Till Eternity

どこよりも遅く、どこよりも曖昧に・・・・

大谷翔平 賛歌(一部修正あり)

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 本日発売の雑誌「Number」で大谷が特集されています。おそらく都内では昨日の夕方あたりには書店の棚に並んでいたかもしれません(書いていたのは9日でした、テヘッツ)。まぁそれに先手を打とうというわけではなかったのですが、極北に位置する当ブログとしても独自性を貫く意味で、メジャー誌が取り上げる前に書いておきたい、というのが少なからずありました。万が一にも内容が被ってしまった場合に備えて、ええ。杞憂に終わるようですが。

 恐らくは登板の際にマウンド上でやたら帽子を脱ぐとか、前髪を利き手でかき上げ過ぎとか、初回から汗ではなく整髪剤? ですでにびっしょり濡れてるぞとか、そんなところに言及するような雑誌はないのでしょうけどね。

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 私が少年の頃、深まる秋と共にメジャーのチームやオールスターなどが日本にやって来て試合をすることは、今以上に決して珍しくはなかったが、そんな環境下にあってすら、

「大リーグでホームラン王争いするような日本人が出れば良いよね!」

 というような会話を無邪気に交わすことは皆無だった。もしそれをしたら、「お前の頭の中、虫湧いてるのか?」 そう罵られたことであろう。レベル的に日本人では真のホームランバッターは無理、ということを子どもながらも理解していたように思う。

 私の場合当時から、殊野球の知識においては誰からも一目置かれていたので、その品位を保つ意味でも、そんな台詞を口にすることはなかった。仮にそれが夢の中の話であってもだ。もし、仲間の誰かが妄想の一環としてそのような発言をした場合、

「・・・・っていうか、そもそも王も張本も金田も日本人やないやんけ!」

 という危険な香りのする突っ込みを入れる輩もいたりするので、収拾がつかなくなることも予想され、ここより先は進むことの許されない領域、このままではそこに足を踏み入れることになりかねない、気をつけねば、子供心にもそう思ったもんである。

 

 それでは今から三十年以上も前の子供たちにとって、メジャーリーグというのはどのような存在であったのか、大谷を呼び水に知ってもらいたいと思うので、少し書いてみよう、

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 われわれが子供の頃のメジャーリーグとは大リーグであり、そして何といってもそれは星飛雄馬と一体化していた。しかし間違ってもそのギブスがMLBの機構そのものを養成するというのではない。そんなことは正力松太郎でも無理であろうから、恐らくは ”大リーガー養成ギブス” の誤りであろう。

 しかも「巨人の星」は、星飛雄馬読売ジャイアンツのエースの座を目指すというストーリーであり、劇中にその延長上で大リーグ入りというような仕掛けもない。大リーグ養成ギブスや大リーグボールは、いわばキャッチーなアイテムで、あくまでも巨人軍のためのダシに過ぎないのであった。

 ではわれわれが子供の頃に、リアルにMLBの存在を何から知り得たのであろう。そこはやはり毎年のように訪れては去る助っ人外国人から、ということになるのではなかろうか。

 元大リーガーだとか、元バリバリ大リーガー、現役元大リーガーというのもあった。種を明かせばみんな ”元” 。とにかくいろんな触れ込みでNPB各チームにやって来た。そんな中、私のような阪神ファンに最も大リーグについて思いを馳せさせてくれたのは、76年に来日した初代赤鬼こと先日亡くなったハル・ブリーデンだろう。

 先ほど私は子供の頃から野球の知識については一目置けれていたと書いたが、そんな私にも師匠がいた。私より二つ上のチームメートで、ある会話を元に、私は彼を私淑するようになったのであるが、その会話とは以下のようなものであった、

私:「明日の巨人戦観に行くねんけど、田淵のホームラン捕りたいから、グローブ持ってレフトスタンドで応援するんや」

師:「羨ましいなぁ、せやけどレフトはあかん。田淵のホームランはポールを巻いてアルプスに飛び込むんや」

私:「ええっ?・・・・、確かに・・・・。(尊敬)」

 まさに核心を衝いた一言であった。そんな師匠に開幕直後から活躍するブリーデンについて訊ねたことがあった、

私:「ブリーデンって、凄ない?」

師:「あいつは大リーグでもシーズン15本のホームランを打ったことのある本物。絶対にやるやつやで」

私:「すごっ!(納得)」

 またある日のこと、

私:「ブリーデンって、いつも口の中でクチャクチャやってるけど、あれってなんなん?」

師:「あれはなぁ、噛みタバコや。大リーグでは常識」

私:「・・・・すごっ!(本人にあまり関係なし)」

 さらにある日のこと、

私:「ブリーデンって右手の親指に輪っかしてるけど、あれってなんなん?」

師:「あれはなぁ、詰まって痺れたりするのを防ぐんリングや。もちろん大リーグではみんなしてるんや」

私:「・・・・すごっ!(特に本人関係なし)」

 またまたある日のこと、

私:「ブリーデンって左投げ右打ちやん。あれって珍しいの?」

師:「むっちゃ珍しい。でも大リーグには結構いるらしい。日本では過去に一人、阪急で活躍した山田伝だけらしいな。アメリカ出身の日系の選手で、なんでもその選手はボールをヘソの前でポケットキャッチするので ”ヘソ伝” って言われてたらしいで」

私:「・・・・ヘソデン?・・・・、すごっ!(もはや本人にまったく関係なし)」

 そんな風に、私はメジャーリーグというものを知っていくのであった。しかし当時の私にとって太平洋は途方もなく広く、そして遠く、MLBは文字通り海の向こうの存在であった。それ故、盛りを過ぎた選手の時折垣間見せる残光であってさえも眩しく映ったものである。

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 ここまで来て、まったく大谷について書いていないことに気付きました、テヘッ。でも、それで良いと思う。正直言うと、彼についてあまり書く必要を感じていないのです。

 今シーズンも残すところ後一カ月弱、彼のプレーをテレビやネットを通じて観て、記憶に焼き付けてもらうことこそが一番だと思うのです。言葉では尽くせない。みなさんが観たまんま、感じたまんまが大谷翔平なのでしょう。

 大谷が素晴らしい選手であることが、誰の眼から観ても明らかだからというのもあります。無尽蔵の可能性がそこにあって、間違いなくMLBに一つの時代を築くでしょう。強面の選手が集まる中、ハリウッドスターのようなスタイルで、子犬の様に愛くるしい、そういわれる彼の存在は、もはやメジャーリーグに欠かすことのできない大きなパーツなのです。

 日本人はメジャーではパワーに劣る。これは真理でもあった。しかし大谷はそれを結果で、数字で・・・。

続く(途中で寝てもうた、アワワ