Till Eternity

どこよりも遅く、どこよりも曖昧に・・・・

シリーズ 目を据えて瞼に刻みたい映像 ② 南京の空は見ていた

f:id:TailEnder:20200607162258p:plain

 

 ブログ開設から一カ月が経ちました。遠路はるばるこんな僻地まで訪れてくださった皆様、本当にありがとうございます。たくさんの☆をいただき、読者登録まで、ただただ感謝でございます。少し余裕が出てきましたので、今日から順次、みなさんのブログへの巡礼の旅に出ます。よろしくお願いします。
 コメントをいただいた皆様には、まだお返しできておりませんが必ずお礼のコメントをさせていただきます。お恥ずかしい話、何分まだブログにおけるお作法や、はてなブログさんのプラットフォームを理解できておりません・・・・。少しずつ馴染んでいきたい、そう思っています。
 また、ツイッターに固定で張り付けてくれたふーちん氏、これからもよろしく。頼りにしています。

f:id:TailEnder:20200607163628p:plain

https://twitter.com/sirokurofu


 そして、個人的に大好きな絵のたくさんの画像を快く提供してくださったH. F. 氏、感謝しております。

f:id:TailEnder:20200607164020p:plain

 絵が売れたら手数料ください。

 在宅勤務や出勤抑制も徐々に緩和され、コロナ前の喧騒や慌ただしいだけの日常が帰ってくることが想定されるだけに、今後は更新の頻度や文章の量に変化が現れるかもしれませんが、内容は相変わらず適当なままなのでご安心ください。何卒、ブログ初心者故 花も恥じらう私ですが、今後とも宜しくお願い申し上げます。

 

<今回は長いな>

 

南京を歩く日本人 

 さて、 シリーズ 目を据えて瞼に刻みたい映像 の二回目はこの映像です。

www.youtube.com


 南京在住の日本人ドキュメンタリスト竹内亮氏が作成した「緊急ルポ 新規感染者ゼロの街 新型コロナ封じ込め徹底する中国・南京を歩く」。 この映像は、Yahoo! JAPANのトップページに掲載されたのを皮切りに、日本のフジテレビやテレビ朝日、TBSなど多くの地上波で特集が組まれたそうなので、きっとご覧になった方も少なくないはず。BSNHK国際報道でも結構長い尺で紹介されていました。
・外部から南京に戻った人に対する14日間の隔離
・ファーストフード店の「無接触サービス」とスマホ注文・店頭受取システム
・地下鉄改札での乗客に対する「無接触」体温測定、乗車後の車両QRコードスキャンによる乗客・乗車情報登録
・オンライン授業を録画・編集して子供たちに勉強を促す教師たち
・企業の活動再開におけるマスクや手袋、消毒液、ゴーグルなどの物資準備
 などなど、南京が新型コロナウイルスと闘い、そしていかに勝利したか、その過程とストイックなまでに政府と市民が一体となって自らに課した厳しい条件が矢継ぎ早に紹介されています。
 また、ご覧になれば南京という巨大都市が、自由な雰囲気に包まれ、まるでショーケースに入っているような街で、そこには規律を守り抜くモラルに溢れる人々がいて、彼らは総じて幸せそうであることも伝わってくると思うのです、多分。
 それは心の汚れ切った私の目を通しても同様で、時折ボカシが入るのは出始めた頃のAVを観るようでもどかしい限りですが、そのボカシから出てくる市民や、ボカシ越しに垣間見る南京の街には非の打ちどころはない、そう断言できるでしょう。
 そして当然のように紹介したメディアは口々に、そこから日本も学べ見習え、なぜそれをしないなぜできないとさぞかし盛り上がったことでしょう、知らんけど。

 少なくともBSNHK国際報道の池畑キャスターはそう仰っておられましたよ、ええ。
 でも、そうなのでしょうか・・・・?
 もし真顔でそう口にしたら、
「こんなに素敵で進んだ南京なんやから、そんなん当たり前やん!」(声:辻本清美)
 本当に聞こえてきそうで怖いです・・・・。

 南京が素敵な街かどうかは置いておくとして、中国の一つの都市であることに異論の余地はないでしょう、というかこっちの方こそ当たり前の話です。
 新型コロナは中国で発生すべくして発生しました。過去にSARS鳥インフルエンザを起こし、衛生管理上の問題が露呈していたにもかかわらず、中国政府が有効な改善策をとるのを怠ったために起きたのです。それは貧しさゆえに起こったのではありません。彼らはGDPで日本を抜き、今や世界第二位の経済大国なのです。ならばなぜ起きたのか?恐らく、そこに十分な予算を充てることをしなかったか、もしくは予算は講じたが途中で消えた、のいずれかでしょう。
 また、中国当局の初期対応にも大きな問題がありました。頑なにヒトーヒト感染の存在を認めず、また殉職した武漢の医師への仕打ちや、SARSとの類似性を指摘し行方不明になった女医の存在などから、国家として隠蔽粛清が繰り返し行われたことが判るのではないでしょうか。
 果たしてそんな国から何を学べというのか・・・・?
 まぁ、映像の最後で彼が言っているところのヒントというのはあるのかも、いろんな意味で・・・・、現在の中国の必死さのその加減を窺い知るとか。

 だけどこれだけは言わせてください、南京だけは別ってことなの・・・・?

 たとえば、先週あたりの北九州の新型コロナの状況だけを切り取られ、世界に向けて発信されたら、我々は日本人としてどうだろうか、そういうことです。
 もちろんソース自体に価値はあると思いますよ。第二波に気を付けましょう、落ち着いたとしてもその次があるみたいですよ、という警鐘として。
 ただ私の言わんとするところは、それをもって日本全体が大変な状況に陥っていると捉えられかねないような切り口で外に向かって配信しようとするのであれば、それって“変でしょ”ってことなのです。せめて、東京なり全国の状況はひとまず落ち着きましたが、というようなエクスキューズを入れるのが礼儀だと思うからです。

 国境を隔てると、たった一つの事例を示して、あたかもそれが全てだと誇示するようなケースはまま見受けられるのですよ。

www.wowkorea.jp

 韓国ではたかだかローカル紙であるところの東京新聞一紙が書いただけでこの有様・・・・。しかも主要日刊紙って、東京にも長く住んでいましたけど初めて知りましたわ。
 つまりコロナゼロを成し遂げた先進的で魅力溢れる南京の街だけを見せられて、中国が真っ先にコロナを克服したかのように語るのはどうか、ということなのです。中国には南京や武漢以外にも大きな都市がたくさんあるわけだし、そのあたりについて少しで良いから触れるべきだが、それはない。そもそも彼が伝えたいのが南京なのか中国なのかと問えば、タイトル読めよ、南京に決まってるだろ、と言われるのでしょう。確かにそう、でも、そうであれば、中国の中でも南京だけは特別であるといった描写が必要なのでは・・・・? 全体を通してとくに過不足があるようにも感じないし、それ以外を伝えようという意図も感じられません。まるで平壌の街並みを映し出して、北朝鮮は今日も平和で豊かですと言っているかのように。
 このショートフィルムに地上波キー局のほぼすべてが飛びついたというのも情けない限りですが、まぁ、紐付きだったと考えるのが妥当か。ですが、美談を外に向かって発信したくて仕方のない、追い詰められた中国にまんまと乗っかった、その代償は小さくはないと感じます。

 

Cool Japan の行く末

 それと、今回気味が悪いのは、発信者である彼が南京在住の外国人だということ。何というかあざとい限り・・・・。彼を快く受け入れてくれた南京という街に対する恩返しだとしても、あのショートフィルムは果たしてどうなのか。南京について、もっと他に伝えること、伝えなければならないことがあるように思うからです。
 翻って、日本でやってるところの、Cool Japan関係のくだらない番組、まぁ、あれは海外向けではなく国内向けの日本アゲ番組の典型ですが、あの番組のミソは、司会者がスタジオに集めた日本在住外国人の方々に、「日本って良いよねっ!」そう言わせるところにあるわけで、竹内氏の動きには、それと同じ気味の悪さうさん臭さを感じると言えばご理解いただけますでしょうか。
 中国が自らの価値観や、方向性に対する賛同者を求めている、その努力は認めます、とりあえずは。しかし我々があなたたちの価値観に与することは絶対にありません! どんな手を使って来るのかは知りませんが、それだけは断言しておきます。
 何故なら、あなたたちが欲しているのは賛同者ではなく、結局のところ子分であったり舎弟なわけで、その違いに気づかない限り、あなたたちは孤独なままです。そろそろ我々もはっきりとこちらの方針を中国に突き付けたほうがいい。まさに今がその時期、そう思っていたらまさかのこの記事・・・・。

this.kiji.is

 共同通信のとばしなのかどうかは判りようがありませんが、結構朝から気分悪いです。しばらく様子を観ましょう・・・・。

 気分が悪いので続けて愚痴りますが、先ほど挙げたこの国が推し進めているとされる、“Cool Japan”とかいう運動だか活動とやらも、ええ加減にしたらどうですか? なんでも、その活動の海外拠点がほぼ開店休業状態なのだと、どこかの雑誌ですっぱ抜かれていましたね。いつの記事かも覚えていませんが、ちょっと古いけどこれとか、

gendai.ismedia.jp

 どうせ広告代理店食い物にされてるのでしょうよ。
 そういえば、二、三年前ですか、こんな話を聞きました。本当かどうかは知らんけど。
 なんでも、どっかの国から日本について自国民に広く伝えたいので何とかなりませんか、という依頼が外務省に来たのだとか。観光立国を目指している手前、その国との相互交流などに発展できる良い話でもあり、外務省も対応しますと二言返事。じゃあどうしたかといえば、当然のように電通に丸投げ・・・・。
 電通は税金を身内で山分けすることしか考えていないので、出来上がったパイロットフィルムというのは案の定、ジャニーズのちんちくりんが浅草あたりをキーキー言いながら紹介して回るようないつものアレな内容だったそうで、それを観た彼の国の依頼者は自分のイメージするところの日本とは違うということで、首を縦に振ってはくれなかったそうです。

 しかし外務省の担当者からすれば、ここまで話を進めてしまった以上、ジャニーズの顔を潰すわけにもいかず、かといって代わりを立てたところでそうはいきません。何せあそこは、今は亡きジャニーさんという唯一無二の存在お手付き、ではなくお眼鏡に叶う男の子しかいません。つまりジャニーさんの絶対的な審美眼、何でも頬っぺに貼られた絆創膏が殊の外似合う、ちょっと不良の入った王子様、というのが彼のどストライクらしく、しかも小柄なジャニーさんのお相手が務まるとなると自ずとちんちくりんになるわけで、つまり誰を連れてきても似たようなのばっかり・・・・。

 そんな事情、異国の方に通じるわけもなく、また果たして依頼者の頭の中にあったこの国を代表するニホンジンというのが誰だったのか、渡辺謙なのか熊川哲也なのかはたまた大谷なのかは判りませんが、まぁ少なくとも違うというわけで、これでは日本のイメージがむしろ悪くなる、そこまで言われたかどうかは知りませんが、さてさてこの先どうしたものかと煮詰まっていたところに、電通の営業担当氏が笑顔で登場し、「やばかったぁー! でもご安心ください、何とかスケジュール抑えましたよ、いやぁー、キツかったーっ!」と、どや顔サムアップ・・・・。目の前で嫁(校正担当)が必死に手を横に振っているので、これ以上はやめにします。
 まぁ、その後どうなったかは知りません。そもそも作り話かもしれませんし。しかし電通の名前といい、信憑性があるように思えますね。霞が関電通様のズブズブの関係は、今まさに旬なネタですよね。

 

今こそ阪神を見習え!

 自分の国を持ち上げたい気持ちはよく判りますが、“Cool Japan”はいったんその旗を降ろしたほうが良いのでは? 一言で言って見苦しい。税金の無駄づかいでもあるし。
 私はスポーツビジネスに非常に興味があるのですが、観客を球場なり競技場に足を運ばせるにはどうすればいいか、それはプロスポーツ界共通の最大の課題です。アイコンになる選手を作ること、そしてチームを強くし勝利を重ねその光景を見てもらうこと、しかしどっちもその再現性は簡単ではない、じゃあ最良の策は何か? それは客が客を呼ぶようになることだそうです。球場に行った客が翌日、職場で、学校で、昨日楽しかったよ盛り上がったよと、そう言って回って広めてくれるようになること、それが一番なのだとか。つまり、スター選手でもなく勝利でもなく、客に客を連れてきてもらうのが一番ってことなのだそうです。
 お客さんに来て良かった、そう思ってもらう、それならマニュアルも作れるだろうし、選手だけではなく社員だって取り組めます。まぁ、手前味噌になりますが、なんでずっと優勝しない我が阪神タイガースが人気球団であり続けるのか、またラグビーワールドカップが何故あんなに盛り上がったのか、にヒントはある。そこには一体感を醸成する工夫やおもてなしの精神が溢れているからだと私は感じるのです。

f:id:TailEnder:20200607173744p:plain

 日本の評判を上げたかったら、まずは自分が出会った、または身近にいる外国人の方を大切にしましょう。彼らが自分の国に戻った際、きっと日本のことを褒めてくれるでしょう。万が一にも手の込んだショートフィルムを作ってくれるようなことはないですが、そんなことよりも、彼らが自分の親や兄弟、友人に、日本についてありのままを伝えてくれることこそが一番だと思います。

  

南京の紫の雲は何を語るのか?

  南京の話に戻ります。

 彼があのショートフィルムを通じて何を伝えたかったか、今のところ私には判りません。恐らく伝えられたそのほとんどは事実なのでしょう。また外国人である彼が、南京の街を愛していることにも嘘はないと思います。彼の後に政府が隠れているかどうかは判りません。ただボカシの入った映像からは、誰かの検閲の痕跡が伺えることに議論の余地はないでしょう。
 我々はこれからも時々、彼がものしたショートフィルムを通じて南京について知ることになり、さらにそのうち、第二、第三の彼を我々は眼にすることになるとも思います。オールドメディアはもろ手を挙げてそんな彼らを受け入れる。もうそれについても織り込んでいるので敢えて黙ります。肝心なのは我々がそれをどのように捉え、そこから何を感じるのかということ。あのピカピカの自由な空間の向こうにあるものが何なのか、あの映像の向こうにパラレルに蠢く何かを、その手触りを、我々は何となくでいいから感じとる必要があるのです。


 最後になりますが、映像の中の南京の空はいつも曇っていました。何日かけて撮ったのかは判らないので、たまたま巡り合わせで曇り空が続いただけなのかもしれないし、もしかすると相変わらず大気汚染が収まってはいないのかもしれません。

 どんよりとした紫色の不気味な厚い雲、南京の空だけは、その下で起こっているすべてについて恐らくお見通しなのだろう、そう思えるのです。