Till Eternity

どこよりも遅く、どこよりも曖昧に・・・・

『球界転生』#1

 

 自分の身体が甦ったことに驚いていた・・・・。

 

 まさか再び生を享けたことより、若い頃の自分の動きが戻っていることに。しかもそれは身体の隅々に至るまで。

 力、撓り、柔らかさ、そして身体を貫くような一本の幹。早くマウンドに立ちたいと気が早る。筋肉の一つ一つが踊るように、この瞬間にも重なり合っていく。何かが自分に憑いてきている感覚。”宿る” という言葉の意味を初めて知った気がして、それを噛み締めていた。

 スポーツ選手の性で片づけられるものなのか?

 予期せぬこの驚きを巡る順序を、再びチームメイトとなる僚友たちに片っ端から訊ねてみたい気もしたがやめることにしよう。顔を合わせるなり「おまえとまた生きて逢えるとは」 そう言われそうな気がして。

 それが嫌というわけではない。だがそんなことで変な線引きをしてしまう自分がいるのだ。そこは生き返っても同じであった。

 変な線引き、それは若い頃からそうであった。あいつはこっちで、こいつはあっち。味方であろうともそんな風な色分けをする癖が、どうして染み付いてしまったのか。結局つまるところ二度の監督はそれで失敗している。入った球団を少し恨みたくもなったが、きっと幼い頃より自らが内々に育ててきたものなのだろう。

 闘争本能の一種だと、今はそう解釈している。つまりはシロかクロか、それしかない。勝者と敗者しか存在しえない。プロの厳しさと片付けて、あまつさえ勝負師などと言われ良い気になっていた。

 ただ今回ばかりは変な線引きで、チームワークを乱すわけにはいかない。甦ってから初めて武者震いしているのに気が付き目を閉じた。

 仲間はたった十八人だ。

 村山は改めてそう決意した。

 

  感想、意見、ツッコミなどがございましたら、X(旧Twitter@HakudouMeifu までお願いいたします!

 なお、当サイト内において、『球界転生』 だけは、文章の転載をご遠慮ください。既に転載している場合は直ちに削除してください。他は好きにしていいです。

 ご協力ありがとうございます。