Till Eternity

どこよりも遅く、どこよりも曖昧に・・・・

阪神 優勝へのカウントダウン Ⅸ

 虎のマジックが怖いぐらい順調に減っている。もちろん奴らのことだ、どこかでボケをかましてくれるのだろう。それを楽しむのもまた一興である。近いうちに尼崎の商店街の様子を覗いてみようと思う。おばちゃんたちがどんな風にあのボードを眺めているのか、その反応も楽しみだ。近いうちに報告したい。

 一方岡田はというと、まだ気にする時期ではない、とのこと。パイン飴を舐めしゃぶりながらも、いつになく冷静である。将がそうである以上、われわれもそうあるべきだろう。8月中はマジックに一喜一憂するのはやめることにしよう。

 とはいうもののようやく死の口ードが終わる。これはーつの節目。何かしなきゃ、年甲斐もなく気がはやる 。そうそう、替わりに数えるものがあるじゃないか。俺たちの虎がようやく甲子園に戻ってくる。それまで今日を入れて 後四日!

 

 

 本日は梅野について書かせていただく。ご存じのように今シーズンは絶望らしい。だが岡田阪神の正捕手が梅野がであることに疑いはない。去年の秋、就任と同時にそう宣言した。恐らく来期もそこは不動だ。

 これから本当の戦いが始まろうというのに、いない奴の話をするな、そうお叱りを受けそうである。しかし不在の今だからこそ取り上げ、梅野を介して球界を見渡せば、思いがけない景色に出くわすかもしれないではないか。

 

 今シーズンの梅野のパフオーマンスに満足しているファンは少ない、というかいないだろう。打撃だけではなく、盗塁阻止率も低い。どんな暴投も受け止めて見せる、売りでもあったフットワークを活かした、キャッチングというかミット捌きもイマイチ。こういう言葉は使いたくはないが、全体的に衰えが目立つ。

 矢野政権の四年間で、いろんな意味で消耗し尽くした、その疲れが慢性化したように感じる。野村暗黒時代に地獄を彷徨った今岡が、結局その後四年でピークアウトしてしまった姿と重なる。ともに三十二歳というのも。

 身体のキレや肩、打撃面での早すぎる衰えは、小柄な捕手の定めと言えばそれまでかもしれない。しかし本来は年齢的にもこれからなだけに、今岡同様、本当に消耗してしまったのではと心配になる。

 またリードもいろんなところで坂本との比較で酷評されている。じゃあ正捕手はずっと坂本で、といえばそれは違う。確かに坂本は頑張っている。貯金の大半を作っているのも彼。しかし、よくやっている、そのレベルでとどまる。傍から見る限りだが坂本自身がいっぱいいっぱいだ。もともと伸びしろのあるタイプの選手ではない。やはり来年も扇の要は梅野。

 しかし誤解していただきたくはないのであるが、坂本を嫌っている、というわけではない。以前、坂本の後援会がらみで叩いたことがあった。

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 正直言えばあの件は、今でもあっちゃならないケースだと思っている。球団、選手、タニマチの関係を示す悪しき事例。二度と繰り返してほしくはない。

 ただ、坂本の能力は高く評価している。といってもスタメンが相応しい、とか、スーパーサブとして、でもなく、彼の人間的な ”力” を評価しているのだ。

 老い待ち、という言葉がある。落語などの世界では若い時分は難しいが、年を重なれば芸に味わいが出る、そういうタイプがいるという。坂本も同様で、彼が最もわがタイガースに貢献するのは、引退後、バッテリーコーチに就任してからであろう。

 また一転、裏方に回ってスカウトやスコアラーでも必ず力を発揮すると睨んでいる。東のように球団職員としてのキャリアパスを用意するのではなく、 必ず直接現場と関わりのあるポジで、彼に仕事をさせて欲しい。

 何より野球を深く良く識っているし、誠実で謙虚な人柄も良い。 阪神が一生面倒見るべき物件。そういう意味での評価である。プ口の阪神ファンとしてもお願いする、球団はぜひに坂本の終身雇用をご検討いただきたい。

 では梅野の後継者は誰か、そこに興味がいくと思う。将来的な話でもあるので、できれば中川に英才教育も兼ねてー軍にもう一度上げて欲しいところだ。つまり榮田ではないだろってこと。

 実は中川は高校時代から評価していた。

tilleternity.hatenablog.jp

 

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 ただこれ以上は別の機会に譲ろう。

 

 梅野が大学侍 JAPAN の四番を任された男であることを知る者は少ない。アマ時代から注目していた立場で言わせていただくなら、打撃は入団から一貫して右肩下がりである。

 プロ入り後、打撃面でスケールダウンしてしまう選手は結構いる。というか、まぁ言ってしまえばほとんどがそうか。これこそがアマとプロの違い。だがその言葉で片付かないケースがある。まさに梅野がそうなのだ。

 例えば、北條や堂林、中村奨、西武の渡部あたりについてはその言葉のままでいい。しかし梅野の場合、プロ入り後、キャンプやオープン戦で長打のあるところをアピールし、開幕からもいいところで打った。

 これは毎月三本はホームランを期待できる打者に育つ。二十本は無理でも十五本は楽に行く、待望の打てる捕手、そう色めき立ったものだ。つまり、入団後即プロの壁にぶつかったのではなく、まずその片鱗を垣間見せるが、いつの間にかそれが消えてしまうという珍しいパターン。

 梅野以外でいえば、中日の周平がその典型か。周平も高校時代は堂々の日本代表の4番。そして高卒入団一年目、甲子園でいきなりバックスクリーンに叩き込んだ。まだ19歳、正直やばいな、そう感じた。だがあの周平は恐らく二度と帰っては来ないだろう。

 西武時代の炭谷も同様。プ口ー年目の四月の輝き、紛うことなく大器と思わせたのだが、あっという間にその佇まいはなくなった。再現性とか、そういう範疇では語れない気がする。いったいこの現象、どう説明すればいいのか。

 炭谷も梅野もいい捕手であることは判っている。炭谷はWBC代表経験者で、梅野は金メダリストである。がっ、それでもわれわれが描いた最終形とはあまりにかけ離れている。

 北條や堂林たちは、アマ時代のホームランバッターにありがちな、 木のバットに対応できず、数年はファームで修業し、一軍でそこそこ頑張ったシーズンもあったが、データを取られる中で埋没していった、で説明がつく。江越もプロ入り直後に結果を出したがそこに分類されるのであろう。彼らに共通するのは、スイング自体はさしてアマ時代と変化はないので、相手バッテリーが対応を誤れば、今でもそれなりのバッティングをする点か。まあ何十試合に一度だろうけど。

 ー方周平や炭谷、梅野を眺めていると、スイング自体が変わってしまったように映る。この三人は共通して自ら折れてしまった、そうも感じる。

 結局、落ちるボールへの対応やポイントの問題なのだろうか ? プロの球を自分のポイントまで引き付けて打つのは難しいので、それを前に持ってくることでその場を凌ぐ、そうこうしているうちにスイングの質まで変わってしまった、そんな感じ。つまり、その場は凌いだ、という点では北條たちと違うが、副作用として小さくまとまってしまった。仮にそうであるのなら残念でならない。

 梅野がアウトコース低めから落ちたり曲がったりする糞ボールを相も変わらず振り回すところを見るにつけ、ポイントが前過ぎる気がして仕方ない。ただそういうバッターにはびっくり箱的な一発があるのだが、今年の梅野には、そういった気配もなかった。残念と言ったのはまさにそこである。

 相手バッテリーからしても、たとえ間違っても痛い目には合わない、 となると攻めに迷いがなくなるのでコントロールの精度は上がる。ますます梅野は打てなくなるというロジック。

 実をいえば同じ傾向が木浪にもあって、一年目のキャンプでは西郷直伝のムチのようなバットの撓りからフルスイングしていた。確かオープン戦は首位打者ではなかったか。今ではミート主体の打撃フォームにマイナーチェンジ。あれではほぼホームランは出まい。しかも三振は多いままという・・・・。守備がここまで上手くなるとは思ってもいなかったし、8月に入って殊勲打も多いが、実は脚も肩もない。冷静に見てみると、今の打撃力なら早晩小幡に切り替えたほうが、長期的にはチームにとってプラスになるであろう。

 

 というわけで、ここまで梅野を中心にうだうだと書かせていただいた。このテーマについて、恐らく結論は出まい。あえて言えば、光るものがあったのに自らそれを放棄した、そんな打者に対する歯痒さ。アマ時代の延長で、長距離打者を追い求めようとして挫折するタイプに共通するがっかりとも違う、このじれったさ。何かーつ掴めば芋づる式に良くなる可能性もあるのにもったいない、オタはそんな思いを、梅野に対して募らせるのだ。

 

 最後になるのだが、梅野は今年本当に絶望なのだろうか。われわれは今シーズン、彼の姿を見ることはできないのか。 1イニングでいい、1打席でも構わない、もう一度梅野を見たい・・・・。

 オリックスに完膚なきまでに叩きのめされ、その色を失った甲子園の大観衆を、今際の際にほんの一瞬満足させるためだけにその願いは叶えられるのかもしれない。