

乾いた音が球場に響き渡り、白球は満員のレフトスタンドに吸い込まれた。

陛下は身を乗り出されて打球の行方を追い、あの試合の実現に奔走した男たちはみな、目の前で起きた劇的な幕切れに信じられないと立ち尽くした。

あの日、あの瞬間、野球は国技となった。

桜に始まり木枯らしで終わる。
自然と共生してきたこの国の人々のDNAに刻まれたリズムともシンクロし、プロ野球は娯楽として日常に浸透していった。
一投一打に一喜一憂するわれわれの生活は、あの日始まったのだ。

世は令和、オリンピックも万博も、あの時代の熱を再現することは叶わなかった。
いま一度、この国の人々の心にを火を灯すために物語は動き始める。

自分の身体が甦ったことに驚いていた・・・・。
しかも若い頃の自分の動きが、身体の隅々に至るまで。
力、撓り、柔らかさ、そして身体を貫くような一本の幹。筋肉の一つ一つが踊るように、この瞬間にも重なり合っていく。何かが自分に憑いている感覚。”宿る” という言葉の意味を初めて知った気がして、それを噛み締めていた。
生き帰ったことに、まずは驚くべきではなかったか?
しょせん自分は野球しかできない男だ、村山はあらためてそう悟るのであった。

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