Till Eternity

どこよりも遅く、どこよりも曖昧に・・・・

ドラフト雑感:佐藤(輝)編

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 ご存じのように我が阪神に、ドラフトの目玉佐藤が入るとなると、待望の和製大砲候補が三枚になるわけです。まったくもって楽しみなのですが、しっかしこの三人、見事な ”阪神顔” ですな。見れば見るほど惚れ惚れしますわ。脱力系の動物三兄弟って感じ・・・・。そしてこの三人が揃ってホームランを打ち出したら、「また真剣に甲子園にでも通うかなっ!」、そんな輩、多いんとちゃう? オッチャンはそうやで。

 野村が辞め、暗黒期を脱して以降の阪神球団の集客力には目を見張るものがあります。平日どころか、土日の試合でもアルプスが開放されなかった事が多かった頃から応援している身としては隔世の感がありますね。この屑チームのどこにそんな人気が、と思わないこともないですが、実際ファンサービスでは常に球界をリードしていると自負しています。ラッキーセブンの風船飛ばし(カープが最初に始めたけど、別にええやろ)の壮麗な景色や、勝利の後の六甲おろしの大合唱など数々の装置、ピンクユニやトラミミなど女性ファンを増やす気の利いたグッズ、”ウル虎の夏”(あんまり評判良くないけど)など老若男女問わず球場に足を運びたくなるための創意工夫には、コアな阪神ファンとして頭が下がる思いです。

 甲子園に観戦に行ったお客さまは、翌日、職場で学校で、「昨日甲子園に行って楽しかったよっ♪」 と言って回ってくれるわけですから、当然 「じゃぁ週末家族で行こかっ!」となる方も多いことでしょうよ。まさにここのところの阪神タイガースの安定した人気っぷりは、”客が客を呼ぶ” 域にまで達したと言えるでしょう。

 星野阪神爆誕以降も日本一など望むべくもなく、リーグ優勝もたったの二度、特にタイトルに毎年絡めるようなパッとした選手に恵まれたわけでもないというのに、ファンの虎に対する熱が冷めることはなく、この活況を維持できた背景には、偏に阪神ファンによるライト層への啓蒙活動があったわけで、屋台骨を支えてくれたのは選手ではなくお客様であり、まさに”お客様は神様です” この言葉を球団や選手は噛み締めるべきではないかと。そういう意味ではこの十年間における我が阪神タイガースの最大のスターとは、球児でも鳥谷でも藤浪でも大山でもなく、 ”わらし” だったかもしれませんね、ええ。ホントあの二人の人気は凄まじい! 実際に私が球場に行った時も、回りから、「今日、わらし来てるかなっ?」 と言う声を必ず耳にしましたから。

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 しっかしである。ご覧のように、もうそんな ”わらし” もお年頃。阪神の応援よりも彼氏と二人っきりの時間の方が大切やろ。だからというわけではないですが、そろそろ、阪神の選手の中から、”わらし” 以上の真のスターが現れてもええんとちゃうやろか・・・・? 大山、井上、そして佐藤よ、オッチャンはキミらに言ってるんだぞ!

  歴史を紐解くとプロ野球の黄金期は、言うまでもなく巨人軍の王、長嶋という打の二枚看板が創り上げたわけです。異論はないと思います。しかし、野球というスポーツの勝因の七割以上は投手にあると言われており、なので常に優勝を狙える常勝チームを創るには、大エースの存在が不可欠です。つまり、絶対的なエースこそがチームを支える文字通りの大黒柱であり、真のスターのはず。しっかし、プロ野球というのは興行ですから、勝利が全てではありません。お客さんに支持されてこそナンボ。となると一週間に一度しかマウンド上にはいない大エースよりも、毎日試合に出て、四度は打席に立つ野手に魅力のある選手が現れてくれれば常に球場は満員、球団経営は安泰。さらに言えば、”野球の華はホームラン” ですから、その選手がホームランバッターであれば、毎打席ファンはそれを待ち望むことができるわけで、まさに良いこと尽くし。つまりスラッガーこそが真のスターであり、そんな存在はチームに何人いても構わないのです。

 佐藤の入団が、我がタイガースの黄金時代を確固たるものにしてくれるかもしれませんね!

 <本日のしみじみ>

 来年佐藤はどこまでやる?

 まぁたぶん、そこが一番知りたいところでしょうね。せっかくこんな辺鄙なブログにまで足を運んでいただいて、散々長い前振りを読まされた上に結論まで先延ばしにされたのではたまったものじゃないでしょうから、結論を先に申し上げます。

2021年度 佐藤輝 .245 13本 45打点 ※主にファースト、および外野手

 こんなもんでしょ。新人王は無理です。甲子園をホームにして左打者が13本もホームラン打ったら見事なもんですよ。最低でも17、8本と思われている方々も多いと思うので、そこには届かないその理由を、ここから何だかんだと横道に逸れながら書いてくことにします(ここまで以上に無駄話が多く、しかも長いので、忙しい方はここで辞めたほうが良いでしょう)。

 個人的アマ選手評価手法

 私が右投げ左打ちの打者を評価するとき、必ず物差しにしている往年の名打者がいます。それは高橋由伸(元巨人)です。阪神ファンの私が言うのも何ですが、彼のバッティングフォームは、全国の右投げ左打ちの球児がお手本にすべきです、悪いことは言わんから。

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  いやぁ、実に美しい! ホンマこれ以上のバッティングフォームはない、断言する。まさにテンプレートとして相応しい、そう感じます。

 今さらの話で恐縮ですが、三年前、三人の右投げ左打ちの高卒の強打者(清宮、安田、村上)が一位指名され、仲間内で誰が三年目までに一番活躍するか賭けたのですが、私は躊躇うことなく村上の名を上げ、三年を待たずして去年全員のギブアップを取り付け勝利しました。その根拠は三人の中で一番脚が速かったというのもありますが、バッティングフォームが由伸に似ているからです。

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 特に村上の<4>は、由伸の上の段の右から三番目とほぼ相似形で、これは高校時代からそうでした。ただ、本質的に生粋の長距離打者ということでタイプが異なりますし、ステップ幅が由伸より大きくその分視座がブレるので、今のままでは三振の数も減らないし、3割は打てても首位打者を獲るような高打率は難しいとも感じます。ですが、現段階でも筒香よりも上です。彼の比較の対象は松井一択! 来年メジャーに行けば、三年後には松井のシーズン記録を塗り替えると思います。

 ここで話は佐藤に戻すのですが、彼には今後、何かとこの村上と比較されていって欲しいのですよ。すでに球界でその地位を築き終えた村上と、これからの佐藤を比較するのはどうかと思いますが、比較されなくなったらその時点で終わりです。こっちが一つ年上やしね。ただ、村上は左投手の肩口からのスライダーを引き付けて左中間に放り込めるんだよなぁ・・・・。それができるか・・・・、頑張れ、佐藤!

 では、佐藤の打撃フォームは、テンプレートである由伸、そしてライバルと言うか目標としたい村上と比較してどうなのか、となるわけですが、

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 正直、残念ながらまったく違います・・・・。

 具体的に言えば、三点違いがあります。

 一点目はテークバックの際のバットのヘッドの位置。<3>が示す通り投手に向きすぎ。ヘッドスピードを上げることにはプラスですが、バットが遠回りすることにもなる。

 二点目は許容範囲ではありますが、テークバックに入る直前、<1>のあたりまでヘッドを小刻みに揺らしているのが気になる。構え遅れを生みやすいのでどうかと。

 三点目、これも若干であるが、<3>で重心がお尻側、つまり画面の奥に乗っているように感じる。去年の夏前の代表候補合宿の際はこの傾向が顕著で、個人的に心配していました。ただ、アマ時代はそれでもあまり影響は出ないので矯正のポイントとならないケースが多い。これはプロ入り後の伸びしろを大きく左右するので要注意です。なんせ、145キロ超のストレートで容赦なくインコースをバシバシ攻めて来るわけですからね。こればっかりは治らないケースも多く、鳥谷は早稲田時代からずっとそのままですし、髙山がサッパリの原因の一つがまさにこれです(二人とももう一つ大きな欠点があるが、それはそのうち・・・)。

 入団直後の福留と小笠原にあった差とは?

 またまた横道に逸れて恐縮なのですが、私がアマの打者を観る際に、特にこの三点目を注意するようになったのは、今から二十年前、福留が入団三年経っても伸び悩み続けており、PL時代から定点チェックしていた身としては、原因が果たしてどこにあるのかと打撃フォームをそれこそ目を皿のようにして見続けたことに始まりました。その際、並行して、同じ右投げ左打ちで当時日ハムの小笠原が、プロ入り後五年間順調に伸び続け、二年連続最多安打首位打者争いにも加わり、ホームランも三十本を打つに至り、もちろん年齢で四つ、プロ入りも二年早かったとはいえ、二人の高校時代の差は天と地ほどあり(小笠原は高校時代本塁打ゼロ、一方福留は高卒時ドラ1野手最多7球団競合指名)、なのにどうしてここまで縮まり逆転したのか、その理由が知りたくて、こちらの打撃フォームもじっくり観察しました。

 でっ、その結論はというと、当時の福留の打撃フォームにはお尻というか、背中側に重心がかかる癖があったため、背中に重心が乗り移る、そのほんのコンマ何秒かのロスがバットの出を遅らせていることに気づいたのです。さらに言えば、それは癖と言うよりも、インコースが窮屈で詰まるため、そこを打とうとして、空間を作るためにわざと背中側に重心を移して振るようになったのが、結果として体に染み込み常態化したものだと感じたのです。そしてそう気づいてから色んな打者のフォームをチェックすると、多くの右投げ左打ちの打者が同じ症状を呈していることも判りました。

 福留ほどの野球エリートで身体能力が優れていても、これに陥ると二年も三年も遠回りするのかと背筋が寒くなると同時に、これをクリアできた打者は、小笠原のようにほぼ高校時代まで無印であっても迷うことなくグングン伸びるものなのかと、野球の不思議と恐ろしさを改めて感じ入ったのです。

 明大時代から天才の誉れ高かった髙山が伸び悩み沈む一方なのに対して、大学時代さして目立たなかった一つ上の糸原、一つ下の佐野が活躍出来ているのもこれですわ。しかもこれは本人が判っていても治らないシロモノなので・・・・。

 でっ、佐藤は大丈夫なのか?!

 佐藤も陥っていると思しきこの悪癖の状態がどれぐらい深刻なのかは、現時点では判りません。この秋の佐藤の打撃状態を張り付いて観ているわけではないのでねぇ。それはプロ入り後、キャンプに入って初日の打撃練習から繰り返し眺めても判らんでしょうな。所詮気持ちよく打つための練習やから。

 もし手っ取り早くそれを知る機会があるとすれば、シート打撃は2クール目からはあるでしょうから、そこで肩口あたりにデッドボールを貰えば判ると思います。その次の打席で平気で踏み込めたらすぐに治るでしょうし、あからさまに腰を引くようならヤバイ。

 右利きの選手の多くは、利き目も右なので、左打席に立つとそれは投手側を向くことになるわけです、当たり前の話。なので、投手からの情報が多い分、自分に向かって来る球に過剰に反応し、危険から遠ざかろうと咄嗟に距離を置こうとする、そういったことも考えられるかもしれませんね。ただ利き目がどちらであろうと、危険に対して反応の薄い人もいるそうなので、そういうタイプなら大丈夫かと、あくまで仮説ですけどね。

 ただ、プロ入り後、シーズン開始まではフォームをいじる必要はないと思います。必要性を自分自身が感じてこそですから。

 おさらいすると、インコースの球と距離を置こうと背中に重心を移すと、それはタイムロスとなってバットの出が遅れ、結果振り遅れ詰まることになる。この窮屈感をなんとかするためにはますます空間が必要となるので、背中側への重心の移動が大きくなって、結果ますますバットは・・・・。鳥谷は入団からずっとこの問題に直面しながらも、距離を置いて腕を伸ばして自分のスイングさえすれば、インコースであっても何とかなると思ったのか、間違ったアプローチを続け今に至ります。今年で引退でしょうか? 残念ながら、私には鳥谷から猛虎魂を一度も感じることができなかったなぁ・・・・。髙山も、判ってはいるのに、大学時代からバットの重さを軽くすることで凌いでいました。アマ時代はそれで何とかなったのですがねぇ。

 もちろん、右投げ右打ちや左投げ左打ちでも、インコースの球に腰が引けたり背中に重心が乗るケースはあります。しかし、利き目が奥にあるので、そこまで大袈裟に反応しないのと、右利きにとっての右回転、左利きにとっての左回転は順回転なので、腰の回転が重心移動のロスを上回るのかもしれません。まぁこれも仮説なので何とも言えませんが・・・・。

 メジャーでは ”右投げ左打ちでは真のスラッガーにはなれない”、という言葉があったのを思い起こします。根拠としては確か腰の回転が弱いことにあるのだと記憶しています。

 明るい話はないのか?

 ちょっと暗くなったと思うので、希望を持てる話題をいくつか。

 正直言えば、佐藤の関西大学リーグでの通算打率.288、最高でも.354というのは物足りない。ホームランの14本もリーグ新記録とはいえ、最近の大学生のスラッガーとしては出色であった三年前の慶応の岩見は21本。そして通算打率も三割弱は打っています。右と左の違いがあるので尚更本数も率も足りないなぁ・・・・。

 おいおい、明るい話ではなかったんかい、そんな突っ込みを頂きそうですが、ここからです、ええ。

 仲間内で良く言うのですが、大学リーグ補正というのがありまして、これは端的に言えば、東六出身の打者は厳し目に観る、逆に東都や、まぁ関西リーグの打者も比較的甘めに観た方が良い、というものです(そのうち具体例を挙げて検証しますね。ってそんなんばっかやね)。

 それは何故かと言うと、簡単に申し上げればストライクゾーンにあるのです。つまり、大雑把に言えば、東六の審判は厳し目の最もプロに近いストライクゾーンを採用していて、その他のリーグのストライクゾーンは非常に広い、そういうことです。これには色んな理由がございまして、まず言えることは、球場を占有できる大学リーグというのは東六だけであり、それ以外はみんな借りているので、できれば早めに終わらせなければいけない、この点にあります。ナイターになったりしたら照明代がいるしね。

 東都などはヤクルトの公式戦と被った際は大変。そういった風潮が定着しているので、この秋も酷いストライクゾーンで試合をして少し問題になっていましたな。その点東六は神宮をヤクルトに貸している立場なので、それほど気にしなくて良い。つまり腰を据えてじっくり試合ができるので、自然ストライクゾーンも比較的狭く厳しくなる。当然、地方のリーグはどこも球場を借りている上に、審判はほぼ高校野球の審判の経験者上がりなので、ストライクゾーンは広くなる傾向にある。ですから岩見との比較においては、あまり参考にならないかと。関西リーグの投手のレベルも最近は比較的高いしね。

 佐藤について、そんなに多くのサンプルを観ているわけではないのですが、審判に苦しんで早打ちになっているような気がしたのを何度か覚えています。

 また関西リーグの公式戦の球場のサイズはどれも神宮とは比較にならないほど広いので、佐藤の本塁打数14本には非常に値打ちがあるように思います。例えるとイースタンとウエスタンでホームラン数が極端に違うのですが、それと同じだと考えて下さい。

 欲を言えば、ベンチマークである二年前の立命の辰己の数字(通算打率.324、最高打率.429)に近いものが欲しかったですが、この秋はほぼホームラン新記録狙いの影響もあって打率を落としたことを考えれば、通算打率については三割近いものがあったと解釈できるように感じます。

 そして最後になりますが、最大の課題であるスイングの際のお尻への重心の移動ですが、仮に利き目が右であっても、前段で少し触れましたが、それほど危険に敏感ではなかったり、更に申し上げれば危機や恐怖を物ともしない闘争本能の持ち主であれば、きっとプロ入り後も、例えインコース攻めを喰らおうと、悪化することなく見事に克服すると思われます。

 そして、何よりも、その点佐藤の身体には、講道館杯優勝という実績を持つ柔道家である父博信氏の血が流れているわけですから、きっと大丈夫でしょう、ええそうですとも、みなさんもそう思って佐藤を応援しましょう!

 いやぁ、佐藤からビシビシ猛虎魂を感じるなーっ!

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