Till Eternity

どこよりも遅く、どこよりも曖昧に・・・・

日本ラグビーの憂鬱 最終回

 というわけで、新年早々一発目、嫌なシリーズでしたが今回をもって最終回にしたいと思います。さすがに栄えある新リーグがまさに明日始まろうというのに、ケチを付け続けるわけにもいかんでしょ、ってことで最後にするだけで、あまりに酷い有様が目の前で繰り広げられたら(結局は観るんじゃん)、当然手を変え品を変えて、ここでボヤき倒す所存です。

 このシリーズ、前回はかなり前になりますな・・・・、

tilleternity.hatenablog.jp

 ただこれは、オリンピックにかこつけて、7’sの惨状を嘆いただけなので、実質的にはこれか、

tilleternity.hatenablog.jp

 でっ、早速おさらいなのですが、

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 ⑤を除くと新リーグの方向性は残念ながら正反対。まぁ私の言ってることが正しいなんて、これっぽっちも思ってませんが、ちょっと日本協会をはじめ、新リーグの中の人たち、センス無さ過ぎじゃないか、ってことでずっと綾をつけてるわけですわ。

 はっきり言ってしまうと、彼らのやってることはJリーグに追随しすぎ。確かに同じフットボールを根にしているところや、代表への依存度、W杯が生命線であるところなど重なる部分は多いけど、①~③まではなんも考えずに真似てみましたとしか思えん。しかも三周遅れぐらいで、そこが一番情けない。

 まず、②についてはJリーグですら閉鎖型へ路線変更とまでは言わんが、緩やかな人気チーム限定でのプレミア化を模索し始めてます。

hochi.news

 つまり、三部構成なんて大所帯過ぎるので、昇降格は残すがJ1の上にプレミア化した新リーグを新設して敷居を高くしたうえで、改めて10~14チームでやり直そう、って案。まぁこれも取って付けた感はあるが、結局、”開放型” の限界にようやく向き合い始めたってことだと思いますよ。

 昇降格があると、どうしても目指すところが ”残留” だけになってしまいがち。そんなチームってファンからすれば魅力に欠ける。経営側も常にビクビクして長期的な視野に立ったチーム作りや投資ができない。当然大口のスポンサーもついてくれそうにない、ってことで、最上位リーグを作ろうって流れになったのでしょうが、昇降格がある以上、これもアカンと思いますわ、ええ。

 ラグビーは後からのプロ参入なんだから、こういう先駆者の苦しんでいるところをしっかりと踏まえてバスケみたいに柔軟に対応すりゃいいのにね。当面は大変でしょうが、こちらの選択の方が正しいと思うのです・・・・、

www.asahi.com

 次に③のスタジアムも含めてまるっと自治体任せの部分にも、これではビジネスにならん、とようやく考え始めたJリーグのチームが出て来ました。

ibarakinews.jp

 球団が自分の力でスタジアムを造るからこそ、「街のシンボルになる」のですよ。鹿島がなぜに自治体との縁を切ろうとし始めているのか、そのあたりをもう少ししっかりと、ラグビー新リーグの中の人たちは分析するべき。プロ野球も一部の落ちこぼれを除くと、ほぼ自前でスタジアムを運営し始めています。当然ではありますが、利益、収益を最大化するためです。

 ただ広島カープのように、完全なJリーグ方式で、一見すると大成功を収めたような球団も確かに出ています。しかし、である。ここはそもそも、”市民球団” と標榜しながら、実は ”松田家の持ち物” という二枚舌を巧みに使い分けて市民だけではなく県民を騙し続ける詐欺球団なので、そのうちバチが当たります。

 確かにスタジアム建設という途方もない初期投資は、親会社からすれば馬鹿げた、というか一種の与太話にしか思えないのでしょうが、本当に長い眼で先を見据えて商売をするのなら、そこは避けては通れないと気付くはずなのに・・・・。そもそも何百億掛かるわけではないのですから。楽天が良い例です。

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 つまり、旧態依然とした球場や競技場を改修する場合、土地も土台もあるので、それほどの投資にはならないってこと。もちろん17年前のお話なので、今なら建設費用はもっと高騰しているという向きもあるのでしょう。しかし上の記事が示す通り百億にも満たないわけ。仮に高くついたところでその半分にもならないって。ポイントは既にある資産を上手く利用すること。

 そもそも宮城県営球場はダルビッシュが ”糞球場!” と散々酷下ろした代物で、実際に出来上がるまでは、あんな見事なものが出現するとは誰も信じていなかった。

 

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 そしたらこんなに変わった! だからこそ、宮城の人々の心を揺り動かしたのではないのか・・・・? しかも改修後はそのまま宮城県に寄付という男前っぷり。オリックスがいつまでも果たさない約束を早々に叶えてみせ、晴れて楽天イーグルスは ”おらがチーム” になったと(はっきり言うが、オリックスが何度優勝してみせたところで、関西はおろか大阪の人間の心の琴線には触れることは無いぞ)。

 翻って老朽化した競技場が、いったい世間にどれだけ転がっていることか。なかには国体開催を押し付けられた果てに、図体だけデカくなってどうにも始末に負えんというのが、地方には必ずある。なぜそこに上手くつけ入ろうとしないのか? それを専用スタジアムにしてしまうと、もう国体が回ってこないやないか、などとすかさず突っ込みを入れる頭の旧い方々がお役所にはいるかもしれないが、平成の後半から、自治体は国体から逃げ回っているのが実際のところ。どれだけ国が予算紐付きで誘致を促しても、結果、真っ赤っかで終わるってことはバレている。ならば、役割を終え朽ち果てつつある競技場を、ラグビーの力で魔法を掛けて甦らせてはどうか? 重要なことなので繰り返しますよ、ポイントは既にある資産を上手く利用すること、です!

 恐らくここで④の問題が出て来るのだろう。年に数試合しか主催できないラグビーの分際で、専用スタジアムなんて有り得ない、っていう良く聞くオチ。そこで思考が止まるから、Jリーグから三週遅れているんだよ。先に上げた鹿島がその答えを用意してくれています。

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 専用スタジアムとはいえ、そこをただ公式戦の開催に限定するのは確かに勿体ない話である。まず、ラグビーとして他にもファンに観てもらいたいものがあるではないか。たとえば練習する選手の姿、それは熱心なファンであればこの目に焼き付けておきたい風景だろう。

 手前味噌になるが、我が阪神が23年前に始めた安芸のキャンプ中継、あのフォーマットは年を追うごとに定着し普及し始め、今やほとんどの球団の練習模様が、2月になればCSやBSのチャンネルで観られるようになった。阪神とSkyAの突拍子もない試みが、鉱脈だったとまでは言わないが、ファンの心を捉え、有料放送に足るコンテンツに育ったといえる。

 言うまでもなくそれを支えるのはファンの熱量と、それに応えようと身体を張って己を鍛える選手の姿の循環だろう。専用スタジアムが、ファンと選手、互いの想いを反射させる装置の役割を果たし、強くなっていくチームの姿がその光によって照らし出されるようになれば、それこそが理想の関係だと思うのだ。鹿島アントラーズが狙っているのはまさにそこだろう。

 更に言えば、秋から冬のスポーツであるラグビーの場合、専用スタジアムがあればNPBやJリーグのように春先に長期のキャンプを張る必要はない。選手はラグビーが仕事なのだから、試合に出たけりゃ日々グラウンドに通い、年中練習を繰り返せばいい。そうすりゃファンにとって専用スタジアムは、自然そこに行けば選手に会える場となるだろう。芸能界を俯瞰できる立場にはないが、AKB48が社会現象になった最大の決め手は、「会いに行けるアイドル」というコンセプトにあったのではないか。まぁ電通の操作の有無は置いておくとして、ファンとの距離感を劇的に変えたことに間違いはない。

 そしてAKB商法は、そのままそっくりラグビーにも当てはまると言えるだろう。ファンにはどんどん直接スタジアムまで会いに来てもらって、試合前後にはできないファンとの交流を存分に行うことでCS(顧客満足度)を高めれば良いではないか。もちろん商売なのだから、練習とはいえ300円なり500年なり徴収すればいい。選手やチームにしたところで、練習にファンが金を払ってまで観に来てくれると思えば力の入り方も変わって来るだろう。観衆の中で結果を出すのがプロなのだから、メンタル面も鍛えられるのではないか。

 またラグビー以外でも人が集まる場を目指すならば、商業施設の併設が望ましいだろう。そうすれば男女問わず幅広い年齢層が足を運ぶ拠点となる。すでに日ハムはそこを目標に動き出している。何度も言うが、後発なのだからそのあたりのケーススタディには恵まれているというのに、そういうところだけはラグビーの特殊性を盾に、目を閉じ耳を塞ぐから、東大阪市に呆れられ花園ラグビー場のような悲劇が起こると思うのだが・・・・。

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 確かにラグビー専用スタジアムの建設にはリスクが伴う。しかしだからこそ知恵を絞ればやりようはいくらでもあると思う。そういう意味では、本拠地をラグビー以外のプロスポーツが居並ぶ関東周辺に安直に拘る、League ONE の中の人たちの見識を疑うのは私だけだろうか? 地方でやるからこそ大切にされるという発想はなかったのか? まるで昭和末期の低迷から脱せなかった頃のパリーグの偏ったチーム分布(関東:3 近畿:3)を彷彿とさせ、いきなり躓くと思うのだが・・・・。

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 ラグビープロ化のリスクの一つに、図表にも記しましたが、公式戦の少なさと同じく保有選手の数の多さが挙げられます。しかしこれも逆手に取るべきだろう。チームにとって選手たちは商品。ファンに対してどうやって訴求、プロモーションを行うかを考えた際、その多さはむしろメリットになる。

 たとえば再び芸能界の話になるが、アイドルを一昔前の様に、郷ひろみ山口百恵松田聖子田原俊彦中森明菜、などなどピンで売り出すのは事実上もう不可能だそうです。理由はいろいろとあるのだろうが、一言でいえば多くの人々のニーズをたった一人で背負い賄うのは無理って事。思い返してみれば、郷ひろみは ”新御三家” 、山口百恵は ”中三トリオ” でデビュー当初は売り出していましたわ。田原俊彦も ”たのきんトリオ” だから決してピンではなかった。そこらあたりからシブガキ隊や少年隊など最初からユニットがメインになり出し、ヒカルGENJI、SMAPを境にどんどん構成人数が増えて行って、ついにはAKB48に行き着いた。もうEXILEが何人で構成されているかなんて、そうそう知っている人はいないだろう。

 ラグビーの話に戻りますが、まずは一人の大スターを生み出すなどという大それたことを考えるのではなく、最初から15人を擁するユニットを組ませて売り出す感覚で選手たちを眺めてみれば良い。まずジャニーズ系ならバックスに必ずいる。ノッポもデブもチビもすべて揃うし、EXILEのようないかつい兄貴タイプがお好みなら、三列に日焼けして墨の入った奴なら腐るほどいる。なかには新宿二丁目の熊専のお姐さん方を虜にできるような逸材までご用意できます! つまりあらゆる嗜好を満たせる要素がラグビーには詰まっているのです。まさにONE Team!

 多くの人々のニーズという観点で言えば、最近の犯罪防止などのポスターの変遷からも、大人数によるユニットの優位性が見て取れる。

 たとえば一昔前、平成の中頃までであれば、江角マキコあたりが決めポーズで、「痴漢? みっともないからやめなよ!」みたいな喚起ポスターが主流でした。まぁ最近でもこういうのがありましたわ、

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 つまりはこういうやつ。江角マキコはあくまで私の想像上のものですが、独りで吠えたり注意を促すタイプのやつが主流だったはず。

 ところが最近のはこんな感じなんですよ、

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 つまり色んな年齢層に対して、それぞれが強みを活かして訴えかけることで犯罪を防止しようということか。漫才師が独りで叫んだところでたかが知れてるけど、ユニットでかかれば誰か一人ぐらいは、この人が言うんなら聞こうかな、っていう感じにさせてくれる。時代劇や演歌歌手の大御所がいればジャニーズのリーダもいる、EXILE系もいるしモノマネタレントにAKB系に正統派アイドルも、つまりは色んな要素を織り交ぜれば注意が行き渡るだろうと。それは裏を返せば老いも若きもそれぞれの嗜好に多様性の波が押し寄せ、それがすでにニ、三度往復した、そんな時代になっている証ではないか 。

 もう一度ラグビーに戻る。確かに保有選手の多さはチーム運営上のネックである。しかし、個性的な選手が集まっているからこそ、いろんなプロモーションが打てて、男女の別は勿論、あらゆる年齢層のファンを呼び込めるのではないか、そう経営層が気付いてくれる日が遠くない未来にやって来ることを信じたい。

 主催試合は年に多くて10試合。となれば、少なくとも三万人のキャパのスタンドを毎試合満員のファンで埋めるぐらいでないと選手を喰わすことはできない。あらゆる意味で選手の可能性を、どこまでファンと一緒になって親会社が信じられるかが今後の鍵になるのだろう。

 恐らくラグビーはプロ化に最も向かない競技だ。世界を見渡したって成功している事例はほとんどない。この日本で、「まだ世界にないリーグをつくろう」とするのも大いに頷ける話。しかし、である。結局のところ新リーグの肝となるはずであった独立法人化に踏み切ったチームが、東芝と静岡(ヤマハ)だけってところが残念でならない。 退路を断って、リスクに挑む覚悟がなければ成功などない。これはなにもラグビーに限った話ではないではないか。今、新リーグに欠けているもの、それは即ち覚悟だろう。しかし、それもいつか必ず・・・・。

 ひとまずは、League ONE を信じることから始めようと思う。

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