Till Eternity

どこよりも遅く、どこよりも曖昧に・・・・

岡田阪神 快進撃の深層

 阪神が好調である。

 雑誌「Number」 も早速特集を組んだようだ。

number.bunshun.jp

 ここが騒ぐとロクなことがないわけであるが、ぶっちぎりで首位を走る以上世間が放っておきはしない、そういうことなのだろう。

 こんな流れにある時は、なるべく茶々を入れないようにしている。なので更新を控えていたのである、ええ・・・・。まあ半分は嘘だが、5月を全休させていただいたその背景のーつではある。

 思い起こせば四半世紀も前、インターネット草創期に野球系のHPをやっていた。 あの憎き野村めが、わが阪神を滅茶苦茶にするので更新にも熱が入ったものだが、 挙句サチヨが逮捕されるに及び、監督が星野に変わったのを機に畳むことにした。 これで阪神は良くなる、そう確信したからだ。

 漫才もそうであるが、ボケがあるからツッコミを入れるのである。阪神がボケなければ、こちらもツッコミようがない。つまり阪神が好調であればあるほど更新は滞る、そう思ってください。阪神が劇的な試合展開で勝った翌日は、わざわざ極北の当ブログなどに立ち寄るのではなく、 どうかスポーツ新聞を買って読んでやってくださいな。そのうちなくなりはしないか心配なのですよね・・・・。

 というわけで交流戦に入り久々の連敗、ここぞとばかりに更新させていただきました。まぁ、今の岡田阪神に文句の付けようはないです。ただし独走は良くない。

 ”八方好し”、という言葉がある。できれば巨人、そして観客動員が絶好調の横浜と胃も痛むようなデットヒート、というのが理想だ。結果として巨人や横浜に優勝を奪われても本望。球界が盛り上がればこそ。その核に阪神がいれば、何の文句もない。私がヤクルトとオリックスを嫌うのは、彼らが興行としての野球における営業努力を中途半端にしかしないその由である。この国の野球を俯瞰する立場にはないのだが、NPBの長い歴史を振り返ってみても、12球団一の不人気球団の座を争う日本シリーズというのは初めてではないか。しかも二年も続けて。ほんまキツかったわ、トホ。

 

 普段の私は特にトラキチを隠してはいない。その噂を聞きつけ多くの同類たちが私に戦いを挑み、そして敗れ去っていった。大阪に住んでいる以上、それは定めである。

 真の阪神ファン、タイガース評論家、考察者、伝道師、プリーチャーなどなど、私に付けられた字名は多い。しかしそのどれもが私にそぐうものではないとして、頑に拒否し続けている。それでも冠を被せられそうになることがある。面倒臭いので、プロの阪神ファン、そう名乗るようにしている。冥府白道プロ、これからはそう呼んでください。

 春先からの阪神の快進撃を受けて、その理由をプロである私に訊ねてくる者が後を絶たない。私に聞けば間違いはない、そういうことである。

 「どうして阪神は強くなったのですか?」

 どストレートにも、そう尋ねられることもある。

 ひとしきり考えたふりをして、

 「・・・・まあ、いろいろあるんだよね、フッ」

 つまるところ、話は少し長くなるよ、そうサインを出しているのである。

 そしておもむろに、「・・・・まずはね、っておい!

 切り出そうとしたところ、’’そっか、いろいろあるんだ’’、そう呟きながら席に戻っていく背中を見送るのが常である。最近の若者は殊更タイパを重視しているようだ。仕方あるまい。

 特に選手の顔ぶれに大きな変化がない以上、阪神が強くなった理由を岡田新監督に求めることに正しさはあるだろう。しかし断言する、岡田が有能なわけではない。糸原が使われなくなったことも大いにあるが、今日はやめにしておく。

 ではどこにその根拠を求めよう。もし、万がーにも今年阪神が強くなって困っている人がいれば、その人を探せば良いのではないか。そう、この二人のことである。

 矢野はああいう奴なので、信仰も含めて仕方ない気はします。そもそも阪神球団が三顧の礼で迎えたわけですから、責任は球団にある。阪神ファンの多くは、自分を球団社長とまではいかないまでも、編成部長ぐらいのつもりでいるようなのばかり。つまり球団の責任となれば、それは即ちファンの責任。だから諦めるしか手はない。

 それとまぁ任期中のドラフト、くじ運もほぼ完璧で、仕事はしたとも思う、間違いなく無駄な四年間ではあったが・・・・。

 問題なのは井上の方だろう。外様で、阪神に対する愛情が伝わってくる気配もなく、自分のキャリアのためだけにわが阪神のユニフォームに袖を通しているように映った。特に打撃コーチとしての二年間が酷かった。口を開けば初球から振れ、見逃し三振はするな、そればっかり。井上道場なるものを開いていたようだが成果もほぼなし。

 金本監督時代、確か2017年だったと思うのだが、当時25歳以下の選手の通算合計ホームラン数を調べてみたことがある。なんと山田のいるヤクルトを抑えて、甲子園を本拠地にする阪神がトップであった。原口、中谷、高山、江越、大山、北條などが稼いだのである。

 ところが今、生き残っているのは実質大山だけ。とりわけ高山、北條、中谷の三人は井上が打撃コーチに就いてからボロボロになった。別にこの三選手が阪神を背負って立つはずだった、などと捲し立てるつもりはない。しかし、もう少しマシな打者にはなると思っていた。だがその最後のチャンスを井上で棒に振った。

 そもそもフィーリング派の高山や、追い込まれてから勝負の北條、狙い球を絞る中谷に、初球振れの縛りはキツかった。恐らく江越や陽川とて似たようなものだったであろう。百歩譲るとして、大山を育てた功績を力ウントしてさし上げても、果たして彼に打撃コーチとしての才や資格があったのか、疑問を呈さざるをえない。

 初球から振るというのは、すべての球種を待つ、もしくはそこから狙い球を絞ることを言い、難易度は高い。初球から振りにいけるマインド自体は必要であるが、それで確実に結果が出るのは高校野球の地方予選まで。ヨシノブばりの才能を持っているのならまだしも、凡人に毛の生えた程度の選手にそれを課したのでは、二、三度結果が立て続けに出たとしても、均せばその再現性は低くなる。まして見送り三振はするなとくれば間違いなく四球は減るわけで、つまり出塁率は確実に下がる

 過去五年間、セリーグの優勝チームはすべて最も四球を稼いだチームであり、そのうち四度は出塁率もトップであった。井上の課した縛りは、そのセオリーに背くものでもある。打撃コーチであっても、究極の目標はリーグ優勝のはず。しかもHCまでやっているというのにだ。四球や出塁率の意味を理解していなかったとしか思えない。仮に初球から打って出ることと、それによって出塁率が下がる、四球が減ることの間に因果関係がないとするのなら、そこに対する客観的、かつ論理的な答えが必要。

 結局、井上一樹阪神において、打者を育てることも、チームを勝たせることもできなかった。つまり先の野村同様、阪神にとって迷惑な人でしかなかったのだ。

 井上を招聘したのが矢野元監督である以上、残念ではあるが彼もその責任を免れないことになるのであろう。

 

 今年、阪神打線が例年になく繋がる、そう感じる方が多いのではないか? しかしチーム打率自体は現在2割4分台、去年、一昨年とさして変わらない。しかし出塁率は去年から二分、一昨年から一分五厘も上がっている。つまりは要所の四球、それが打線を繋いでいる。

 その証拠としては、現在チームの四球の数は二番手のヤクルトに20の差、当面の敵である横浜の三割増しでダントツのトップ。このまま阪神打線が四球を稼ぎ続ければ、秋にはAREが訪れるかもしれない。

 因みにであるが、今シーズンを通しての三振数の着地点は1,140前後。去年より100以上喫することになる。しかしそこには際どい球を選んでの見送り三振が含まれていることを申し添えておきたい。罵声を浴びせたくなるシーンであろうことは理解するが、ご容赦願いたいものである。

 冒頭で雑誌「Number」 が阪神を特集したと書いた。その中に興味深い記事がある。それは ”安藤統男が築いていた1985年日本一の礎” である。”育成と忍耐の3年間” のサブタイトルも添えてある。

 私は38年前の日本一には安藤さんの功績も大いにあると思っている。

 矢野元監督が、そしてあの四年間が、数年後このような形で再評価されることがあるのだろうか ・・・・? コーチ選びさえ間違っていなければ、そう素直に感じる今日この頃である。

2023 WBC余波

 今回もWBCについて書かせていただく。いつものようにボヤキ中心になること、ご容赦願いたい。

 優勝直後はネット上にも提灯記事が溢れ、正直読む気がしなかった。恐らくワイドショーやニュースショー、新聞も輪をかけて酷かったと想像する。

 一応「Number」 だけは記念に買っておこうと思っていたが食指が伸びない。白状するなら決勝戦翌日のスポーツ紙は全紙購入した。しかしその内容にはがっかりさせられるばかりであった。衰退するスポーツ紙の心意気が試される、そう思っていただけに尚更である。なので「Number」 についても躊躇が先に来た。結局買ったがまだ読む気にはならない。困ったものである。

 お祝いムードは理解できるのだが、何でもかんでも美談に仕立てるのはどうなのか。物事が正しく伝わらない気がする。こういう手合いは、視る側や読む者が望んでいるものから逆算して番組を演出するなり、記事を書くなりしている。何故そこにあるものだけを伝えようとしないのだろう・・・?

 今、侍たちとファンの間では、幸せなサイクルが回っている。それは牧歌的な景色で、風車に見入る幼子のように汚れた私の心も和ませてくれる。これ以上は望むべくもない。だというのにその回転速度を上げようとする輩がいる。どうでもいいものまで取り上げ、ネタが尽きようとお構いなし。やれ、大谷の通訳がロックスターだの、やれ、決勝戦の後日本のフアンがゴミを拾ってただの・・・・、うんざりである。

 これではアイドルやタレントを取り上げる際の手口と一緒じゃないか。本人に迫り過ぎると事務所からクレームが入るので、ぼやけたプロフィールと盛った周辺情報でお茶を濁す。そんなことばっかりしているから、本当に焦点を当てて欲しいものを探し見抜き咀嚼し、判り易い言葉で伝える、そういう能力が弱ってきているのだろう。

 もう逆算以前に、視る側や読む者が望むものさえ、見えなくなっているのかもしれない。私は大谷の凄みや村上の可能性についてもっと知りたいし、”Next OHTANI” についても言及して欲しかった。しかし納得できる記事にはお目にかかれない。残念である。

 

 

 今回は日本の優勝で終わったが、WBCはこれからも続いていく。次回は26年らしい。次がどんな大会になるのか、あるべき姿とはどのようなものか、そんな議論もあまり聞こえてはこない。三年後となれば、大したフォーマット変更は望めない。興行収入の大半をMLBとその選手会が持っていく以上、アメリ力におけるベースボールの地位がWBCの命脈を握る構図は変わらない。

 ならばというわけでここでおさらいすると、アメリ力におけるスポーツの順位は、NFL、NBA、MLB、NHL、MLSらしい。つまりベースボールは三番手である。しかしこの順位を私は疑っている。ソースを示せなくて恐縮であるが、”一番好きなスポーツは?”、という間いかけの場合はこの順位が妥当だろう。しかし、”好きなスポーツを二つ、もしくは三つ上げろ” という設間になると、ベスト3の順位はNFL、MLB、NBAに変わるはずだ。まぁボリュームは、NFL >>>>MLB≧NBAって感じだろうが。

 MLBにとって当面のライバルであるところのNBAの人気というのは実に曲者で、今から遡ること三十年前、若者を中心にムーブメントが巻き起こり、バスケ人気がアメフトを凌駕したことがあった。このまま十年、二十年と順調に時間が経てば、すべての年代でNBAがトップに躍り出る、そう言われたものだ。しかし彼らは年を重ねるにつれて埋没していった。

 どんな商品であっても若者の支持を取り付けることは最重要とされる。しかしそれができたとしても、数年後のマーケットを先取りしたことにはならない。NBAの人気の推移は、そのケーススタディだと思っている。つまりは商売に安泰の二文字などない。NFLであってもその人気は盤石ではないかもしれないし、MLBがそこに付け入る余地はないなどと決めてかからない方が良いだろう。

 MLBにはWBCを梃にとは言わないが、もっと攻めに出るべきだ。前回も指摘したが、アメスポには閉鎖的なところがある。アメリ力一強の時代はそれで良かった。しかしアメリカ・ファーストが声高に叫ばれる昨今の状況をどう読み取ろう? アメリ力をもう一度偉大にという思いがそこに込められているのか、それとも孤立主義を促しているのか・・・・。政治はさておき、スポーツに求められる方向性は前者で間違いないだろう。内向きになればその競技のレベルは下がり、人気は落ちる。当たり前のことだ。

 しかしアメフトが世界的なスポーツになることは、そもそもその名称がそれを拒んでいやしないか。アメリカンフットボールを頑張る他所の国は、そう滅多に現れるものではない。バスケは競技人口は多いが、ヨーロッパや南米にNBAに近い規模のリーグができるとも思えない。長い目で見て、この二つのリーグに上がり目はないだろう。アメリ力の国際的な威信が衰える中、内輪受けに終始するようでは現状維持が精一杯ではないか。

 翻ってMLBには、中米の小国や極東のー部であるが単体でアメリ力に迫り得る国がある以上、可能性を外に求める戦略を打ち出すべきだ。また、NFLやNBAというライバルにできないことをする、という狡猾さも必要。つまりはもっと開放的であるべきなのだ。メディアには、今こそワールドシリーズの示す意味や、WBCの持つ可能性について言及して欲しかった。

 まったくボヤキばかりで恐縮である。お詫びというわけではないが、今回のWBCについての感想を述べたい、ってこれじゃお詫びにはならんか・・・・。

 大会が始まる前から言われていたが、もしアメリ力やドミニ力がもう少しエース級の投手を揃えることができたならどうであったか? 日本の優勝への道のりはもっと険しいものになっていたであろうことに言を俟たない。

 なぜ参加できなかったのかについてはメディアに詳しい、

www.nikkansports.com

www.chunichi.co.jp

 

 しかし日本も万全な投手陣とはいえなかったのではないか。結果的に大勢や高橋宏、湯浅、宇田川あたりの若手が活躍したようだが、私が監督なら別の投手を選ぶ。山崎、岩崎、増田、益田あたりはどうか? また左の高橋奎も加藤貴という選択肢はなかったか?

 去年のシーズンオフからの選考の過程や練習試合はまったく観ていないので言えた義理ではないが、増田、益田の経験や安定感は買えるし、加藤貴の制球力は球界一だとも思う。ベテラン故に最後の檜舞台に対する思いも付加価値として力ウントできる。まぁ本音を言えば、若手がWBCで活躍するとNPBを舐めるので、それが鼻について嫌なわけであるが。

 一方打線のレベルは素直に上がったと感じた。特にここで長打が欲しいと願う場面での一発は、これまでなかなか出なかっただけに隔世の感がある。第四回大会以前を文字通り一昔と感じるほどに。

 思うに、準決勝以降というか、戦いの場をアメリ力に移した決勝Rで出た効果的なホームランは、第一回準決勝韓国戦での福留のホームランだけであろう。それが今回は三発。特に村上の一撃は打球速度も飛距離も大会随一ではなかったか。このような打者が日本で育つようになったことを、新鮮な驚きとして受け止めている。

 こうして各大会の主砲の顔ぶれを眺めていると、今回の打線は特別であったと感じる。もちろん村上は別格な存在ではあるが、並びうる選手はいると思っている。佐藤輝には頑張ってもらいたいのだが・・・・。こればっかりは阪神フアンの性ですな、スイマセン。

 また今大会のスタンドの風景を眺めていて感じたことが二点ある。

 一点目は国内ラウンド。日本戦が常に満員!! 第三回大会以前は、日本戦でも三塁側は空席が目立ったものだ。単価は当時は七、八千円。今回は一万円オーバー。インフレは確実に進んでいるが、大谷効果だけではなく、景気もこの十年で持ち直しているように感じた。

 二点目は準決勝以降の口ーンデポ・パークのスタンド。観客の大半は白人、ちらほらヒスパニック、そして日本人。つまりアフリ力系のアメリ力人がほぼいなかった。直後、マスターズのゴルフのそれにも興味があったのでチャンネルを合わせてみたが、こちらのギャラリーは白人のみ。

 フロリダとジョージアはほぼーつの地域と言っていいので、これだけを切り取ってアメリ力の分断が進んでいるとまでは言わないが、そういう動きは間違いなくあると感じた。

 六割以上がアフリ力系アメリ力人がプレーするNFLやNBAと、その1/10しかプレーしていないMLBを比較して興味を持ってくれというのがそもそもの間違いであろうか。ベースボール離れの要因は奨学金だろう。このあたりについては去年書いたか。

tilleternity.hatenablog.jp

 

 1次Rを戦うことになった韓国の低迷にも触れておく。

 韓国もベストメンバーではなかったであろうが、投打ともにパワー不足とレベルの低下は否めなかった。実はその原因ははっきりしていて前々から指摘もされている。

www.baseballchannel.jp

 これは六年前の記事である。韓国高校球界が木製バットを導入したのは2005年、 当時は日本に先駆けて国際ルールに準拠すると鼻息も荒かったのだが・・・・。

 まぁ韓国野球のことなどはどうでもいいのであるが、皮肉にも今回の日韓戦の結果から日本野球のレベルがかなり上がったことを改めて実感できて、その後の快進撃をも予見させてくれた。WBCでもない限り、国内の野球のレベルにそうそう気づくものではない。第一回大会から他国とガチンコで戦い続けているからこそ伝わってくるものでもある。日本が優勝したから言うのではないが、意義のある大会だったと思う。

 ここで俄然気になってくるのが、来年度から低反発バットを導入するわが国の高校野球である。どうにも韓国と同じ轍を踏まないか心配なのだ。

spojoba.com

 韓国の状況とは裏腹に、「打者の技術向上のメリットがある」などと書かれている。そこを安易に期待するのは難しい。

 まず投手の能力を上げるにはいくつかの道筋がある。しかし打者の場合それは限られている。かなりの部分で実戦、特に対戦する投手の能力に依存しているからだ。

 この春の甲子園で、 150㌔を計測した投手は結局現れなかった。ということはこうも言える。150㌔のスピードボールを打ち返せる打者もいなかったと。これは屁理屈でも言葉の遊びでもない、事実だ。

 卵が先か鶏が先か、この結論は永遠に出ないが、野球のレベルを上げるのは間違いなく投手が先だ。150㌔のボールを打ち返すには、それを投げる投手が必要だからだ。

 マシーンで150㌔のボールを打つことは、今から40年前、私が真剣に野球をやっていた時に既にできた。今ーつ信頼性はなかったが、設定次第でそれは可能であった。だから150㌔のボールを打つことはできたといえる。

 しかし、である。ひとたび試合で130㌔半ばのストレートを投げる投手がマウンドに上がれば、まったくのお手上げであった。凄い投手が身近に現れると、その投手を打つために努力や対策が迫られる、その過程を経て打者のレベルは上がるのだ。

 今回の低反発バットの導入で打球の飛距離が落ちれば、「投手の負担軽減」や「打高投低」 の傾向の調整に資することにはなるだろう。そこに疑いはない。しかし同時に、投手のレベルを下げることにもなる。今までの八割の力で抑えられるようになれば、そのうち100%の自分を見失うようになるからだ。

 問題は次に来るのが打者と投手の拮抗でなく、打者のレベルの低下である点だ。つまり低反発バットだとか、もしくはストライクゾーンを広げるとか、そういった打者の条件を意図的に悪くすると、投手は楽になる分レベルが落ち、後はそれを引き金にデススパイラル。

 ボールが飛ばなくなるから打者のレベルが落ちるのではなくて、投手のレベルが落ちるからそこに引っ張られて打者のレベルが落ちるのだ。今回のWBCで韓国が身をもってそれを証明してくれた。韓国国内では特にスラッガーの不在を嘆いているようだが、日本に連れてきたくなるような剛腕投手もいなかったことを申し添えておく。

 低反発バットの導入を巡り、高校野球への悪影響についてばかり書き連ねたが、前向きに捉え直すことも可能だ。指導者がしっかりとした打撃理論を持っていれば、逆にチャンスはあると。

 そのあたりについて、実はニ年前に書いている。

tilleternity.hatenablog.jp

 コロナで練習試合を組めなくなるので、実戦よりも理論が重要になる、そう思ったのだ。しかしコロナも落ち着き、私立強豪校は土日にバンバン練習試合を入れ遠征も再開し始めた。恐らく彼らのことだ、潤沢な予算に飽かせて、あらゆるメー力ーの低反発バットを発注し選手に試し打ちをさせるのだろう。そして一番良く飛ぶバットを探し当てる。

 片や金のない高校にはそれは不可能。ならば理論でそこを補うしかない。低反発バットの導入で、すべての高校生が一度スタートラインに戻り、打撃においては再出発を図る。またとないこの機会、上手く活かして欲しい。

 ”俺の打撃理論で高校野球を変えてやるっ!” そう腕を撫す猛者がいることを、できれば公立校の古豪にそういった指導者がいてくれることを願ってやまない。

2023 WBC外伝

 今回もあえてWBCについて書かせていただく。旬を逸した感はあるが、そこは当極北のブログ、”どこよりも遅く” をお題目に掲げている、ご容赦願いたい。むしろ世間の関心が冷めた頃合いにWBCを取り上げることで、そことは一線を画す思いもあることを記しておく。単に天邪鬼なだけかもしれませんが・・・・。

 国内の盛り上がりや熱狂については想定内であっただけに、私の関心は早くからアメリ力がこの大会をどう眺めているのかに移っていった。しかしてその答えは、そう簡単に探し当てられるものではなく、大会が終わってからようやく伝わってくるものばかり、

hochi.news

 視聴者数が69%アップなどの数字はさておき、国内のメディアは提灯記事が基本、果たして信用できるものなのか、ならばこのあたりをはどうか、

forbesjapan.com

 「Forbes」でもほぼ同じような感じ・・・・。そこで熱を冷ます意味でもあちらの国内主要スポーツインベントの視聴者数を見ておきたい。

 まぁ、要するにWBCが盛り上がったと言えども、NFLポストシーズンの1/10、ワールドシリーズのファイナルの半分も行かなかった。一定の評価はできるが、アメリカにおいてまだまだコンテンツとして認められたとは言い難い。

 しかし「Forbes」でも語られているが、アメリ力の3月は大学バスケットボールが主役。いわゆる ”March Madness”。そもそも野球を真剣に観る習慣はない。それだけに割り引いて考えなければならない部分もあるとは思う。今後WBCがどう定着していくのか慎重に、そして興味深く見守りたいところである。

 ただしこの度の結果を受けて、アメリ力におけるWBCの扱われ方に、少なからぬ変化があったと言えやしないか・・・・?

 というのは前回、アメリ力がようやく世界一の座に就いたというのに残念ながら盛り上がりには欠けた。私なぞ、こりゃあかんと匙を投げたというのが正直なところ。つまりアメリ力様がお望み通り優勝したのに、そのシナリオでもご満足いただけなかったのですか、もうこれ以上は無理っす、そんな感じ。

 ところが今回大谷に力で捻じ伏せられたというのにどうやら満更でもない御様子。わからないもんですね。

 特に驚いたのはこの方の発言。


www.youtube.com

 大谷嫌いで鳴らす Rich Eisen氏ですらあのエンディングにはご満悦のようですから。

 

 

 今回のアメリ力におけるWBCへの関心について、もう一つ気になった切り口がある。それは直近の2月に開催されたNBAオールスターとの比較。実は視聴者数でWBC決勝が上回ったとネットで少し話題になった。そう思い返し上の数字を改めて眺めてみると、確かに超えている。

 しかし、である。どうやらそれは歴代で最低の数字であったようだ、

basketballprs.com

 ここで一端WBCから話を逸らすのであるが、世の東西を問わず昨今の風潮として、どうも ”花試合” は世間の関心を集められなくなったように思う。それは上の数字からも見て取れる。

 わが身に振り返ってみれば、MLBのオールスターを真剣に観たのは95年のボールパーク・イン・アーリントンで野茂の雄姿を拝んだのが最後。NPBのオールスターなど三十年以上観てない。地上波でしかやらない以上、そこは譲れないところである。フレッシュオールスターは毎年かぶりつきで観ているのだが・・・・。

 実際のところ視聴率も低迷しているらしく、「プ口野球のオールスターも寂れたもんだぜ!」、そう腐されることも多い。しかし私に言わせれば、その流れは既に昭和の最後には出来上がっていたようにも思う。

 あれは1987年、甲子園で行われたオールスター。目玉は巨人桑田対西武清原の夢の対決。当時のメディアはこの話題で持ちっきり、舞台が甲子園というのも相まって無茶苦茶盛り上がっていた。実際清原が見事にホームランを打つわけであるが、その画像がこれ、


www.youtube.com

 注目すべきは二人の対決ではなく外野のスタンド。そこかしこに空席があるのが判る。初回なので客が埋まりきっていなかった、という見方もあるかもしれないが、当日は確か土曜か日曜だったはず。真夏の甲子園阪神巨人戦が行われたら、昔だろうと今だろうとこういうことは絶対にない。

 当時私は学生で、東京からテレビでこのシーンを眺めてましたが、”高校野球の英雄再び”、”桑田 vs 清原”、”オールスター”、 この条件でもマンモス甲子園は埋まらなくなったのか、そう慄いていた。同時に ”花試合” の限界をも感じた。 パラフレーズするならば、人々は真剣勝負こそを望んでいるのだな、と。

 そう思ってみると、NFLはまったくオールスターであるところのプロボウルに力を入れていない。このあたり、しっかりとファンが欲しているところを理解しているのだろう。年俸が数十億のスター達を集めたところで怪我を怖れて全力プレーを怠ったり、また寄せ集めではセットプレーの質も低くなるだけ。ガチンコとは程遠い。これでは花試合と割り切れる人しか観なくなる。

 MLBもそのあたりを感じ始めたのか、オールスターのフォーマット変更を模索している。国別対抗にするとか、そういう案が出ているらしい。国を背負うとなるとプレーする選手の真剣度は高まり、観る側のテンションも自然と騰がる。そこは今回のWBCで証明されたと思う。侍たちの活躍や日本の優勝は、やもすると閉鎖的と評されるアメスポという括りから眺めてみても、新風を吹き込んだと言えるのではないか?

 というわけで、ここからいつもの妄想がてら提案したいことがある。

 MLBは去年からポストシーズンへの進出チームを従来の10から2チーム増やし12とした。最終的には14にまで拡大したい、そんな噂も漏れ聞こえてくる。球団数は30だから、ほぼ半分にポストシーズンのチャンスを与えようという算段だ。まぁ流れとしては判らないでもないが、ワイルドカードだらけになるこの状況、手厚すぎるというか何というか、そこまでするのかという向きもある。

 ポストシーズンが真剣勝負ではないなどと、イチャモンをつけるつもりはない。しかし参加チームや試合数を増やすだけでは、その価値が目減りするのではないか? つまり必要とされるのは、スケールメリットではなく工夫だと思うのだ。ならばそのワイルドカードの1枠を、われらがNPBに割り当ててもらえないものか。つまりMLBのポストシーズン日本シリーズの勝者が加わるというわけだ。

 少なくとも日本球界が活気づくことに疑いはなく、長い目で見れば宗主国であるところのアメリカ様にも、悪い話ではないと思うのだが。

おめでとう山梨学院!!


 山梨学院が初優勝、というか山梨県勢が春夏決勝に進むのも今回が初。そして優勝。お見事です。指揮を執ったのは言うまでもなく吉田洸二。

 甲子園二校Vは四人目の快挙。ですが二校とも県勢初というのは初。まさに偉業。今後も破られることはまずないと思う。現役で名将に一番近いと言っても良いでしょう。

 好き嫌いの激しいこの私ですが、吉田さんは好きですね。だからというわけではないですが、実は去年のセンバツでは優勝候補に挙げてました。

tilleternity.hatenablog.jp

 ところが初戦でコロッと・・・・。

 去年の夏も同様でして、それで結構厳しめに書きましたね。

tilleternity.hatenablog.jp

 息子を実質後釜として部長に据えるのが、私には甘さに映った。小倉さんを臨時コーチに呼んでみたりするのもどうかと。船頭多すぎで何とやらっ、選手も誰見て試合すればいいのか迷っているようにも感じたものです。

 才能という意味では去年の選手の方が今大会のチームよりも粒ぞろいだとも思っていました。故にあの面子で一回戦ボーイってことは今後どんなチームでもあかんやろと。それが蓋を開けたら優勝。出来過ぎというか何というか・・・・。

 戦前の予想は報徳圧倒的優位。データーが囁いているとでも申しましょうか、どこを見てもそうなるとしか思えなかった。六試合目に、林一人に、報徳の三枚、そして地元兵庫。ほんと勝負事って判らんもんですね。吉田さんのことを思うと凄く嬉しいのですが、正直まだ混乱しています。

 それとこの高校は結構注目し続けていただけに、今回優勝候補に推せなかったのは仕方ないまでも、せめて昨日の段階で少しは優勝があると思えなかったのか? まったくもって自分が許せない。何か頭が変になりそう。まだまだ修行が足りん、そういうことか。

 

 頭が変になりそうという意味では、やっぱり良いですね ”アゲアゲホイホイ”。報徳の逆転劇があったから言うわけではないのですが、あれエンドレスで演ったアルプスの側が勝つんじゃないですか。そう思わせるほど最強。

 ノリが良いというのもありますが、何より単純なのが良い。今も私の頭の中で鳴り続けてますもん、ずっと、ええ。まじで頭が変になりそう。多分今年の夏はどの地方も予選から凄くなると思う。

 というわけで、私の中の Best of AgeAge HoiHoi をどうぞ!


www.youtube.com

 

 

森下ウォッチャー回想記 最終回

 ついにNPBが開幕します。森下がスタメンでプロデビュー。しかも虎のユニフォームで・・・・。感慨深いものがありますね。

 こいつはやる、東海大相模時代から足掛け五年に渡ってそう言い続けてきましたが、失笑を買うことも多々ありました。特に大学二年、三年次には東都で二割も打てない選手が、と言われたものです。よくBB/Kが1以下の選手はプロでは通用しないとも・・・・。

 ネットスカウトの評価も一貫して低く、去年の今頃で15番手。雑誌「野球小僧」のドラフト直前のランキングも18位。良くて二位前半って感じだったように思います。

 それが今では ”あんなに選球眼が良いとは” とか ”空振りが少ない” とか、”打席に内容がある!” とまで言われる始末。きっとこういう方々は、今日から始まる半年にも及ぶペナントレースの中で、森下が糞ボールを無様に空振りを繰り返す度に、ほらみろだからK/BBが、と掌を返すのでしょうね、ええわかります。

 大学時代の成績から振り回すだけの粗っぽい選手、そう思われがちでしたが、オープン戦と言えどプロの投手相手にあれだけの好成績を残すことができた、その謎を解く鍵、それは ”大学野球補正” にあります。

 細かいことはそのうちゆっくり書きたいと思います。今、改めて森下を眺めながら感じるのは、打席で投手との勝負に集中できている、ということ。つまり大学時代は投手以外のいろんなものとも戦っていたというわけです、ええ。

 本人は新人王を目指すと高らかに宣言したわけですから、狙ってもらいましょうぞ!

 そこで娘の思い出の一枚で全力アシスト!

 

 さてさて数分後には試合が、って、おいおいもう始まりましたわ、あっ一回表が終わった、はやっ・・・・。

 わが阪神タイガースの2023年が始まったようです。三時間後にどうなっているかは判りませんが、目先の結果に一喜一憂せず、腰を据えて彼らの挑戦を見守りたいと思います!

仙台育英散る!

 うーん、自信はあっただけにまだ信じられません。

 この春の仙台育英は強いチームというよりも負けないチーム。今日も持ち味出ていましたが・・・・。

 先発仁田が全てなのでしょうが、仁田は怖くて二番手以降では使えなかったので、結果としての先発だったのか・・・・。

 修行し直します!

センバツ前半戦雑感

 先週始まったセンバツ、早や前半戦が終了。今大会は結構面白い試合が続いているのですが、すっかりWBCの裏に回ってしまい影が薄くなった感は否めません。まぁ、野球で世間が盛り上がっているのですから、愚痴を言うと罰があたりそうですね、ええ。これ以上はやめておきます。


 予想は外れてばっかりなのですが、良い方に裏切られるケースが多かったですね。
 まずは長崎日大。先発が広田なのも驚きましたが、背中の1番に二度びっくり。

 指導者の方々には、選手の実力が同等、否、少し劣っていても上級生を立ててやって欲しい、平成に入って以降ずっとそう願ってきましたし、ここでもそう何度も書いてきました。

tilleternity.hatenablog.jp

 心に響く、奇跡や名勝負と語り継がれる多くのドラマが、最期の夏という三年生だけが持つ情熱や意地を源泉としている。

 あえてパラフレーズするなら、

 指導者は三年生と心中する覚悟があるのか?

 二ヵ年計画や三ヵ年計画はやめて欲しい!

 私は高校野球を眺めながら常にそうも問うてもきましたが、平山監督からその思いが伝わってきました。実質的なエースである2年西尾の投入にも遅れて、結果的には負けはしましたが、令和になって良い流れや雰囲気が醸成されつつあると思います。夏も再び激戦区を勝ち上がって欲しい、待っています!
 次に関東勢が頑張っていることも嬉しい誤算ですね。アウェイだけに実力を出し切れない傾向にあったり、コロナ禍の影響も真面に受けた感があったのですが、その象徴とも思えた山梨学院がようやく結果を出してくれました。実は去年の春も期待していました。しかし春夏共に初戦敗退・・・・。この春も1回戦から出場という罰ゲームに遭い、運気もめっきり落ちているなと思いましたが、ここに来て風向きが変わったようです。選手は今年も揃っているし、そもそも関東王者なのですから後二勝はできるはず。

 作新も英明との文字通り死闘を制して勢いに乗っていると見ます。小針さんもようやく選手と程よい距離を取れるようになったのではないか。初戦は17人、二戦目は18人と常にほぼ全ての選手を使っての勝ち上がり、見事です。

 これまでの小針さんの目線はほぼ選手と同じで、故に凡ミスを犯すと許せなくなるのか懲罰交代が目立ちました。今回はそのあたりを抑えられるようになったようです。吉田さん同様、これからも関東野球界を引っ張って欲しい!

 WBCで野球への関心が一時的に高まっていると感じるのですが、この国最大のマーケットである関東が盛り上がってこその野球人気復活だと思う。専大松戸東海大菅生も含め関東勢にはこの春の主役に踊り出るぐらいの覚悟で頑張って欲しいものです。
 近畿勢は放っておいてもそこそこやるでしょ。履正社こそ監督の経験不足で勝てる試合を落としましたが、大阪桐蔭、報徳、平安あたりは黙っていても二つぐらいはベスト4に残ると思います。

 そういえば智辯和歌山の初戦敗退も嬉しい誤算ですね。しかしこれを受けて高嶋がどう出るのか不穏だと先日書きました。常識的に申し上げれば中谷は二年前の夏、全国制覇しているので安泰だと思われがちです。しかしあの年はコロナで歪な大会となったので、評価はまだ定っていません。

 それに高嶋には前科があります。かれこれ十年以上前になりますか、元ロッテの喜多を部長に呼び寄せ五年修行させた挙句、後継指名もしておきながら直前でちゃぶ台をひっくり返しました・・・・。

 ご存じのように私はかねてより、智辯和歌山常総、帝京、明徳をヒール四天王と呼んでおります。理由は指導者にあります。高嶋、木内、前田、馬淵というそれぞれの監督には色々と共通点がありまして、後継者を育てようとしない姿勢もその一つ。今大会にも出場している専大松戸の監督である持丸さんは、木内が呼び寄せておきながら切り捨てられているのです。

 また昨今の帝京はすっかり弱くなってしまいましたが、前田が自分の後釜を育てなかったからでしょ。あそこは合宿に入らなくていいので良い選手は必ず集まりますから、急激に弱くなるようなことはないはずなのです。

 馬淵さんを先の三人と一緒にするのは少し憚れますが、きっと死ぬまで明徳の監督を続けるような気がしますね・・・・。

 後継者を育てると見せかけて実はそれをしない、というのはこの国の経済界ではよく見る光景です。SB、ユニクロ日本電産等。せめて高校野球は真っ当であって欲しい、そう願ってやみません。最後は愚痴になって申し訳ございません。

 それでは本日の予想ですが、山梨、松戸、広陵でお願いします。