Till Eternity

どこよりも遅く、どこよりも曖昧に・・・・

阪神 優勝へのカウントダウン Ⅴ

 書きたいことはたくさんあるのですが、高校野球プロ野球の試合とその録画を観るだけで精一杯の日々を送っている。何故そうなるのかは、きっとご理解いただけると思う。今年、というかこの八月はとりわけ双方に熱が入る。幸せな夏である。

 本当は甲子園についてあれこれ書きたい。がっ、多過ぎて困っている。明日あたり大雨で一区切りつけそうなので、そのタイミングで一気に吐き出せるかもしれない。

 一方の阪神は優勝に向かってひた走っている。貯金の数を指折り数える足し算から、マジックをカウントダウンする引き算に、今週中にも変わるかもしれない。無論、ここから先はCSも含めてそう簡単にはいかないのであろうが、世間が阪神で一喜一憂盛り上がればそれで良い、特に関西は。

 というわけでこのお題では、猛虎優勝の鍵を握ると思われる選手について取り上げてきた。今回は梅野の予定であった。ところがである・・・・。好事魔多し。骨折で今季絶望・・・・。腸が煮えくり返っている。今まで散々っぱらヤクルトは、阪神に対して被害者意識を剝き出しにして吠えてきた。言いがかりもほどほどにしとけよ、とは思ったが今年に入ってからは大人の対応でいなした。一昨日、ハゲを早々に降ろしたのもそういった部分に気を使ったからだ。それだけに昨日の梅野の件は納得できない。

 このままでは怒りに任せ、色々と糞ヤクルトについて私が知りうる限りの内部情報を暴露したくなる。がっ、ぐっとこらえて我慢。冷静さを保つ意味で、今回はまったく別の話題にする。

 

 

 わがタイガースの宿敵である巨人軍の四番岡本が絶好調だ。八月だけで10発! これでもペースが落ちた方だというから恐れ入る。身体のキレ、精神面ともに完璧なのであろう。岡本にとって今年の夏は、彼の野球人生においてーつのピーク、特別な期間といえるのかもしれない。ぜひトラキチの皆さんにも岡本の輝きを目に焼き付けていただきたい。

 実をいうと、この岡本は一野球オタとして時折チェックを入れる対象である。なぜプロの阪神ファンである私が、わざわざそれをするのか? 理由は彼が目に見える形で、他球団の主力選手と明らかに違う部分があるからだ。

 違う部分とは一体どこなのか、答えは彼のバッターボックスにおける立ち位置である。クリーンナップを任される多くの選手は、ほぼ九割方、左右を問わず打席の同じところで構えている。捕手側の白線ギリギリ、というか後ろの脚でそれを踏むぐらいの感じ。まぁ最近のパリーグまではチェックできてないかなぁ・・・・。

 阪神ファンの方ならば、先週の対巨人の第一戦目、佐藤が空振りした後、一回転したバットが、捕手大城のマスクと右こめかみあたりを直撃したシーンを覚えているのではなかろうか。なぜあれが起こったのか、もはや説明はいらないだろう。捕手に最も近い位置に立って、手の長い佐藤が、グリップいっぱいに持ったバットを振り回せば、そういうことが起きる、ということ。

 では打者が捕手寄りに構える理由とは・・・・? この答えも簡単であろう。速球に振り遅れたくはない、そこにつきる。つまり最も投手と離れて立てば時間を稼げる、といわけ。仮にそれがコンマ数秒であっても打者にとっては助かるのだ。

 ならば巨人の岡本は、打席のどこに立っているのか? 私のこの眼で見る限りだが、ほぼホームプレートあたりである。

 なぜ彼はそこに立つのだろうか、こればっかりは本人に直接訊くしか手はない。なので想像するに、他の主力打者よりも速い球を苦にはしていない、ということになるのであろう。ただ、本当にそうであるかは、球速帯別の打撃成績を、直近のニ、三年分確認しない限り立証できない。だが、こういう言い方はできるのではないか、岡本は他の打者(Ex:佐藤や大山)よりも速球に対する割り切りができている、と。

 では割り切りとはなんだろう?

 それを垣間見れる三つの打席があった。まず先週八日の試合から振り返ってみたい。第一打席目、岡本は西純の低めの142㌔の高速フォークを振って三振する。

 

 次に第三打席、岡本は同じく西純から一点差に迫るホームランを放つのであるが、ワンストライク目とツーストライク目、ともにアウトコースのストレートには見向きもしなかった。つまり岡本が変化球に張っていることは誰の目にも明らか。それも第一打席で空振りに仕留められたフォークを待っている、そこまで判っていた方も恐らく多かったのではないか。となると問題はここから。ウイニングショットをどうするか、である。

 待っているフォークをわざわざ投げるバカはしないだろ、いやいや、打者というものは、基本ツーストライクを取られた後はストレート待ちの変化球対応が常識。まして同じシチュエーションでの一打席目にはフォークで抑え込めた。ボールになるフォークなら大丈夫・・・・。恐らく梅野は頭の中で幾通りもの状況を思い浮かべたことであろう。

 でっ、結局バッテリーの選択はフォーク。

 

 そのフォークが甘く入り、レフト最上段バルコニーに届くホームランを打たれた。

 もし、岡本が普通のクリーンナップを任される打者(佐藤、大山 くどい!)のように、ツーストライクを取られた後は基本ストレート待ちの変化球対応ならば、甘い変化球であっても打ち取れたかもしれない。がっ、岡本の場合は違う。ここも想像だが、追い込まれてもなお、恐らくは変化球待ちのストレート対応なのだと思う。つまり、並みの主軸打者(佐藤、大山 もうええか)とは逆の待ち方をするということだ。

 それが証拠というわけではないのだが、翌九日の二戦目、第四打席、ツーストライクからの九球目、アウトコース低めの桐敷のストレートにまったく反応できずにごめんなさいとばかりに打席を後にした。



 言うまでもなくストレート待ちの変化球対応であれば、ジャストミートは無理にしても力ットはできたかもしれない。しかし、である。岡本の打席の立ち位置の場合、ストレートに反応が遅れると、今回のように見送りや、いわゆる着払いも仕方がない。それでも変化球を待つという。となれば岡本の頭の中では、恐らくそれらのリスクも含めて整理できているのではないか。つまり二兎は追わない。あくまで狙った変化球を捉えて見せる。ストレートならそれまでよってこと。割り切りとはそこなのである。

 ただし、外の低目以外のコースで140㌔後半までであれば、力ットやファールも含めて対応できるという裏打ちもあるのだろう。だからこそ無謀とも思える、追い込まれてなお変化球待ちができるのではないか。

 われわれ一般人の目線でいえば、変化球待ちのストレート対応をするのなら、保険を掛ける意味でも打席の一番奥で構えると思う。それをしない岡本の姿勢から、自ら退路を断つ心意気を感じる。今年は文句なしの本塁打王を村上から奪還するだろう。

 更に申し上げると、佐藤のような打席の後ろギリギリで待つのと、岡本の位置で待つのでは変化球の変化の幅に違いが出る。たとえば西純が打たれたフォーク、少なくとも3cmは落差の幅が違うはず。たかだか3cm といえども、ミリ単位で結果が違う世界。恐らくそこから逆算して、岡本はあの位置に立っているともいえる。

 以前、徹頭徹尾変化球待ちの打者について書いたことがある。

tilleternity.hatenablog.jp

 ここではヤクルトのが塩見怪しい、そう書いた。今回取り上げた岡本は言うまでもなく名門チームの看板選手、WBCであの大谷、吉田の後を打つ日本を代表する打者である。脇役がそれをするのとは意味が違う。これは一つの挑戦と言えるかもしれない?

 実は私なりにであるが、この岡本の試みに対する答えを持っている。それは上の記事でもふれた村田修一だ。

 村田はたとえ藤川球児を相手にしてさえ、打席では最後まで変化球待ちの速球対応であると私は睨んでいた。そういう打者であった。そして岡本は、その村田の姿勢を継承したのではないか? 何よりも岡本の背番号25は、自身が望み村田のそれを受け継いだ、という話を聞いたこともある。仮にそうであるなら、背番号25の二代に渡る挑戦と言えるのかもしれない。

 

 実は巨人にはもう一人、スラッガーながらホームプレートの位置で構える打者がいる。中田翔だ。中田は私が気付いたらそうであったので、ハム時代からであろう。つまり、パリーグ育ち故というのが私の判断である。指名打者がある分、主軸といえども担う責任は数字上、セリーグのそれらの打者よりも一割は軽くなる。案外これは楽なのだ。ファンはたとえ着払いやごめんなさいの見送り三振が多くても、そこへの追及は甘くなる。その免罪符に支えられ、中田の打席での立ち位置は許されたのかもしれない。また西武の中村剛のポイントが、平均的な打者よりボール五つ分ぐらい前にあるように感じるのだがそれも同様か。一発はあるが、糞ボールを振っての三振も多い。恐らくそれは治らないままだが、もう誰も責めない。パリーグあるあるの一つかもしれない。

 岡本はセリーグの、それも伝統の巨人軍第89代目の四番である。球界で最もプレッシャーのかかる打者と言える。あの清原がクスリに溺れたのはそこだそうだ。さてさて岡本がどこまで変化球待ちのストレート対応で通せるのか。伝統の一戦を観戦するにあたっての個人的なルーチンの一つとして、岡本の打席での立ち位置をチェックし続けたい。

 次にわが阪神が巨人と対戦するのは再来週の週末であったか。どのような攻めで巨人の四番に挑むのか興味は尽きない。私の見立てでは決め球はアウトコースの低めへの渾身のストレートでOK、果たしてそれができるのであろうか。阪神のマジック点灯同様楽しみである。

 最後になるが私の秘蔵っ子である井上が、オフには岡本と一緒にトレーニングをしているという。打席の位置や変化球待ちについて学んだのだろうか・・・・? 今年の井上を観る限り、どうもそんな気配はない。残念至極である。