Till Eternity

どこよりも遅く、どこよりも曖昧に・・・・

ドラフト雑感:無農薬な選手編

 早いもので気が付いたらもう師走、今年は新型コロナ一色の一年でしたが、野球界にあってこの影響を一番受けたのは、何んと言ってもNPBの売り上げなのですが、これは来年取り返せなくもないので、そういう意味でナチュラルに被害が深刻だったのは高校球児たちではないでしょうか。結局、公式戦はほぼなかったわけで・・・・。特に三年生の野手は気の毒の一語。大袈裟に言えば、壊滅的なダメージを受けたように思うのです。

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 投手の場合、一冬サーキットトレーニング漬けにして、合間に捕手相手に投げ込みを続けたら、春には奇跡的な成長を遂げていた、なんてシンデレラストーリーがありえます。がっ、野手はというとそうはいきません。どうしても試合に出て経験を積まない限り伸びないというか、殻を破れない部分があるのです。

 

<本日のシンデレラストーリー>

 バッティングマシーンNO.1!

 その昔(今もあるのかなぁ・・・・)、”バッティングマシーンNO.1” という表現、というか蔑称がございましてね、意味はというとその言葉通り、マシーン相手なら三冠王なのですわ。でっ、実際の投手相手になるとからっきし打てない。多分その延長で、”打撃投手NO.1” とか、”紅白戦NO.1” や ”練習試合NO.1” というのもあるのでしょう、というかあるはずです。

 つまりは公式戦なのですよ。しかもヒリヒリ度が高ければ高いほど良い、試合や場面や相手投手も。そこで打てて、初めて自信をつけて一気に伸びるのですよね。そしてこれがまたすぐに忘れるので、それを短い期間に繰り返し再現できて、やっと本物になるとも思う。じゃあ今年、そういう念入りな舞台環境があったかといえば、残念ながらそれはなかった・・・・。

 来年、高卒野手でファームのスタメンで使えるレベルに達している選手がどれだけいるのか、個人的に注目することにしています。

 井上 朋也(花咲徳栄高校 → SB D1位)

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 今年度の高校野手全般について、やっぱりコロナの影響という先入観ありきで見ているので、自然辛口になるのです。この秋のドラフトでそのNO.1の評価と称号を得た井上についてもそうなってしまうなぁ。

 正直に言えば、昨日と同じセリフを繰り返すのですが、この選手も仮に私がスカウトなら一位にはお薦めしません。三位に残っていたのなら(以下略)。

 実は彼のような打撃フォームで活躍した選手、見たことないのです・・・・。

 右投げ右打ちのテンプレが果たして誰になるのか、悩むところですが、直近なら山田や大山のそれはセンスのある子なら真似てみるべきだと思います。でっ、その物差しを当てた場合、彼の打撃フォームは特異だということに気づくはず。

 まず右半身の使い方、右脇が大きく空いていて、そのスタイルは中南米系の選手を彷彿とさせます。真剣に、親の仕事の都合か何かで海外で野球を始めたのでは、と思えるほど。あれでインコースを打てるのか・・・・。まぁ、これから学んでいくのでしょうね。監督の岩井さんのコメントからも、彼が良きにつけ悪しきにつけ規格外であることが伺えます。それとここ一番の集中力にズバ抜けたものを感じますね。ここにも中南米系のメンタルを受け継いでいると思えるほどに。

 近年、花咲徳栄の打者は肩の力を抜き脱力した柔らかい構えから、木製バットかと見紛うばかりの撓るスイングをしてくる選手が多く、高校レベルとしてはほぼ理想的ともいえるように仕上げて来るので、個人的に大いに注目していました。そのうち大物が出るに違いないとも思っていました。野村なんか一位があってもおかしくないぐらいに高評価していたので、次こそはと期待していましたが、それが今年こういう形で実現するとはね。皮肉なことに、待望のドラ1は、これまで培い脈々と受け継いできた ”Made in 花咲徳栄” の型を大きく逸脱しているという・・・・。

 つまりは先に挙げた野村や去年の韮崎、三年前の西川等、花咲徳栄の主軸に共通するもの、例えば神主打法よろしくバットを捕手の前に大きく差し出す、そんなルーティーンが彼にはまったくない。まずはバットをまるで鉄の棒のように振ります。そこから繰り出される弾丸ライナーが野手の間を抜いて行く、そんな感じ。いわゆるスラッガーにありがちな、打球にバックスピンをかけ、大きな放物線を描く、そんな飛球は今のところ彼の打撃フォームからは想像できません。 

 タラレバの話はしたくないのですが、もし選抜や春の大会やそこから続いていく夏の予選、甲子園があれば、井上のフォームはもっと変わってきたのではとも感じます。それが比較的手つかずのままでここまで来てしまったように思うのです。

 どんな球にも飛びついて打つタイプなので、プロ入り後、四球を選ぶ姿もあまり想像できないかな。そういう意味では反応系の打者だと言えるでしょう。将来図としては、上手く育って仮にホームランを30本打っても、四球も30個で終わりそう。この組み合わせのサーティ・サーティ、ぜひ実現させてください。

 SBにサードで入るということで、松田二世とかいう声もあるそうですが、まったくタイプが違います。あえて似ている選手を探せば、右半身が異様に強いところは新庄かな。古いところまで遡ると若いころの衣笠というのもありかと。ただ一点、上の画像では判り難いかもしれませんが、両手の間隔を少し空けて持つグリップは松田と同じです。

 令和のこの時代に、コロナの影響もあったからですが、甲子園を制覇した強豪校からまったく珍しい天然の打者が現れたと言えるでしょう。松田の後釜とか、そういう枠には嵌めないで、身体能力が高いのですから外野に戻す方が出場機会が増え、本人のためにも良いと思います。ぜひ一年目から活躍して、私に観る眼の無さを思い知らせて欲しいです。

2021年度成績 ファームで2割、ホームラン6本

 

 元 謙太(中京高校 → オリックスD2位)

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 こんな辺鄙なブログ、しかもドラフト絡みで例の彼について散々叩いたこともあって、まさか檻ファンの方がここに立ち寄ることもないと思うのですが、今年のオリックスの上位指名は実に味わい深い。

 というのはドラフト直前に、中京の元と明石商の来田がどのように評価されるのか注目している、ってなことを書いたのですよ。

tilleternity.hatenablog.jp

 さらにそこで、山下についても二位相当と言い放ってしまうに及び、まさかこの三人がオリックス様ご指名 1-2-3 を決めてくれるだなんて・・・・。

 それでというわけではないのですが、今回は二位の元について書かせていただきます。

 まず、元においても同じセリフを繰り返すのですが、私がスカウトなら彼を二位の上の方での指名をお薦めはしないかと。三位に残っていたら(以下略)。

 この選手の打撃フォームも、先のテンプレである山田や大山とは根本的に異なります。こちらも結構な癖ありですね。回転よりは後ろから前という身体というか重心の移動で打つタイプです。ゆえに、泳ぎ気味でポイントはかなり前にあって、技術的にどうなのかと去年の段階で感じていました。しかし彼は投手との二刀流だったので、そういうことかと納得した覚えがあります。名門校の中には仮に部員が100人近くになっても、なるべく公平にすべての選手に練習の機会を与えるため、予選の直前まで投手陣の打撃練習は極力省略し、その分控えの野手に打席を与える方針の高校があるので、たぶん中京高校もそうなのだろうと勝手に判断し、彼の打撃技術が悪く言えば幼いのもきっとそのためなのだと受け流していたのです。

 因みにポイントが前というのは決して悪いばかりではありません。実際そういう打者はプロにもたくさんいるのです。西武のおかわり君がそうですし、SBの松田もそうです。二人して統一球導入後も成績が落ちなかったのはそのためと思っています。しかも前に突っ込みながらもしっかりと回転はしているので、元の打撃フォームとは根本的に違う。

 それとプロの投手はその配球で打者を泳がそうとするので、アマ時代から泳いでいてどうなのか、というのが高校や大学の特に右打者を観る際の根幹にあるのです。

 そして今年の県内の夏季大会での彼の打席を観ても、前に泳ぐ癖が直っていないので、差し出がましいようですがさすがに拙くないのかと。しかしそこでヒットやホームランを量産したので見当がつかなくなり、プロの評価が知りたくなったというわけです。ただ、この地方限定の代替大会ってどうなのでしょう。花試合の色合いが濃いい、そう思うのですよね。それぞれの準々決勝以降の組み合わせを眺めるにつけ、少し違和感を感じてもいたのです。この舞台で打って、果たして評価が上がるのかとすら思うのです。もちろん私の見立て違いってことは充分考えられるのですけどね。

 ここで少し横道に逸れますが、私が過去にこれは通用しないだろ、って思った選手で活躍された方をご紹介します。ポイントが前とか後とかは抜きにして、カープの新井なんかが代表例。大学時代から彼の打撃は神宮で何度も観ていましたし、パワーのある打者であることも理解していましたが、そこにセンスを見出すことができず、下品なフォームだなぁと切り捨ててすらいました。まぁそしたらプロ入り後タイトルは獲るは、阪神には来るわ、出ていくわ出戻るわ、MVPまで獲るわで、私の見立ては大きく間違っていたわけです。しかし、彼とよく似たフォームで一軍で活躍した選手は今に至るまで現れてはいません(弟は活躍したとはカウントしません)。新井の持つ個の身体能力が、NPBを上回った稀有な例だと解釈しています。

 元の身体能力も抜群とのことなので、素材重視の指名かと思われます。ぜひ一年目から活躍して、私に観る眼の無さを思い知らせて欲しいものです。

2021年度成績 ファームで2割2分、ホームラン3本

 

 無農薬系選手の時代到来?

 でっ、最後になりますが、やっぱり感じるのは甲子園があればこの二人ももう少し技術的に洗練されたのでは、ということ。コロナの第一波が騒がれ始め、選抜が無くなり春先に二カ月近く登校も練習もできなくなった期間がありましたが、もろにドラフト上位指名の高校生野手にその影響が出ているように感じるのです。他にも例えばSB2位の笹川のグリップも独特で、あんな握りを観たのは駒田以来四十年ぶりぐらいです。スイングに至っては駒田どころではなくペタジーニに喩えられる始末、まさに規格外!

 悪くばっかり捉えたくはないので、あえて良いように受けとめ表現するなら、身体能力の高い選手が手つかずの天然素材のまま店先の棚に並んでいる、そんな風情でしょうか。

 そもそも甲子園が無い以上、指導者も言いたくないことまであれこれガミガミと口にする必要はないわけですし、勝利に徹する意味も見い出せないので、大袈裟に言うと選手の好きなように伸び伸び、この半年間あらためて野球というものと程よい距離感で向き合った、その結果というところか。もしかしたら無農薬ってこんな感じなのではないかと。そういえば、果物なんかもストレスを感じるって研究をどこかで読んだことがあったな、テヘペロ。 

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