Till Eternity

どこよりも遅く、どこよりも曖昧に・・・・

当世大学野球リクルート事情

 世間の話題はWBCというか、大谷一色って感じですね。やることなすこと、それらすべてがほぼ無条件で好意的に受け止められ赦されます。たとえばペッパーミルパフォーマンス、居酒屋やファミレスなどのテーブル上にそれは据え置かれていますから、時節柄、酔客やYoutuberの格好の餌食になりそうなものですが、誰もそんなこと言いません。もしそこに触れれば途端、野暮なこと言うなよ、そう煙たがられそうです。

 大谷という鏡に映り込んだものは、それが例え胡散臭いものであっても絢爛な景色に変わるのでしょう。まさに万華鏡の如し。行くところまで行ってくれ大谷。今の君にリミッターは存在しない!

 列島は野球一色で、オタとしては満足ですが、好事魔多し。怪我人も多く出そうですね。

 それと、準々決勝であっさり負けそうな気もするのですよね・・・・。

 縁起でもないので、WBCについてここで扱うのはやめときますわ。野球で盛り上がって頂ければそれで良いです、ええ。

<本日の空が好き>

森下と伊藤の共通点とは?

 先月、森下ウォッチャーを卒業するとして、これからは伊藤櫂人を見守る、そう宣言しました。今更ながらに思うのですが、実は森下と伊藤には少なからぬ共通点があります。東西の違いはあれ全国制覇常連校出身で、同じ右打者。そして中央大に在籍していた、もしくは在籍することになるという点も同じ。高校時代の森下はプ口志望届を出していれば中位~下位での指名があると噂されたスラッガー。伊藤は言うまでもなく昨年のU18代表と、実力は二人ともが折り紙付き。

 どうでもいい話ですが私のウォッチの対象である、というのも共通点かな、ええ。でっ、更に突っ込んで言えば、もうーつ共通点があるのです。それは何か? 実は二人とも東京六大学落ちであるという点なのです。

 ここで二人の名誉のために申し上げておきますが、野球の実力や学力に問題があったわけではありません。今日日、スポーツ推薦で厳密に学力試験があるところは慶應だけ。早稲田ですら、面接の場で大隈重信さえ言えれば合格可能であることは、稲垣がバラしています。

 偏差値の高めの伝統校と言えども、面接と小論文だけで、少しばかり勉強ではなく、それに向けた対策を講じていれば合格できる。

 ではなぜニ人は落ちたのか・・・・?

 ここから先は確たるソースがあるわけではなく、人づてに聞いた話をまとめるだけなので、いつもの妄想と言われても仕方ありません。なので興味のある方だけ読んでくださいな。

森下翔太の場合

 森下が夏の県予選敗退後、プロ入りするか迷った、というのは以前書きました。結局進学に舵を切るのですが、系列の東海大には早々に断りをいれていたようです。そして夏の終わりに中学時代のチームメイトに誘われたこともあって、法政大のセレクションを受験している。そしてあろうことかそこで撥ねられるという憂き目に遭ったようなのです。

 俄かに信じられないのですが、その真相はというと、どうも同じ神奈川県の某有力校の監督から法大に連絡があり、”東海大相模の選手を合格させるのなら、今後、うちから選手は送らないからな!”、みたいな脅しを入れられたそうで・・・・。

 普通考えれば、法大ともあろう伝統校が、それを受け入れるとは思えません。法大はその草創期から日本プロ野球を支え続けた名門中の名門。今なお高校球児の憧れの対象でもある、たぶん。数多の大物卒業生も全国に散らばっている。甲子園の常連校の一つや二つ失ったところでどうにでもなる・・・・。ところが最近そうでもないらしい。

 というのはこれ、

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 現在法大では山本浩ニや山中氏、稲葉などが束ねる主流派と、学長が率いる非主流派との間で血みどろの抗争が繰り広げられているのだという。今のところ非主流派が暫定的に野球部を治めることに成功しているようだ。そのため、全国津々浦々、網の目のように張り巡らされた主流派のネットワークは機能していない。開店休業状態。

 そこで非主流派は自ら有力校に挨拶回りまでしてパイプの再構築に努めている、その真っ最中。そこを横浜の前某監督が突いたようだ。つまり法大のお家事情を察知し足元を見て、先の行為に及んだのだろう。

 結局、法大はその脅しに屈し、泣く泣く森下を切った、といったところではないか。また、ほぼリクルートについては夏前には終わっていたようで、最後の一枠、二枠という段階であったとも聞く。東海大相模と法大のパイプがもともと存在していなかった点も、森下にとってマイナスに働いたようだ。

伊藤櫂人の場合

 伊藤が立教進学予定であることは雑誌「ホームラン」に秋の段階で掲載されている。ただ誤植の多いことで有名なので注意が必要ではあるが、伊藤にとって尊敬する選手は現在も立教OBの山田健太であることから、恐らくその情報に誤りはなかったと思う。

 では、なぜU18代表である伊藤のその希望は叶わなかったのか・・・・。

 背景は日程ではないか。試験日が何と国体の決勝の翌日であったのだ。そもそも夏の甲子園ベスト8敗退後の伊藤のスケジュールは超ハードであった。

 まずは高校生だし、一週間ぐらいは親元に戻ってゆっくりしたであろう。束の間の夏休みを楽しんだとも思う。9月に入ったら受験対策を頑張ろう、そんな心づもりだったのではないか。

 しかしU18に選ばれる彼の才能がそれを許さない。召集が掛かり合宿に合流。そこでそれなりに練習に明け暮れ、関東で大学生相手に練習試合や壮行試合をこなしてフロリダへ飛び、またまた練習~本番~銅メダル獲得を経て帰国。一週間の休みを挟んでそこから国体に向けて再び練習を再開、栃木に移動、試合、決勝進出で優勝、そしてその翌日が立教のアスリート入試当日。

 まさに転戦に次ぐ転戦、その果ての受験。たぶん、府の予選から甲子園での日々よりも忙しかったのではないか。そして伊藤はその中で、戦意喪失に陥ったのではなかろうか・・・・。

 実際、伊藤がSNSで受験モード突入の情報を発信したのは10月下旬。とうの昔に立教の入試は終わっている。11月上旬の発表を目前に控えて、一体何が起こったのか、そうファンをヤキモキさせたわけであるが、結局、立教の推薦入試合格者の中に伊藤の名はなかった。

 正直言えば、あの過酷なスケジュールの中で本当に受験したのかも怪しい、そんな気すらする。いくら何でも、立教とはいえU18の選手を落とすとは思えないしね。これからのリクに禍根を残すようなことは、普通したくはないだろう。

 実はその目まぐるしい日程の裏、U18の合宿中、伊藤は聖光学院の安田と意気投合し、何かとつるんでいる姿が目撃されている。

 実際、国体の決勝戦の直後がこれ、

 早くから中大志望を表明していた安田が、U18の大会を通じて伊藤に、 ”悩んでいるのなら一緒に中大で野球をやろうぜ!” そう口説いていても不思議ではない。

 結局伊藤は安田と示し合わせたように中大に進学することとなる。

 妄想はここまでとします。森下にしても伊藤にしても、真相はやぶの中。これ以上突いても何も出てきますまい。自らが選び進み行く野球道を、悔いのないよう極めてもらいましょう!

 しかしここで一つ疑問が浮かび上がる。なぜ中大は彼ら二人の受け皿足りえたのか。また他の大学では不可能だったのか・・・・?

有力アスリートを乗せる最終列車!?

 その答えであるが、どうやら中大のスポーツ推薦の日程なのではと思われる。願書の締め切りが11月上旬で、試験が12月の上旬。発表が12月中旬。このスケジュールなら、立教だけではなく、他の東京六大学(東大を除く)の推薦に諸般の事情で落ちてしまった選手のセーフティネットとなりえるだろう。

 私も不勉強であったが、中大の願書締め切りが11月まで繰り下がっていたのを今回初めて知った。定点チェックしていた十年前ごろは、確か10月の上旬だったと記憶している。試験日と合否発表は当時から今のままであるのだが・・・・。

 実は3年前、浦和学院の美又がプロ志望届を提出し、東京ドームで行われたトライアウトを受けたが指名に至らず、しれっと中大のスポーツ推薦に合格しており違和感を感じた。そもそも美又の志望届自体にも違和感はあったが、普通中大クラスの大学は、プロとの両天秤を極端に嫌がるもの。しかし現行のスケジュールであれば、 ドラフトが10月下旬で、スポーツ推薦願書締め切りがその二週間後となれば、しかも試験がその一月先ならば十分に間に合う。

 では、今後もドラフト指名洩れ選手を中大は狙うのだろうか?

 恐らくそれはないだろう。美又のケースは森士監督と清水監督という上尾高校同期の絆が成しえたものだと解釈する。つまり特例中の特例なのだ。

 しかして、中大のスポーツ推薦日程の変更は、今後良い影響を生むのではないか。野球ではないが、今年の正月の箱根駅伝で中大は2位へと躍進を遂げ、早速結果が出たようだ。きっと陸上部のリクルートの質も急激に上がったのだろう、知らんけど。

 中大が踏み出したこの流れ、倣う大学が表れるのだろうか? 恐らくあると思う。これから有力アスリートたちにとっての最終便争いがきっと始まる。たとえば先の法大あたりは、今の出願締め切りを二週間後ろにずらせば中大の背後に回り、高校球児たちの最後の駆け込み寺となれるからだ。

 しかし、そうそう後ろにずらされるのは困るという問題もある。森下の法大セレクションの際に触れたが、多くの大学が、実は春の段階で内々ではあるが一通りリクルートを終えている、という事情がある。それは佐藤輝が高校時代、夏の予選前に何校も推薦を打診し、セレクションを受けたが落ち続けたという話からも裏付けられる。

 まぁ、仁川学院がどこの大学ともパイプがなかったことも大きかったのだろう。父親が准教授をしている関西学院であってもダメであったそうだし。そしてラストチャンスと受けた近大で、田中監督が見出したというのは阪神ファンの間では有名。しかもその段階で枠は全部埋まっていたので、短期大学学部に二年後の転部を前提にねじ込んだ、というのはもはや伝説。

 大学にとってリクルートは先手必勝! なので勝負は春の甲子園まで。そこで光った選手に声を掛け、我先にと枠を埋めていく。それをしなければ他校の後れを取るだけ、というわけだ。 逆に言えばそれをするからこそ、将来を見据えた部の運営ができるのかもしれない。

 この動きが主流であるだけに、中大が願書の受け付けを11月まで引っ張ったのは、その力ウンターとして意義があったのだろう。今後、六大学という括りでではなく、早慶MARCH、 関関同立といういわゆるブランド大学が、どんな入試戦略を打ち出すのか、興味深くウォッチしていく所存である。特に各大学の推薦入試の日程に注目していきたい。

中央大学野球部に物申す!

 ここで今回話題にした中央大学野球部について綾をつけたい。去年だったか、牧を一位でプロに送り込めなかったのは中大の清水監督の責任、っていうような話を書いた(どこで書いたかもうわからん)。今でも、もし大学時代牧に三塁を守らせていればー位、それも競合もあったように思う。

 選手を育成し、チームを勝たせるのが監督の仕事であるが、選手を光らせるのも仕事のーつ。アマチュアであっても大学ならそれはありだ。選手は皆、高いハードルをクリアした選ばれし者たちばかりなのだから。

 その記事の中で、中大の野球部の野手には将来プロ入りを見込める選手が結構な数いる、そんな風にも書いた。当時森下や北村が在籍していたたからであるが、実は二人以外にもいる。ここまでまったくドラフト候補に登ってはいないようだが、4年になる髙橋の名を挙げたい。個人的に右の長距離砲として可能性を感じている。特にドラフト直前に来て評価が急激に上がるのではなかろうか。

 もし私が中大の監督なら、この髙橋には捕手をやらせ続けたと思う。しかし去年の春にマスクを被って失敗し、その轍は踏みたくないのか現在外野手に挑戦させているようだ。しかしそれでは彼は光らない。チーム内に抜けている捕手がいるのであれば話は別だが、そんな選手は見当たらないだけに残念でならない。もう少しスカウト目線を意識して欲しいのだ。

 スカウトの仕事は大きく分けると二つ。一つは人材発掘。もうーつは素人に毛の生えた程度の編成を相手にするプレゼンである。

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 もし髙橋に付加価値として捕手の可能性があることを示唆できれば、スカウトは俄然動きやすくなる。リストに上がるかもしれないし、順位にも変化が出るかもしれない。清水監督にはそのあたりまで考慮して欲しい。中大にきつく当たるようだが、それは期待の裏返しでもある。

 現在、NPBにとって最も人材の供給源となっているのは明治大である。去年で13年連続してドラフト指名選手を輩出し続け、9年の早稲田を軽く上回っている。かっては法大がそこに君臨していたが、先の内紛もあって、現在その座を明治に譲って久しい。というか、法大が凹んだ分明大が浮き上がったイメージ。敵失に恵まれたとはいえ、この13年間NPBに果たした役割は見事の一語に尽きる。恐らく今年の上田、来年の宗山の指名も確実で、まだまだ記録を伸ばしそうだ。

 その内訳はドラフト1位の7人を含めて都合19人。またバランス的にも投手9名に野手10名と良い。高校球児から明大は、その知名度と難易度、推薦枠、そして育成力などを加味し総合的なパフォーマンスといった点で一番人気となっているのだろう。

 しかし、である。野手の顔ぶれを眺めると、そこに偏りを感じてしまう。左打者7人に対して右は3人だけ。上本、岡、坂本、実に微妙である。全国の逸材たちが我こそはとその門を叩く明大であってさえも、右打者という点では出口において苦しんでいる、そう言えないか?

 ドラフトオタとして一言挟むなら、ここ三年ほどで右の強打者に対する需要が急激に騰がった。裏を返せば、それだけ希少ということなのだろう。つまり育成が困難なのだ。明大が送り出した右打者で、順位的に最も高かったのが2位の坂本であることからもそれが伺える。

 ここで再び中央大に話を戻す。実は中大は、この三年間で四人の右打者をプ口に送り込んでいる。1位、2位、3位、5位にそれぞれ一名ずつ。繰り返すが明大ですら13年間で三人。中大のこの数字をどう見れば良いのか、実に興味深い。

 すわっ、中大には右打者を育て上げるメソッドがあるに違いない、そう色めき立つつもりはない。あればもっと強くなっている。二年に一度は入れ替え戦に回るようなこともない。清水さんがこの三十年間実質的にはメインの指導者であり続けたことが、皮肉にも何よりそれがないことを物語っている。

 しかし、である。きっとこれは言える。無名の牧があそこまで成長した、その足跡は残っている、と。たとえば二年の秋までにベンチプレスで、またスクワットで何㌔上げた。飲んでいたプロテインはどこのメー力一で、バットの重さは何グラム、グリップの形状は、はたまた速い球だけではなく遅い球を引き付けて振り切る練習を重ねていた・・・・などなど。これらはすべて中大野球部において間違いなく財産だろう。

 森下は牧と出会うという僥倖に恵まれ、それを踏襲したからこそドラ1まで成長したと言えないか。伊藤にとっても、今の中大なら右打者にー番良い環境が備わっていると言える。二人とも第一志望は叶わなかったかもしれないが、運が良かった、そう思うべきだろう。

 最後に大阪桐蔭との関係性についても触れておきたい。

 以前書いたが、この春の三年からリクルートが大人しくなっている。といっても圧倒的な全国一から、普通の全国一にランクダウンしたぐらいか。なので恐らく選抜もベスト8までは間違いないだろう。

 しかし、去年のドラフト結果を受けて、前田は除くとして、恐らく今後直プロには慎重になると思われる。プロ入りが可能な選手にも、西谷さんは進学を薦めるのではなかろうか。仮にそうであれば、大学球界にとって朗報である。ぜひうちにと、早稲田や慶應でさえ舌なめずりしていることであろう。差し当たって今年の小川や来年の境などは、今の段階で壮絶な闘いが繰り広げられているに違いない。

 もし中大がその土俵に上りたければ、伊藤を育て上げることだ。それも少しでも早く。具体的に言えばこの春のリーグ戦で必ず使い、そして結果が出るようにしなければならない! そこに言を俟たない。

 まじで伊藤を頼みますよ清水さん!