早いものでもう季節は夏、年取るはずですわ。はっきり言ってその流れに付いて行けていません。未だに暇があればセンバツの試合の再確認をしていたり、プロ野球の新人選手のチェックのために、4月の試合を二軍戦を含めて眺めたりしているのですから。だから、えっ、もう夏?交流戦??しかも最終節??? みたいな感じです、情けない、もっとサクサク動けんもんかね。
今回はアマチュア野球の定点チェックということで、この春に気になった選手を紹介したいと思っています、すっかり旬は逸してしまいましたが。でっ、その前に、改めて私のスタンスを記しておきます。少し長くなるけどごめんなさい。
三十年ぐらい前ですが、当時の私は真剣にスカウト気取りでアマチュア野球を観ていました。阪神も暗黒時代でしたし、俺の方が観る眼あるで、みたいな。
でも最近はどこのスカウトも良くなった。プロ契約する方も出てきたりアマ野球から転身、参入される方も増えたりと、一頃のコーチになれない元選手が嫌々やってる、という風情もなくなって、漫画やドラマ化されたりで世間の注目も浴びるので、この業界にも活気が出てきました。
ドラフトの特集を組めば「週べ」の売り上げは劇的に上がるのだというし、ネットスカウトたちもワラワラと現れ元気にしている。なのでそこから刺激を受けるというわけではないのでしょうが、スカウトの方からやらされている感は一掃されたように感じます。
つまりスカウトはみなさん頑張っている。片手間で眺めている私なんぞとは比較になりません、ええ。おだてるわけではありませんが、やっぱプロのスカウトって凄いわ、改めてそんな風に感じ入る今日この頃です。
というわけでもうスカウト気取りは卒業しました。今はさしずめ大学のセレクターにでもなったつもりでアマ野球を観ています。特に高校野球を観る際は、プロ注の目玉選手ではなく四年後が楽しみだ、そう感じる選手を探しています。では大学野球をどう見るかといえば、高校時代にそんな風に評価した選手がどうなっているのかを後追いしてチェックをするというわけです。
それでは前振りが長くなりましたが、そんな私が ”これは” と思った選手を紹介したいと思います。
田中 陽翔(健大高崎)181cm 83kg
優勝チームの二番打者、それもショートということでここを訪れるような方はみなさんご存じではないかと。ただ評価は思いの他高くはありませんでした。
どれにも名前は上がっていませんね。
またU18候補のメンバーからも外れています。
まぁタイムリーエラーをしてましたし、甲子園でヒットを量産したわけではなかったので、この評価は妥当かもしれませんね。ただ私はこの選手、四年後には必ずやると見ます。まず身体にバネを感じるし、走る姿も良い。スイングも癖がなく鍛えればもっと速く鋭くなると思う。どこの大学へ進むのか現時点では知りませんが、追っかけたくなる選手ですね。田中陽翔君のことを、どうかみなさん覚えておいてくださいね♪
ニキータや箱崎、正林などプロから既に追いかけられている逸材たちは当然スルーとなるわけですが、他にセンバツで気になるような野手は見つけられていません。もしかすると低反発バットへの先入観が抜けきれず、本来甘くすべきところが逆に辛くなったのかもしれませんね。
冒頭でセンバツの試合をまだ見ていると書きましたが、しばらくその作業は継続したいと思います。
センバツに出れなかった野手では、二松学舎の片井、富山商の福田に注目しています。片井はU18候補合宿招集を辞退。福田は怪我もありましたが、夏にはしっかりとした姿を観せてくれることでしょう。たぶん二人ともプロ志望は出さないと思うので、現在地の確認に力を入れる所存です。
投手も四年後を見据えた場合、この選手という素材型はほとんどいなかったですね。まぁこちらも打者同様、というかそれ以上に今朝丸を筆頭に既にメディアもネットも十分に騒いている。そういった投手以外となるとなかなかいないというわけです。
唯一秋の段階で幻の投手と言われた宇治山田の中村を、甲子園のマウンドで観れたのは収穫でしたが、現段階では四年後どうこういうレベルには残念ながら達していませんでした。
そんななか平嶋と境、大阪桐蔭のこの二人は素材は間違いないので、あらゆる方面から注目を浴びていると感じます。大阪桐蔭は二年前のドラフトでいろいろとあり、即プロには慎重になっているというのが定説。因みに境は現時点でも中位ぐらいの位置づけ。しかし本人は投手にも未練があると見ています。まだ身体がまったくできていないし、同郷で同じタイプの根尾の苦戦ぶりも目の当たりにもしている。そういった諸々を勘案すると進学が妥当ではないか。
平嶋も勝ち続けるどころか勝てる投手にも程遠く、現在は鑑賞型といった感じ。こちらも進学だと思われます。既に二人を巡っては、早慶などによって熱い闘いが繰り広げられているのではないでしょうか。もし進学ならばどこへ進もうと、四年間しっかりと見届けなければならない逸材ですね。
大学野球も春のリーグが終わりました。三年前に気になる投手として挙げていた静岡の高須が一気に明治のエースとして花開いたようです。ただこの投手も三年前の段階で誰もが注目していましたから、特に私がえらそうにここで取り上げるまでもないでしょう。明治は高校球児たちの一番人気なだけに、他にもドラフト上位で指名されそうな素材型の投手が何人もいるようです。どこまで連続ドラフト指名記録が伸びるのか楽しみですね。
一方打者は、投手のように高校時代のスペック通りにはいかない部分もありますが、逆に意外な選手の急成長もある。それだけにこっちを観る方が私は好きですね。
以前、これからは中大の伊藤櫂人をウオッチすると宣言しました。
当然、それを続けていますが、正直思ったような成長曲線を描けてはいない。この春はベスト9にこそ選ばれましたが、それでも現在の彼の姿に納得感はない。何よりも打席での構えが高三の春の段階に戻っている。ただそこはある程度織り込んでいました。
上の記事の中でもこう書いています。
” 腰を落として最初から軸に体重を移しておけ ”、そんな指導は寄せては返す波のように定期的にやってくる。
どうしても前に出されるので、あらかじめ軸足の膝を折って、重心を移しておけということなのでしょう。
相手バッテリーは伊藤がプルヒッターであることは見抜いており、外一辺倒の攻めしかしてはきません。そこは判っているけど、じゃあ外の球まで引っ張り込めるスイングスピードや踏み込みが今の伊藤にはあるかといえばそれはない。なのでチームバッティングを意識して、セカンドの頭を狙うような姿が目立つ。思ったような成長曲線を描けていないというのはその由です。
このまま小さくまとまってしまうことを危倶する反面、致し方ない部分も理解します。なのでここでは技術的に気になる部分だけ書いておきます。
先ほど外の球をセカンドの頭と書きましたがその際、軸である右脚をズラす姿が多々見受けられた。ほぼ癖になり始めているようで、その一コマが邪魔になって甘く入って来たストレートに遅れて差し込まれたり、ミスショットする場面が目立ちます。右脚をズラすズラさないは本人の判断なので何とも言えませんが、将来プロでそこそこの打者になると見込んでいるだけにやめてもらいたいですね。
ここまで伊藤は三本ホームランを打っていますが、二本目は現西武の武内からセンター左へ打ったもの。彼は今、プロでほぼ五十イニングを投げて、被本塁打はわずかに1。早々に五月の月間MVPにも輝いた。いかに長打することが難しい投手であるのかはご理解いただけるかと。更には青学の次期エース候補の中西からスライダーをレフトに叩き込んだ。伊藤の才能に疑いはないと思います。それだけに軸足をズラす癖がもったいないな・・・・。
できればすり足はやめて小さくても良いので左脚を上げてみてはどうか。その際、爪先や踵でタメを作る感覚を身につけて欲しいのだが。左爪先と踵の動きは左膝と連動しているし、左膝は左腰、左肩と連動している。つまり前の壁をしっかりと下から作れることになる。それができればセカンドの頭ではなく、逆方向へ引っ張ることも夢ではない。
右打者は左肩から投手に向かっていくイメージで踏み込むが、それを左踵から行く感覚に変える。これができたら軸に十分体重が乗るので、自然と右脚をズラす癖もなくなっているだろう。またこのフォームを身に着ければプロでもやれる、しかも長く。
これからも伊藤を追い続けたいと思います。
次に三年前のドラフト直後に一推しした高校生野手が同じく中大へ進んだ松嶋。
甲子園で観ていて、この子やるよ、そう咳いた際に周りから一斉に浴びた冷たい視線が忘れられない。
強豪浦和学院の三番打者とはいえ、守備位置は一塁でしかもガリガリ。供給過多の右投げ左打ちでもある。しかも金属バットを一握り余して構える単打専門のスタイルの彼を、評価しようという殊勝な方はネットスカウトを含めても皆無であった。
あれから二年半、この春一時期東都の首位打者に躍り出るほど伸びた。最後の二試合がノーヒットで大漁は逃したものの、三割をキープし満票でベストナインに選ばれてもいる。伊藤と松嶋の進学先が一緒でまとめてチェックできることもあって、その分じっくりと観たが、こちらは良い感じで仕上がりつつある。
松嶋は右腰を開いて構える、いわゆる両眼でボールを追うタイプ。この手の打者はもともと割りは甘い、つまりテイクバックが浅い。テイクバックを深くすると視座が見切れて、両眼でボールを追いきれなくなるから。なのでフォームは今のままでいい。割りが浅くなるのは織り込んで、いかにスイングスピードを上げるかが次のステップへ繋がるかの分かれ目となるだろう。バキバキになるまで背筋を鍛え上げて欲しい。まぁ松嶋自身、トレーニングに対する意識は高いようだし。
また、もし880g以上のバットを振っているのなら、思い切って850gぐらいまで落としても良いだろう。ここで細かくは書かないが、
運動エネルギー = 1/2 × 質量 × 速度の二乗
つまり10gや20gバットを軽くしたところで今のスタイルを続けるなら問題はない。あくまでバットを短く持ってシャープに振り切ることに徹する。
バリーボンズは実質900g以下のバットを一握り余して持ったからこそ、本塁打をあれほど量産できた。以降MLBの主流は、軽いバットでどこまでスイングスピードを上げられるかである。バットは折れまくるかもしれないがやる価値はある。牧や森下におねだりして良いバットを揃えてもらえ。OBなのだからそれぐらい支援してやって欲しいものである。牧は二億以上、森下にしても公表の年俸の二倍は貰っているはずなのだから。
松嶋は最終盤、内野ゴロとポップフライを量産してしまいほぼ手中に収めていた首位打者を逃がした。今頃さぞかし落ち込んでいるのであろう。青学のバッテリーに上手く前に出されたというよりも、優勝や首位打者のプレッシャーに負けた。また初めてのフル出場であっただけにガス欠のきらいもあった。
率よりもスイングスピードを意識して、端から見ても驚かれるぐらいまでそれを速くするべき。本来勝負強いタイプなのだから、この春の経験を秋以降に活かして欲しい。
でっ、最後になるのだが、去年最も注目していた高校生野手というのは北海の熊谷であったが、結局彼も中大に進学した。森下以降そうであるのだが、どうも中大のリクルーターには私とよく似たタイプの方がいるように思えてならない。
好みの問題もあるのだが、こうも立て続けに被ってくるとそんな気がして仕方がない。ちろん私の独り相撲かもしれないのであるが。こちらとしては観る試合数が減るので助かっている。
中大のリクルーターやコーチたちは、無名の牧を見出し育てたことで一躍名を挙げた。もし私がその立場であったとして、果たしてセレクションに参加した牧に何かを感じることができたのであろうか・・・・? 正直自信はない。
ただ牧を育てたのは美馬コーチかといえば果たしてどうなのだろう。私が聞き及んだ限りだが、現在保険の営業マンとして活躍しているという元ホンダの吉田さんの教えを忠実に守った結果が、現在の牧の姿を形作ったと睨んでいる。
実は大学時代の吉田にはまったくのノーマークであったが、都市対抗の予選を眺めていてあの年一番驚かされた打者が彼であった。当時の私の評価は下位で指名の価値あり。というかプロで絶対に観てみたい、そう思わせる選手だった。
仮におまえが贔屓チームのスカウトなら指名を薦めたのかといえば微妙だが、例えば今の西武や中日ならば、六番あたりで首位打者争いにも絡めるぐらいにはなったはず。守備や肩は平均以下だが、佐野がDeNAであれだけやれているのだから。優勝を争えるチームでは難しいが下位のチームなら爪痕を残せると。
結局解禁の年に吉田は指名漏れで、そしてそこですっぱり引退した。正直今でも残念に思う。
上の伊藤についての部分で、前脚の踵で壁を作る云々と書いた。まさに吉田のバッティングフォームはそれができている。彼の打撃フォームを記念に貼っておきます。
右投げ左打ちのお手本のようなフォームである。打撃フォームフェチの私にしたところで95点は出せる。久しぶりに眺めてみたが、ヨダレが出んばかりの逸品。牧が教えを乞うたのも領ける話である。右打者の伊藤にとっても参考になると思う。
美馬コーチも優秀であるという前提ではあるが、中大は早急にこの吉田を打撃コーチとして招くべきではないか。もちろん本人が望めばの話であるが。
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