及んでいる。つまりあの年指名できたのにみすみす見逃したにも関わらず、結局はそれらの選手たちの手を借り穴を埋めるという。確かに当時の阪神の選手層は薄かったが、おまえらに意地はないのかと。ご丁寧にも恥の上塗りというか、スカウト、編成の無能さを惜しみもなく曝け出してくれるのであった。まったく業が深い。

 あの指名直後、当時からひとかどならぬ阪神ファンを自認していた私でも、こんなにスカウトがクズ野郎ばかりで編成が滅茶苦茶な球団には愛想尽きたわ、そう一瞬覚悟を決めたほどであった。

 もうスカウトは俺がする! 私がアマチュア野球観戦にのめり込むきっかけを作ってくれたドラフトでもあった。そういう意味では感謝している。かようにドラフトとは球団の生殺与奪を握っている。チームを生かすも殺すもスカウト次第なのである。



 前振りが長くなって恐縮である。かようにスカウトや編成の裏も表も、酸いも甘いも長年眺め倒してきたこの私が、今回の巨人のドラフトについてあえて言おう、認めると。

 まず、阿部新監督が二軍監督を経験していることが大きい。新人の秋広をマンツーマンで指導していた光景などは記憶に新しい。他にも下で目を掛ける選手は多いと見る。つまり、彼等に勝負の年を与えることを意図したのではなかろうか。恐らく来年結果を出さなかった場合、オフには情け無用で大ナタが振るわれるのであろう。

 高校生を本指名すると、どうしても育成の観点から三軍といえどもスタメンで優先的に起用する。その流れから、イースタンでも見てみたいという運びにもなる。となれば周りからすると、自分よりも明らかに実力のない選手が経験を積ませるという名目だけで頭から使われることとなる。それを快く思えというのは無茶だろう。

 プロとは個人事業主の集まり。つまりは商売の邪魔なのだ。しかしてそれはファームにおける日常的な風景でもある。だが来年の巨人に限るとそれはない。

 巨人は去年までの三年で計31名の育成選手を指名した。そのうち高卒は18名。来春、邪魔はしない、だからおまえら死ぬ気で野球をやれ! あの指名を通じて、そんなメッセージを送ったのであろう。

 

 個々の選手について申し上げれば、ニ位の森田は今回の巨人ドラフトの象徴である。一位の西舘以上に注目している。技術的な話はあえてしない。報知新聞や読売の息のかかったメディアが誉めそやすであろうから、それ読んでくださいな。ただ一言だけ、落ちるボールをもう一種類。フォークを何とか物にして欲しい。それを条件とするが、不肖この私も来年の新人王として彼の名を挙げたい。二桁勝ち、規定回数をクリアするであろう。元々才能のある投手であることは間違いない。高校時代は世代NO.1左腕であった。

 九年前のドラフト、森田の進路に注目は集まったが当初から進学希望であった。明治、中央との争いを法政が完勝。決め手は当時のOB会長の山中氏の存在。翌春のシーズン、いきなり開幕投手を務める。がっ、好事魔多し、まずは怪我。そしてその後起こる野球部内のゴタゴタの煽りをまともに受けることとなる。

 2013年春、山中氏ら主流派がクーデターを起こし、いったん法大野球部内の派閥抗争に勝利を収めた。しかし、サンデーモーニングでお馴染みの田中優子が学長に就任した翌年以降、反主流派が徐々に水面下で巻き返しを画策。山中氏や山本浩二は名誉棄損で告訴され、訴え出た張本人である金光元監督が2017年、OB会副会長に就任し復権。抗争は反主流派の逆転勝利で幕を閉じた。三年前にこのあたりで書きましたわ。

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 正直、六大学や法大には関りも義理もないが、このゴタゴタを野次馬的に眺めていて感じたのは、山中氏の薫陶を受けて法大に入った森田が気の毒であったということ。

 結局、森田は冷や飯を食い大した実績もないまま卒業し、Honda技研鈴鹿に入社。あれから五年、臥薪嘗胆に努め遂にこの春、回り道の果てなのか、満を持したのかは定かではないが復活を遂げた。都市対抗でも活躍し、見事に今回の二位指名を勝ち取った。めでたしめでたし。

 贔屓目かもしれないが、武内に劣る部分はないと映った。同郷でもある正力松太郎先生が創り上げた一世一代の最高傑作、大巨人軍を舞台にひと暴れしてもらいたいものである。

 

 二位の西舘はすでに取り上げた。

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 まぁ実力があるのは理解しているが、正直良いイメージはない。しかし、である。ドラ1という肩書以外は何かと地味で、注目を浴びると潰れそうな西舘なだけに、五歳年上の森田の存在は有難い。

 キャンプインと同時に、上手い具合にオールドルーキー森田が活躍し注目を集めれば、水を得た魚のように頑張るのではないか。あのタメのないクイック投法を、巨人首脳陣がどのようにいじるのかにも注目している。

 三位の佐々木は大学時代、打席で左の肘と手首の使い方に癖があり、バットが真っすぐポイントまで出ない傾向にあった。果たしてそこは治ったのか? 私が見る限り、若干残ってはいるが右腕主導でフォローが大きくなり目立たなくなっているようだ。

 そもそも巨人の二軍、三軍は、日立とは何度も試合を重ねている。直接しっかりと佐々木の成長を観察し、あれこれ試し、反応を見極めたうえでの指名なのだろう。私ごときが口を挟む余地はない。

 センター丸からレギュラーを奪うのではなく、サブとして少しでもその首筋を寒からしめる存在感を示せるか。何かと悠然としがちな口ートルたちに、あらためて奮起を促す呼び水としての期待がかかる。

 それは四位の泉口も同じである。中川吉川、門脇からレギュラーを奪うのは正直無理。チームの底上げではなく、悪い言い方かもしれないが咬ませ犬としての役割を担えるかが鍵となろう。そのためにもキャンプでは初日からアピールし、必ず一軍切符を勝ち取らねばならない。

 こういう存在は定期的に必要である。例えばうちも秋のキャンプで、外野の小野寺や野口に三塁を守らせ鍛えている。それが何を意図しているのかは明白。更に言えば既存の選手をそこに宛がうよりも、新人の方が効果的かもしれない。

 五位の又木も同様に一軍で開幕を迎えなければ意味のない投手。役どころは左のワンポイント。一応、ボールを眺める限りその力はある。問題は制球。それもヒリヒリする場面に平常心でマウンドに立ちストライクを通せるか。ハードルは決して低くはない。

 フォーム的にはテイクバックの際の左肘の位置が気になる。少し低い。球は暴れるタイプと見る。だが、今年の成績を見るとコントロールは安定しているようだ。撫で肩でもあり、そこは大丈夫なのであろう。

 左の中継ぎは巨人に不足しているパーツであるだけに、又木を五位まで遊ばせたのには、よほど他球団の動きを読めていたということか。私なら我慢できず泉口のところで指名していたと思う。あの段階で他に目ぼしい左腕は残っていなかった。腹の座った指名と感じた。

 

 今年の巨人の指名をありと感じるのは、スカウトが文字通り退路を断ってこの五人を指名したからだ。まぁ社会人野球オタクの阿部の親爺の入れ知恵も少しはあったかもしれないが、ここまで徹底するのは見事。

 極論になるが、開幕にこの五人が一軍に名を連ねていなければ、その段階で指名は失敗。恐らくは、今から辞表を書くぐらいの覚悟はしているのであろう。四月はあっという間にやってくる。

 これまで何十年もドラフトを眺め続けて来たが、言い訳枠や最初から保険を掛けたような指名を数多く見せられた。高校生を指名しておいて来年から勝負だなんて言えたものではないが、中には育成期間を人質に、判らない奴には判らんでもいいよと居直るような指名もあった。そんな場合、たいがいが失敗に終わっている。もしくはコーチに責任を擦り付けるのがオチであった。

 スカウトが所属する編成は、ドラフトでの指名を通じて結果を出すことこそが求められている。だが同時に組織として、現体制を守ることも一つの使命である。それをしなければ、スカウトを束ねる求心力は失われてしまう。ただでさえ、てんでバラバラでそれぞれが個々で勝手に動いている集団。最後は俺が責任を負うから、君たちは自信を持って日々の活動に集中してくれ、そうスカウトに編成部長が言えるかどうか、結局はそこだ。

 しかし現体制を守ることは、得てしてチームを強くするという方向性と重ならないことが多い。いわゆる弱いチームあるある。そういうチームの編成やスカウトたちのやり口というのは、適度に高校生を指名して思わせぶりな将来性を盾に延命を図り、併せて適度に社会人を指名し、シーズンで残した僅かな数字を根拠にこれまた延命を企てる。やってることは保身だけだろ、ファンにそう見透かされるような指名に終始する。

 それだけにすべて22歳以上の選手を揃えてみせた、今回の巨人の指名から保険を掛ける気配は感じられない。その心意気を買うのである。

 恐らく、おしゃべりですぐ手の内を明かしたがる水野にそんな器があるとは思えない。背広組によほど肝っ玉の太いのがいるのであろう。まぁ結果が出なけりゃ、水野に詰め腹斬らせりゃいいかな。



 とにかくまずは二月、プロの阪神ファンとしても、巨人のキャンプインが楽しみである。

2023 ドラフト点検 楽天 後編

 アジアCSを連覇で終え、侍ジャパンは面目を保った。一方アマ野球では同じ日に日本選手権が、そして翌日神宮大会がそれぞれ決勝と、まるで申し合わせ雪崩れ込むように、今年の野球界は幕を閉じた。正直、長かったなぁ、という印象。

 



 オタとしては、冬支度が始まっても野球を観れるので文句はないですが、選手は大変ですね。でも、これからのオフ期間の過ごし方が、選手の成績の質、現役期間の長さを決めるようにも思う。

 ゆっく休むよりは身体の弱い部分を徹底的に鍛える、もしくは野手であれば思い切ってドミニカあたりのウインターリーグに出向く、そんなストイックな姿勢がNPBの若手にも必要かも。

 メジャーでは、冬にゆっくり休むような選手は淘汰されるだけだそうです。才能なんて紙一重。つまり、お前の替わりならいくらでもいる。だったらやることは判るだろと。過酷な世界ですね・・・・。

 自分に厳しく。今日思って明日できるようなことはない。そして継続は力。私も虎の日本一に感化され、年明けの寝正月を改める所存です キリッ、それだけかよ!

 

 

 それはそうと、11月に入って少し違和感を感じている。野球観戦が例年通りというわけにはいかなくなったのだ。まずアジアCSの初戦、アマゾンプライムが独占配信と相成りました。

amazon-press.jp

 配信というより、むしろ背信・・・・。

 渋々お試しで入って、あくる日速攻で退会しましたが、果たして解約できたのか?

 こういう記事読んでいるとどうも怪しい。

www.j-cast.com

 なんでもライバルのDAZNの場合、退会を巡ってひと悶着あるらしい。どこも一緒でしょうから。もし課金されていたら暴れる。

 また、神宮大会は準決まで、社会人日本選手権は決勝まで放送されず。今週から録画で順次放送されるらしいが・・・・。

 この際、SkyAもGAORA も潔く野球から撤退したらどうか?

 阪神との付き合いは長いけど、この先放映権料は間違いなく騰がり続ける。ABCもMBSも払えるか?

 今ですらタイムスケジュールを眺めてみると、地上波落ちか安っすいコンテンツが並んでる。阪神の試合の完全放送にこだわってたら、ますます貧弱になっていくと思う。

 それでも野球に拘泥するのなら、いっそのこと両社ともに高校野球の膨大な過去の映像をお持ちなのだから、逆にそれで勝負に出たらどうか。つまり新聞におけるライバル関係の恩讐を超えて、手を組んで高校野球チャンネルを立ち上げるというのはいかが。

 この夏朝日は全試合放送を敢行してみせた。やればできるじゃん。でもネット配信だけではいただけない。せっかく立派な有料チャンネルをお持ちなのだから、SkyAでやってくださいな。同様に毎日も、全国の秋の大会を全試合やればいいのに、GAORAで。私のようなオタからすればヨダレが出るほど観たい。過去のアーカイブだって、今のままなら宝の持ち腐れだと思いますよ。

 

 では楽天のドラフト後編です。

 二位の坂井三位の日當はある意味よく似ている高校生投手。フォークの制球が抜群なこと、そしてストレートが思ったよりもベース盤で来ないところも一緒。

 確か坂井はMAX 1 4 8㌔で日當は151㌔でしたっけ。ガンはそれぐらい出るのでしょうが、球威はそこまでのものを感じません。

 ただ、坂井は夏のみ、日當は春までしか見てない。なのでたまたま調子が悪かったのかもしれない。そこはプ口のスカウトの方がしっかりと抑えているのでしょう。

 よく似ている二人ですが、体格は対照的で、坂井は細身、逆に日當は太目。共にプロの身体になれば、見違えるような快速球を投げるのかもしれない。

 しかし、である。以前ご紹介した中田宗男理論によれば、高校生であってもプロ入り後、ストレートが速くなることは滅多にないそうだ。

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 もちろんすべての高校生投手に当てはまるわけではない。強豪校のエースで、ドラフト上位候補に名が上がるような逸材に限れば、その傾向が顕著なのだという。

 根拠としては、環境も育成手腕も整備・体系化されたなかで、一定以上の期間追い込みを掛けられた投手は、すでに天井に達している可能性が高いということか。

 滝川二高に東海大菅生、前者は戦前からの古豪旧制中学で、 後者は新興ながら前任は元プロでスパルタぶりは有名。ゆえにニ人はそこに当てはまることになる。

 しかしそれはあくまで純粋に直球のスピードという意味であって、球質や制球についてはその限りではない。なのでニ人に伸びしろがないというのは間違い。特に坂井はフォークだけではなく、力ットボールも巧みに操る指先感覚にセンスの良さを感じる。打撃やフィールディングもー級品。タイプ的には大型の牛島に成り得る楽しみな素材だ。

 一方、日當の最終形は中田簾とみている。球種を増やすよりも、持ち前のフォークに磨きを掛け、早くから中抑えでの活躍を見込む。苦労人のお母さんのためにも頑張って欲しい!

 

 五位の松田はこの春、阪神大学リーグに彗星のように現れた関西では結構有名な好投手。恐らく大学入学後も、環境面や練習量は先の坂井、日當が高校で経験してきたレベルと比べても緩かったと思う。それでも入学からの四年間で15㌔スピードアップしたという。身体も細くまだ鍛える余地はある。本人も野球が楽しくなり始めたその入り口にいるのだろう。

 癖のないフォームで腕の振りも柔らかい。ただいかんせん細すぎる。当面、坂井、大内と一緒に陸上部で良いのではと思う。

 六位の中島は青学のプチ伝説的な主将。攻守走、すべて揃っているがそれが欠点でもある、という珍しいタイプ。最大の売りはスピードと粘り。上のレベルでもそれが額面通り通用するかは微妙。選手として当たれば儲けものだが、球団はむしろ将来のフロント入りも込みで評価している気がするな。

 ここのところ毎年逸材が門を叩く青学とのパイプにも期待。代走だけではなくムードメーカーとしても使えます。

 

 最後に一位の古謝である。私がスカウトなら一本釣りを狙って一位で入札指名したと思う。まだ下半身が弱いので即戦力としては難しいが、二年目で一気に開花し、三年目でエース。四年目でリーグを代表する投手に、というイメージ。

 WBCに選ばれるとまでは言い切れないが、活躍しないイメージが湧かない、それぐらいの投手。

 下半身は細いが、失礼だが脚は短いので今でも重心は低くバランスは悪くない。しかしここを鍛え上げれば、軸足のタメや蹴りが良くなるので、真っ先に取り組むべきであろう。しかも撫で肩なので、肘の位置が低くても無理なく腕を振れるため、球の出所を限りなく打者から隠せる。

 右にはストレートで押して、抜けの良いチェンジアップ、フォークで引く。左は外のスライダーとストレートだけでリスクを抑えた勝負もできる。

 繰り返すが活躍しないイメージが湧かない! 怖いのは、石井が同じ左だからと手柄を欲しがってしゃしゃり出ることぐらいか。来年の春は無理であろうが、夏の盛りには出てくるのではないか。いきなりノーヒットノーランでデビューを飾っても私は驚かない。

 

 というわけで、今年一番評価している楽天指名選手について駆け足で点検しました。今頃どこのドラフト系のサイトも同じようなことをやっているのでしょうから、できるだけ変化に富んだ切り口で、今回は控えましたがたとえば占星術や人相学的見地? からも見るようにしています。

 ドラフト的な流れでいえば、ここ数年、楽天に来ていると思うのですが・・・・。

 じゃぁ、来年の楽天の浮沈の鍵を握る、そんな選手が獲れたかといえばそうではない。生え抜きの投打の柱がいないだけに、来期の順位云々の前に、まずはそれを仕込むところから着手する必要がある。

 いきなり投打の柱、などと言うと気が遠くなるかもしれないか。しかし、たとえば今年の阪神の場合など、それを育てている途上で頂点を極めた。つまり投打の柱が育ち切っていなくとも、優勝は可能ということ。

 むしろ重要なのは、その候補がいることとそこへ至るプロセス。必ずや柱になる、そう見込んだ選手を獲って、そして育てる。その過程をファンと共有する。グラウンドとスタンドが一体となってチームの柱を育成できれば、その道すがらであっても思い掛けない景色が眼の前に広がる、そんなこともありえるのだ。

 幸い楽天早川荘司のクジに競り勝ち、今年は外れ外れ一位でも古謝の指名に漕ぎつけた。流れが来ているというのはまさにここ。毎年クジに恵まれるなんてありえないのだから。

 さらに坂井、大内という三年後、五年後が楽しみな投手も手に入れた。来年は全員打者でもいいぐらいの覚悟で逸材の発掘に全力を尽くして欲しい。

 東北を再びクリムゾンレッドに染める日がやって来るのか。すべてはスカウトの腕次第である。

 

2023 ドラフト点検 楽天 前編

 ドラフト直前であったか今年の高校生は不作である、というようなことを書いた。原因はコロナ。彼らが中学生時代、まともに野球と向き合えない時期があったことを理由に挙げた。空白期間とまではいわないが、球児たちに間違いなく影響を与えたと思う。

 そんな先入観を持っていたからか、この一年高校野球を眺めていて、こいつはすげぇぜ! そう唸らせるような選手には出会えなかった。まぁまぁ、そこはあくまで個人的な感想。それに去年だっていなかったし。

 で、実際蓋を開けてみれば、今回のドラフトにて上位指名の高校生は少なかった。指名が終わった後、やっぱりな、というのが先に来た。

 小難しいことを言えた義理ではないのであるが、コロナ禍の影響は思われているよりも根深く、しばらくは逸材に出会えないかもしれない、そんな覚悟は当の昔にしている。とはいうものの矛盾するようだが、いやいや、今年の高校生も楽しみな選手がたくさんいたよ、そんな台詞を待っている自分もいるわけで、 ドラフト前から大学生が主役という評判を複雑に眺めていた。

 ただ、夏の大会前にも書いたが、北海の熊谷、東海大甲府の兼松、そして上田西の横山、仙台育英の仁田、徳島商の森は面白いと感じていた。結果として、横山だけが1位で指名された。横山と仁田以外は志望届を出さなかったのでそこは旨なるかな、ではある。仁田の捲土重来に期待したい。と同時に打者に専念すればの条件付きだが熊谷の存在に胸が騒いだと白状しておく。去年の伊藤櫂人同様、また今年も中央へ行くのか、というのもあるが、年内にじっくりと熊谷については書いてみたい。

 

 というわけでまた前振りが長くなった。宣言通り今年のドラフトを球団別に点検していきたい。最初は楽天である。今回一番の指名をしたと思っている。

 まず、私のアマ野球を観戦する立ち位置を確認しておく。二十年ぐらい前までは、スカウトに負けまいとギンギンに力んで観ていたわけであるが、今はむしろ少し引いて、大学のリクルーター気取りで、 トップエリートよりも三年後、四年後に輝く選手はいないものか、そんな目線で眺めている。

 最近のアイドルオタは先物買いが主流だそうな。それと同じだといえば判りやすいか。ジャンルは違えどオタとはきっとそういうものなのだろう。なので先に挙げた選手で言えば、仁田や兼松あたりはその典型か。身体の線も細く、上背もないが、体幹が鍛え上がれば見違えるようになる、そんな選手を探すのだ。

 この一年もそんな塩梅で球児たちを眺めていた。そのフィルターに掛かった選手が、実は今回楽天に指名された。それも複数。

 まずは7位の大内。今年の春の県大会、名門東北を追い詰め名を挙げた。直接観たわけではないが動画を眺める限り、とにかく出で立ちが良い。彼がグラウンドに出れば、外野席からでもすぐ判る。190cmオーバーでありながら顔が小さく、当たり前のように手脚は長い。体重はどうだろう、本当のところはまだ70そこそこしかないと思う。因みにルックスも抜群。スター性は三重丸だろう、華がある。

 フォームは腰高で、マウンドの傾斜を生かし切るだけの下半身の粘りはない。テークバックも癖あり。背中には入れず真っすぐ腰のポケットあたりに下ろす。打者の目線を意識しているのだろうか。その流れから一気に担いで、真上から角度をつけて投げるが腕は結構撓る。そこに才能を感じる。持ち球はスライダー、フォーク。プロ入り後はフォークが生命線になるのだと思う。

 大学や社会人のリクルーターたちは、きっと涎を流して観ていたに違いない。その気持ち、哀しいまでによくわかる。

 いきなりプロはどうかと思ったが志望届を出した。本人も覚悟の上であろう。上下関係の緩い大学を狙うのがベストの選択ではなかったかとも思うが、もう言うまい。二年間は陸上部で良いので五か年計画で育てて欲しい逸品である。

 

 8位の青野はこの春に甲子園で全国デビュー。スケールのあるバッティングが投球以上に注目された。こちらは既に体格は出来上がっており、ねじりハチマキの似合うあんちゃんタイプ。脚力は恐らくない。強い背筋が支える豪快で癖のないスイングと、勝負度胸が売り。

 ただ、守備位置は限られてくる。サードぐらいか・・・・。捕手ができることで本指名を勝ち取ったと見る。

 ベイの宮崎が高校時代、ここまでの選手であったはずはない。そう思うと夢は広がる。こちらも五年は見て欲しい。そうでなければ高校生を指名する意味はないと思う。

 

 4位のワォーターズ 璃海。夏前に知り合いからイヒネより良いよ、そう言われて注目してました。ぱっと見で確かに違うわ、そう思わせるものを感じた。瞬時のスピード。明らかに高校レベルではない。ゴムマリのような体つきと身のこなし。守備は立命館宇治時代の金子や、かなり古くなるが西武の田辺を彷彿。

 ただ高校での成績はそれほどでもない。数字だけ見れば埋もれてしまうタイプか。目に焼き付いたものが評価されたのであろう。性格面までは判らないが、どこまで真剣に野球に取り組めるかが鍵か。まぁそれは誰にでも言えるわな、これ以上やめておこう。

 大内や青野と違って、恐らく来春からファームでスタメンを張るのではないか。

 

 以上三人の高校生。楽天にはまず社会人としての教育も、野球と並行して施してやって欲しいと願う。オコエのようにサボろうと思えば底無しで行けるのではダメってこと。そんな環境しか用意してないのなら、高校生を獲らないで欲しい。プロは個人事業主とはいえ、まだ十代であることを忘れないでもらいたいものである。

 取り合えず寝ます。楽天後半は明日以降で。

2023 ドラフトの勝者は?

 前回申し上げた通り、阪神の連覇について書こうと思っていました。がっ、友人から今の時期はドラフトについてを書いておけ、というアドバイスをいただき、有難く受け止めそうすることにいたします。

 確かに、日本一の騒動が落ち着くまで、世間様は提灯記事やご祝儀スピーチやらラブレターを求めているのでしょうから、卓袱台をひっくり返したり、冷や水を浴びせるようなマネはやめておきます。

 それに週刊ベースボールなんかも、 ドラフトを特集すると売り上げが全然違うらしいですね。実際、すでに来期の先取り特集号も出ています。そういえば野球太郎の価格もやけに強気な設定。共にどれぐらいの発行部数なのか気になるところですが、 ドラフトに需要があるというのは間違いないようです。

 というわけで阪神の連覇に向けて野手編は、そのうちということでご理解願います。

 

 ドラフトが終わって早三週間経ちます。毎年、冷静に振り返られるようになってから考えることがある。ところがどうも今年は答えが出そうにはない、そんな風に躊躇っている。それは、

 今年のドラフトに、勝者はいたのだろうか・・・・?

 ということ。

 

 

 もう十年以上前の話です。当時は今よりも元気で時間もあったので、暇さえあればアマ野球観戦をしていた。ただ眺めてるだけでは勿体ないので、顔を知っているスカウトがいれば片っ端から声を掛けたもんです、ええ。

 邪魔するな、そんな風に睨んでくる方から気さくに応じてくださる方まで、いろいろおられました。そこで話に乗ってくださったあるスカウトが、ぼそっと呟いた一言が未だに忘れられない。

 「クジに負けたら、そのドラフトは上手くいくことはない・・・・。」

 私はどう反応していいか判らず、”そうなんですね、なるほど” 、とあっさりその言葉を流してそれっきりにしてしまった。

 今思い返すと、ある意味、そこに正しさがある、そんな風に感じ入ります。

 ある意味、と書いたのは、やはりアマ野球を直接眺めていると、あの選手は良いな、とか、あの選手は上で伸びるタイプ、とか、可能性のある選手がたくさんいることを思い知るから。特に遠征で地方に脚を伸ばしたりすると、旅情も手伝うのでしょうか、その傾向は強まります。

 なので、たとえクジで負けても、良い選手は他にもいるよ、安直ですがそう思えてなりません。先のスカウトの一言が、言い訳まじりに感じるほどに。

 しかし、である。ドラフトが近づくとそうではなくなってくる。特に当日を迎え、指名の結果が出た直後などは、あの言葉の重みをあらためて感じてしまう。もちろん、たとえクジで敗れようとも、外れ一位で福を招くケースは枚挙にいとまがありません。山田哲人や山﨑康晃、村上、宮城、うちの場合も近本、森下はまさにそれに当たる。

 それでも、である。ドラフト中継を食い入るように観ていると、突然あの一言がまるで真理のように甦る。そしてこう思う、やはりクジの存在は大きいと。

 ドラフトは出会いなのだと思えば、クジに負けようともきっと前向きに割り切れるのでしょう。逆に理詰めでドラフトを組み立てようとすると、クジに負けた段階ですべてが破綻する、そういうことなのかもしれない。

 他にも変な喩えかもしれませんが、 ドラフトを見合い結婚か、恋愛結婚かとすればどうか? 後者の場合、クジがあること自体が許されないであろう。つまり、スカウトが一年かけて必死に選手を追い求めるが故に、選手に惚れてしまう。そこから逆算すると、あの時スカウトが呟いた言葉の持つ意味に近づけるのではないか。

 つまり理詰めで行こうが情熱に任せようが、やはりクジとは邪魔なものであり、故に絶対に負けられない、という結論に行きつく。

 あえてパラフレーズするなら、理と情、どちらが先に来ようとも、ドラフトがスカウトにとって一年の仕事が形となる唯一無二の場。そうである以上、思い描いたドラフトになることを願わない方が無茶であろう。無論プランBもCも用意はしているが、本音としては、こいつなのだと推した逸材と同等の選手などいるはずない。逆になんぼでもいます、という方が怪しい。そう思えば思うほど、クジの存在が不確定要素として悩ましくなる、ということか。

 恐らくそこが、野球ファンだけではなくライトなスポーツファンにも伝わるからこそ、 ドラフトに世間の注目が集まるのかもしれませんね。

 でっ、今回のドラフトの話になるのですが、ご存じのように七度もクジが行われました。結果、口ッテの三度を頭に、ヤクルト、楽天、日ハムが二度ずつ、中日、SBが一度、数えてみると実に11。クジが繰り返される度に、それに敗れたチームが量産されていく。その有様を眺めながらこう確信した、今年のドラフトに勝者などいないと。

 もちろんどのチームも、あるゆる事態を想定し、事前にシミュレーションをしていたとは思う。だが今回の七度の抽選を予期できたか? いやいや、だからこそ単純に、クジに勝ったチームが勝者なのだ、という向きもあるのだろう。しかし私にはそう思えない。なぜならばクジに勝ったチームの顔ぶれを眺めて欲しい。

 まず武内を三球団競合の末に手に入れた西武は、自分が子供の頃から知っている選手だからと一位に繰り上げ指名するような無責任男がGMを務めており、西舘の当たりクジを引いた巨人は、あの水野がスカウト部長という力オス球団。最大の目玉の指名権を得た広島は、スカウト会議にオーナーが当たり前のように顔を出し、金を払うんはワシじゃと決定権を手放さない。渡会を手繰り寄せた強運のDeNAに至っては、野球のルールもよく知らないような背広組が、スカウトの行動を管理しいちいち口を挟むので、その度にやる気を失う有様。どこも問題を抱えている。

 競合を避けた阪神オリックスも似たり寄ったり。今回の1位と目玉選手との実力の差は明白。しかも阪神はどんでんが隙あらば、俺の友達が勧めるんやが何とかならんかとおねだり。オリックスも一見は女性スカウトを入れてみたり、実験的で開かれたスカウト陣のように見えて、実は元を二位で指名したり、謎の高齢御曹司を育成で獲ったりと問題も多い。むしろ堅実でまともなのは、今回クジでことごとく討ち死にしたチームの方ではないのか。

 言うまでもなくどんなにクジが繰り返されようと、一位で消える選手は12名。である以上、想定内の下に二位以降の指名に移れたはず。しかし、である。半分が一巡目で意図した選手を獲れなかった余波は、揺り戻しのようにその後の指名に影響を及ぼす。今回、各球団の事前の皮算用はほぼご破算になったのではなかろうか。

 以上が今年のドラフトに勝者がいない理由である。実際、顔ぶれを眺めていても、これは上手くやった、というチームは見当たらない。反面、 ドツボに嵌った、というチームもほぼない。これはスカウトの能力が平準化してきたことを示しているのか? これだけ情報が溢れそれを整理する手法も身近にあると、独自の動きをするスカウティングも、自ずと淘汰されていくのであろう。

 そんな中、キラリと光る指名をしたと個人的に感じた、楽天、巨人の指名について明日以降で取り上げたいと思います。

猛虎 連覇への星勘定

 火曜だったかの大阪のスポーツ紙の見出しは、ほぼ全紙連覇であった。もうそこに目が行っているのか。まったく鬼がいたら腹を抱えて笑いそうである。
 球団やファンが肩を組んで背伸びして、来年の今頃を眺めているうちに、足元ではわらわらとタニマチたちが選手のスケジュールを入手せんと、申し合わせたように暗躍している。メディア出演の網の目を潜って、確実に選手を抑えるために。つまり虎にシーズンオフなどない。年の瀬まで熱い闘いが繰り広げられるのであろう。例年、11月、12月の月間MVPは、ブッチギリで阪神の選手なのだから。



 連覇・・・・。八方良しを旨とする私にとって、決して望ましい言葉ではない。
 来年ぐらい巨人か横浜でええやろ。そんな風にも思うのである。しかし、ぐらいって、38年振りなのにこの何様状態。そうやって調子こくから、いまだ二度しか日本一になれてないんだぞっ!

 まったく阪神ファンの業は深い。それはプロの阪神ファンとて同様なのである。
 ただ、これからの五年間で二度優勝する。そう言い放ったのが20年の開幕前。

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 少し芸のない話であるが、その線に乗ってみるか。ってことで連覇に向けた星勘定をやってみたい。
 まず選手たちをニつの群に分ける。今シーズン、出来過ぎの選手と、もっとやれた選手、の二つ。
 実際のところ若い選手が多いので実績も少なく、来年もこのまま、というのはあまりいない。なので、強引だけど二つに分けてみる。


 ▢ 出来過ぎ

 やはり村上大竹才木の三人。特に大竹の12勝は文字通りの出来過ぎ。まさに今年の福男であった。来年も活躍したければ、参拝一番乗りを目指して西宮神社のレースにエントリーしたらどうか?

 村上、才木も来期は負け数が増える。ということは勝ち星は伸びない。この三人と伊藤将司も併せると40も勝っているのか。あらためてびっくり。
 伊藤は数少ない安定した活躍が見込める投手であるが、来年は落ちる可能性が高いだろう。この四人で来期は25勝つのが精いっぱいではないか。
 マイナス15勝

 

 桐敷も来期はフラフラすると思う。梅雨ごろには、もう一回先発でやり直すか、とか言われてそう。

 石井も来期は草臥れ、仮に数字自体に変化はなくともイニングは食えなくなるのではないか。来期、この二人は恐らく勝ち星どころではないであろう。
 マイナス3勝

 

 西純もどうか。あのデキで5勝は出来過ぎ。今年で天井が見えた気もする。むしろ中継ぎで回したくなるタイプなので、もし転向があれば期待したいが、勝ち星自体は挙がらない。
 ついでに岩貞西勇も来年はダメな年回りと予想。この三人で14も勝っているが、来期は三人で4勝でどうだ。
 マイナス10勝

 

 恐らく来週あたりにMVPの発表があるであろう岩﨑。今年特段出来過ぎというわけではないが、日本シリーズを含めた精神的な疲労も考慮すると、八掛けと見た方が良い。四月の出来いかんでは、本当は一番合っているセットアッパーに再配置転換も良いだろう。だが今年の勝ち星3自体には変化なしとみる。
 士0

 

 今年、岩﨑に次いで実は登板数の多かった加治屋。来年は全休ぐらい覚悟しておいた方が良い。
 因みに本当に加治屋がダメだった場合、勝ち星の1勝ではなく、51登板、38回2/3を失点12で乗り切れる投手を作る必要がある。これは結構難易度が高い気がする。

 彼には今年の調子を維持して欲しいがそれは酷である。では誰が埋めるのか、一苦労しそうだ。

 マイナス1勝

 

 最後に、勝ち星だけ眺めると出来過ぎと思しき投手が結構いる。島本4勝、浜地3勝、馬場2勝、ケラー1勝・・・・。やはり優勝するチームには、ラッキーが必要なのだとしみじみ。ケラーはクビで、残り三人は来年それぞれ1勝できたら御の字だな。
 マイナス7勝

 

 以上簡単であるが出来過ぎ群。合計するとマイナス36勝となる。
 その凹みを、上振れが見込めるであろう、もっとやれた群が埋める。



 

 ▢ もっとやれた
 まずはJOKERこと青柳。言うまでもなくこの投手を主戦に据えるのは反対だ。しかし日本シリーズで存在感は高まったとも思う。4回までピシャリであれば上等、というノリで中五日で回してみてもいいな。裏の二番手あたりで六月まで頑張れば、二桁復帰も十分可能だろう。勝ち星を挙げすぎると苦情の元になるので要注意物件でもある。

 プラス2勝

 
 同じく日本シリーズを観た限りであるが、湯浅も同様に間違いなく今年以上の活躍が見込めるだろう。岩﨑の状態次第ではクローザー復帰もありだと思う。
 プラス3勝

 

 次に髙橋遥。来年度の福男枠として期待したい。ポテンシャルは阪神ファンにとどまらず球界が認めるところ。こちらも春の立ち上がり次第だが、一気に二桁行く可能性もある。
とりあえずでプラス8勝

 

 そしてこれまた左腕である及川、彼には最も期待している。もう高校時代の悪評であった、イップスだとか、及川は精神面が崩壊した、という噂もまったく聞かなくなっただけに、来期は先発に再挑戦してもらいたい。
 奪三振は岩崎と並んでイニング数を上回るが、与四死球は多いため中継ぎよりも頭から行かせた方が持ち味は出るのではと。ただ、手首が寝るタイプなので、スライダーの曲がりも縦系の変化球も甘い。どのみち腕の位置も含めて見直しが必要な物件なので、先発を前提に改造に着手する良い機会だと思う。

 投手としてのセンスは抜群。故にここからの飲み込みは早いはず。侍ジャパンにも選ばれて本人もやる気に満ちているであろう!
 プラス7勝
 及川は化ければ福男どころか左のエースになれる存在だと思うのだがなぁ、甘いか・・・・。

 

 ドラ1の下村はそのうちしっかりと書くが、肘の古傷もあるので来年は二軍で寝かせた方が本人のためではなかろうか。今のままでは対右打者に難あり。しかし夏ぐらいには出てきてーつぐらいは勝つかも。
 次にドラ2椎葉。こちらはやると見る。理由は色々とあるが、そこは下村同様、チーム別のドラフト点検でじっくり書こう。

 椎葉の加速する159㌔の剛球は、充実する虎のブルペン陣の中でも頭一つ抜けている。これは一年目から話題となる。プ口野球は興行ですから、お客さんに是非見せたいという観点でもデビューは早いだろう。

 下村、椎葉でプラス3勝

 

 次に怪我明けの小川。矢野が無茶苦茶な使い方をして潰れただけに何とかしてやりたくなる物件。怪我の状況や彼の近況について情報はないが、前政権の被害者として優先的に一軍での登板を与えてしかるべきである。持ってる球も良いので、望月の二の舞だけは勘弁してほしいものである。
 根拠はないが、お帰りなさい枠、もしくは復活感動枠としても期待したい。
 プラス2勝

 

 

 次に鈴木創価枠として前政権が二位で指名したが、ノーコンでさっぱりであった。しかし夏以降はファームでもコントロールが落ち着いてきたとの情報もある。
 岡田はイニングではなく、ワンポイントや回跨ぎも辞さない起用法を好む傾向にある。その方が投手のアピールの場が増えるやん、というスタンス。左打者専用機で登板させて欲しい。右投げ左打ちは総じてノーコンタイプの左腕を苦手にしているので、活かしようはあると思う。

 一応、独特の間合いとアングルから150㌔投げます。
 プラス1勝

 

 プロ入り初勝利をどさくさに紛れて挙げた岡留富田の二人。 共に今期の登板数は十に届かず、もっと投げたいやってやる、とそれなりの手応えを感じているはず、ってことでプラス2勝

 もし加治屋の大穴をこの二人と西純が埋めてくれたら助かるが、 果たしてどうなる?

 

 最後に鳴尾浜の期待の二投手、森木門別。もしかしたらどちらかがーつ勝つかも、ってことでプラス1勝

 以上、合計29勝
 マイナス36勝には7勝も及ばない計算になる。だが残念ながら、これ以上上振れする要素はない。ってことはわが阪神に連覇はないのか? 実はそうではない。
 そもそも今年の85勝自体が出来過ぎ。来年もぶっちぎりで勝つわけない。NPBを盛り上げる意味でも三チームぐらいでのデッドヒートが理想。ってことは優勝ラインは下がる。だいたい78勝ぐらいか。
 となると先の計算で良いこととなる。つまり7勝足りなくても間に合う。虎の連覇は可能なのである。
 よっしゃーっ、来年も優勝やーっ!

 というわけだが、よそのファンが読んだら、鈴木だの小川だのと阪神ファンってやっぱりバ力だね♪ そう言われそうではある。
 次回はさらに必笑の野手編、乞うご期待。