Till Eternity

どこよりも遅く、どこよりも曖昧に・・・・

高校野球熱風録 Ⅰ

 今年は実に穏やかに、かつ日々新鮮な気持ちで予選を過ごした。結果とした初出場五校というのもあるが、それだけではない。強豪校が序盤で敗れたため、あまり聞いたことのない高校や、懐かしい高校が予選を勝ち上がる、というケースが各地で散見されたのだ。爽やかな風を感じたこの夏であった。

 宮城では仙台城南が決勝に進出し、茨城では茨城高校が見事に常総を仕留めてみせ、果ては旧制和歌山中学 vs 旧制海草中学という、タイムマシーンがなければ観れないようなマニア垂涎のマッチアップが、定期戦ではなく県予選で実現するかと沸いた、しなかったけどさ。

 甲子園には魔物が棲んでいるらしいが、今年、彼は予選でブッ力一としても才のあるところを示してくれた。もちろんその終盤、劇的な展開の試合が続出したところをみるに、本業の方でもきっちり仕事をこなしている。こうなってくると俄然、甲子園ではどんな試合が繰り広げられるのかと期待が膨らむ。だが、ここまでで疲れ果て、本番では使い物にならないのではないかとも危倶する。それぐらい予選における魔物の働きぶりには驚かされたのだ。心より敬意を表したい。

 今年は智辯和歌山や明徳や帝京や常総など、私の忌み嫌ういわゆるヒール校が全て揃って予選で敗れた。炎天下に思いがけず風鈴の音を聴くようで癒される。49校、すべての出場校に私がいちゃもんをつけないというのは珍しい。これ以上なにも望むべくもない。ぜひ名勝負を、などと高望みするつもりもない。栄えある代表校を勝ち得た彼らには、念願の舞台である甲子園で心置きなく戦ってほしい、それだけを願う。

 

 予選で起きた最大の事件、それは大阪桐蔭の決勝戦敗退であろうか。しかしてそれとて想定内である。大阪桐蔭が今年から弱くなる、ということはニ年前に書いている。

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 だから去年、神宮大会優勝で逆に驚いたぐらいだ。

 前任の校長と西谷さんとの間には阿吽の呼吸があったが、現体制では思わしくないらしい。風の噂であるが、西谷さんへのこれまでの特別待遇は経営の合理化、透明化のもと次々に廃止されていると聞く。

 西谷さんの最大の仕事、それはスカウティングである。これと思った逸材は必ず落とす。そのためにはたとえ北海道や九州であっても日参すら辞さなかったそうだ。しかしてそれができたのは、学校を上げてのバックアップがあったから。視察名目で泊付き手当付きで自由に出張できたが、ー昨年あたりからそうはいかなくなったそうな。野球部に対する支援も、他部に毛の生えた程度まで落ちたとか。今回の準決勝、決勝のらしくない戦いぶりも、西谷さんのモチベーション低下を思えば肯ける。まあ当分はゆっくりしてもらいましょう。

 大阪桐蔭の関係者、特に教師たちは以前から野球部の選手には腫物扱いで接することを暗黙の了解として受け入れてきたが、そのお達しも解けタガが外れた。だというのにその空気を読めず、気ままな振舞いをやめようとしなかった選手に、切れたラグビー部の顧問の教諭が・・・・。

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 結果、むしろ教諭への同情論も少なくはなく、野球部は校内でも浮いているらしい。こりゃ当分あかんかも。

 まぁ、それでも二年生にはー応逸材が揃っている。果たして秋以降どうなるか、というか秋は実力が抜けている以上はやる。がっ、そこでチーム力は天井を打つとみる。別の意味で注目です。

 西谷さんと前校長の関係は、PLの井元さんと二代目教祖とのそれに準えることができる。嫌な例えかもしれないがよく似ているのだ。ただこういうのはスポーツ界には付き物。大学ラグビーでは、関東学院の春口と元学長というのもあったな。ありゃ酷かったわ・・・・。

 実は西谷さん自身が井元さんとよく似ている。井元さん同様、西谷さんの野球を見る眼にも、ある種の ”正しさ” を感じる。彼を腐らしてはならない。大阪桐蔭野球部の行く末が少し気がかりである。王朝期を迎えてから、一転しての凋落がないことを願う。

 野球とラグビーの絡みでもう一つ言えば、東海大相模の土井校長と門馬さん、というのもあった。男の妬みほど厄介なものはない。恐らく東海大相模が甲子園に戻ってくることは当面あるまい。つまり、土井校長がいる限り、大阪桐蔭どころではないのだ。

 

 東海大相模が沈むことで、神奈川の高校野球の勢力図に変化がみられた。具体的には久方ぶりにY高が準決勝まで勝ち進んだのだ。これはかっての私学八強に翳りが表れたことを物語る。特に桐蔭と桐光は、相模とは違った理由で、もう野球に力を入れていないのではないか。

 令和に入り学校経営の価値観も揺れている。東大への進学実績にも桐蔭は興味を示さなくなった。東大と甲子園という文武両面で成果を上げてみせ世間を唸らせる、そんなことよりも生徒一人一人に寄り添いたい。文科省が聞いたら泣いて喜びそうな路線変更であるが、”For the customer” や ”顧客満足度” という言葉で置き換えが可能なようで少し引く。恐らく大阪桐蔭桐蔭学園の一連の動向には気をもんでいるはず。共に系列の大学を持つが武器にはならないだけに、これからの動き、次の一手に注目だ。

 外に対してアドバルーンを上げるのではなく、経営資源は内に向かって注ぐ、この流れが今後の私立高校のトレンドになるのであろうか。今予選、強豪私立校の多くが、らしさを示せないまま予選で敗退したが、その理由の一つとして挙げてもいいのかもしれない。

 これから先、甲子園に力を入れる私立高校がどんどん減っていくのだろうか・・・・?

 実際、各地でそれと入れ替わるように公立校の躍進が目立った。神奈川のY高については先に書いたが、同じく激戦区福岡では名門東筑が強豪私立を立て続けに撃破して準優勝。大阪でもベスト16に公立が六校も残った。個人的には良いことだと思う。がっ、反面一抹の寂しさを感じないわけではない。私がヒール校に挙げる各私立強豪校が、実は甲子園を盛り上げていた、というのは紛れもない事実だからだ。高校野球のレベルを押し上げることにも、もしかしたら貢献していたかもしれない。

 この傾向、日本の野球界にとって果たして良いことなのか・・・・ ?

 その心配は無用だ。今年、慶応が神奈川を制した。早大学院早実が共に西東京で準決勝まで進んだ。全国屈指の名門校であり、難関校が、依然野球を、そして甲子園を欲している、そう確認できたといえるのではないか。恐らく彼らは、しごきやイジメ、朝練などの無駄を排除し、根性論とは正反対の、科学に基づいたスマートな野球を目指している。それなら公立校もある程度までは真似ができる。まだ勝負になる。

 まして地方のボンクラ私立にすれば、甲子園にさえ出れば、それら名だたる伝統校と同じ土俵に立ち肩を並べることができる。淀んだ学校のイメージを一新したうえに、世間に向かってそれをアピールする唯一のチャンス! こりゃお釣りがくるわい。格好良く強くなるのは無理だろうから、昭和のノリでいけるとこまで頑張る、そういうのがあっても面白いだろう。予選で健闘しただけで、結構地元では評価されるしな。というわけで、この安直な動機のもと、きっとこれからも甲子園にチャレンジする高校は後を絶たないであろう。メデタシメデタシ、である。

 

 最後に予選で起きたもうーつの事件、横浜 - 慶応、9回表の判定について少し触れておきたい。ミスジャッジかどうかは判らないが、あれはその直前のプレー、牽制で帰塁した慶応の選手に対する横浜の一塁手のタッチが伏線としてあるのではないか?

 必要以上に強く、上から抑え込むようにミットを入れている。あれで脱臼骨折し、選手生命を絶たれたり短くした選手が何人も出た。そのため危険なプレーとされている。野球は近年、選手同士がぶつかり合うようなクロスプレーを排除している。その流れからもやめておこう、というのが一種のマナー。実際、甲子園では観たことがない。それだけに、である・・・・。

 「おまえら、まだそれやるかぁ・・・・、しかもここで・・・・。今日はNHKでも放送されてんだぞ・・・・!

 ボランティアでやっている、神奈川県高野連に所属する審判員の皆様の逆鱗に触れたことは予想できる。

 またその後の緒方の併殺プレーの軽いこと軽いこと。しかも内野なのにグラサンまでしてるし。外野じゃねぇんだぞ。ここらでいっちょ懲らしめてやるか ⇒ 発動! あくまで妄想ですけどね。

 慶応と決勝を戦う以上、横浜が役割としてヒールターンを強いられることはやむをえず、であれば点差も五点以上つけて最終回を迎えなきゃね、というのはあったな。つまり、あのスコアで9回表、その時点で横浜は負けたと言えるのではないか。

 しかし、ヨタ高よ、共学になってここまで弱くなるというチームも珍しい。だいがいが強く、それも勝負強くなるんだけどね、女の子入ると。ただ共学になって、野球部はモテモテで困るぐらいなんでしょうな。偏差値的にもそれ狙いの女の子も多いでしょうし。選手は昔のようにストイックにはなれないかもしれません。まぁ、こういう風に弱っていく私立強豪もあるということ、勉強になりましたわ。

 というわけで、抽選会は明日。一応去年は優勝校を当てました、といっても大会に入ってからでしたので胸は張れません。今年は大会前に当てましょう! そして来年には抽選会前に、更には再来年には予選前に当てます! そこを目標に頑張ろう。

 乞うご期待!