今回もあえてWBCについて書かせていただく。旬を逸した感はあるが、そこは当極北のブログ、”どこよりも遅く” をお題目に掲げている、ご容赦願いたい。むしろ世間の関心が冷めた頃合いにWBCを取り上げることで、そことは一線を画す思いもあることを記しておく。単に天邪鬼なだけかもしれませんが・・・・。
国内の盛り上がりや熱狂については想定内であっただけに、私の関心は早くからアメリ力がこの大会をどう眺めているのかに移っていった。しかしてその答えは、そう簡単に探し当てられるものではなく、大会が終わってからようやく伝わってくるものばかり、
視聴者数が69%アップなどの数字はさておき、国内のメディアは提灯記事が基本、果たして信用できるものなのか、ならばこのあたりをはどうか、
「Forbes」でもほぼ同じような感じ・・・・。そこで熱を冷ます意味でもあちらの国内主要スポーツインベントの視聴者数を見ておきたい。
USのTV視聴者数
— Spica (@CasseCo
WBC決勝 520万
NBAオールスター2022 459万
MLBオールスター2022 763万
ワールドシリーズ最終戦 1470万
NBAプレーオフ最終戦 1399万
NHLプレーオフ最終戦 460万
NFLスーパーボウル 1.13億
NFLポストシーズン平均 5030万
まぁ、要するにWBCが盛り上がったと言えども、NFLポストシーズンの1/10、ワールドシリーズのファイナルの半分も行かなかった。一定の評価はできるが、アメリカにおいてまだまだコンテンツとして認められたとは言い難い。
しかし「Forbes」でも語られているが、アメリ力の3月は大学バスケットボールが主役。いわゆる ”March Madness”。そもそも野球を真剣に観る習慣はない。それだけに割り引いて考えなければならない部分もあるとは思う。今後WBCがどう定着していくのか慎重に、そして興味深く見守りたいところである。
ただしこの度の結果を受けて、アメリ力におけるWBCの扱われ方に、少なからぬ変化があったと言えやしないか・・・・?
というのは前回、アメリ力がようやく世界一の座に就いたというのに残念ながら盛り上がりには欠けた。私なぞ、こりゃあかんと匙を投げたというのが正直なところ。つまりアメリ力様がお望み通り優勝したのに、そのシナリオでもご満足いただけなかったのですか、もうこれ以上は無理っす、そんな感じ。
ところが今回大谷に力で捻じ伏せられたというのにどうやら満更でもない御様子。わからないもんですね。
特に驚いたのはこの方の発言。
大谷嫌いで鳴らす Rich Eisen氏ですらあのエンディングにはご満悦のようですから。
今回のアメリ力におけるWBCへの関心について、もう一つ気になった切り口がある。それは直近の2月に開催されたNBAオールスターとの比較。実は視聴者数でWBC決勝が上回ったとネットで少し話題になった。そう思い返し上の数字を改めて眺めてみると、確かに超えている。
しかし、である。どうやらそれは歴代で最低の数字であったようだ、
ここで一端WBCから話を逸らすのであるが、世の東西を問わず昨今の風潮として、どうも ”花試合” は世間の関心を集められなくなったように思う。それは上の数字からも見て取れる。
わが身に振り返ってみれば、MLBのオールスターを真剣に観たのは95年のボールパーク・イン・アーリントンで野茂の雄姿を拝んだのが最後。NPBのオールスターなど三十年以上観てない。地上波でしかやらない以上、そこは譲れないところである。フレッシュオールスターは毎年かぶりつきで観ているのだが・・・・。
実際のところ視聴率も低迷しているらしく、「プ口野球のオールスターも寂れたもんだぜ!」、そう腐されることも多い。しかし私に言わせれば、その流れは既に昭和の最後には出来上がっていたようにも思う。
あれは1987年、甲子園で行われたオールスター。目玉は巨人桑田対西武清原の夢の対決。当時のメディアはこの話題で持ちっきり、舞台が甲子園というのも相まって無茶苦茶盛り上がっていた。実際清原が見事にホームランを打つわけであるが、その画像がこれ、
注目すべきは二人の対決ではなく外野のスタンド。そこかしこに空席があるのが判る。初回なので客が埋まりきっていなかった、という見方もあるかもしれないが、当日は確か土曜か日曜だったはず。真夏の甲子園で阪神巨人戦が行われたら、昔だろうと今だろうとこういうことは絶対にない。
当時私は学生で、東京からテレビでこのシーンを眺めてましたが、”高校野球の英雄再び”、”桑田 vs 清原”、”オールスター”、 この条件でもマンモス甲子園は埋まらなくなったのか、そう慄いていた。同時に ”花試合” の限界をも感じた。 パラフレーズするならば、人々は真剣勝負こそを望んでいるのだな、と。
そう思ってみると、NFLはまったくオールスターであるところのプロボウルに力を入れていない。このあたり、しっかりとファンが欲しているところを理解しているのだろう。年俸が数十億のスター達を集めたところで怪我を怖れて全力プレーを怠ったり、また寄せ集めではセットプレーの質も低くなるだけ。ガチンコとは程遠い。これでは花試合と割り切れる人しか観なくなる。
MLBもそのあたりを感じ始めたのか、オールスターのフォーマット変更を模索している。国別対抗にするとか、そういう案が出ているらしい。国を背負うとなるとプレーする選手の真剣度は高まり、観る側のテンションも自然と騰がる。そこは今回のWBCで証明されたと思う。侍たちの活躍や日本の優勝は、やもすると閉鎖的と評されるアメスポという括りから眺めてみても、新風を吹き込んだと言えるのではないか?
というわけで、ここからいつもの妄想がてら提案したいことがある。
MLBは去年からポストシーズンへの進出チームを従来の10から2チーム増やし12とした。最終的には14にまで拡大したい、そんな噂も漏れ聞こえてくる。球団数は30だから、ほぼ半分にポストシーズンのチャンスを与えようという算段だ。まぁ流れとしては判らないでもないが、ワイルドカードだらけになるこの状況、手厚すぎるというか何というか、そこまでするのかという向きもある。
ポストシーズンが真剣勝負ではないなどと、イチャモンをつけるつもりはない。しかし参加チームや試合数を増やすだけでは、その価値が目減りするのではないか? つまり必要とされるのは、スケールメリットではなく工夫だと思うのだ。ならばそのワイルドカードの1枠を、われらがNPBに割り当ててもらえないものか。つまりMLBのポストシーズンに日本シリーズの勝者が加わるというわけだ。
少なくとも日本球界が活気づくことに疑いはなく、長い目で見れば宗主国であるところのアメリカ様にも、悪い話ではないと思うのだが。