Till Eternity

どこよりも遅く、どこよりも曖昧に・・・・

ラグビーにニーズはあるのか?

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 去年の秋、ラグビーワールドカップ望外なまでの大団円のうちに幕を下ろした、と先日書きました。そういうこともあって、この国のラグビーを取り巻く環境にも大きな変化が見られるようになりました。ラグビー日本代表の選手たちは地上波のテレビにたくさん出たそうです。まぁ、稼げるうちに稼いで下さい、とだけ申し上げておきます。

 そして私のような一介のラグビーファン、あの人ラグビーが好きで、昔ちょっとやっていたそうよ、という者に対する反応まで少し変わったような気がします。お裾分けに預かるような目には決してあってはいませんが、いろいろと祝福というか労いの言葉をいただきました。

「よかったですね」

 昔、庭で飼っていた、決して頭がいいわけではなかった犬がようやく芸を覚えたのを、お隣の猫好きのおばさんに目ざとく見つけられて褒められた時のことを思い起こしました。

「ありがとうございます(棒)」

 愛犬の代わりにそう頭を下げてお礼を伝えました、ええ。

 

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 中にはこれを機に、ラグビー楽しんじゃおうかな、っていう方もたくさんいます。皆さんの周りにもいるのではないでしょうか?

 「リーチって英語も喋れるんですね、流石です♪」

 ボケてるのか素なのか、その判別に苦しみました・・・・。

 もう、開幕前には「日本代表っていっても半分は外人じゃね」と吐き捨てられ、ヒールのレスラーのように一番痛いところから真っ先に責め立ててきたというのに、まったくそういった声は聞こえなくなって、あらためてスポーツの持つ漂白力をビシビシと感じています。

 「RGの恰好している人、たくさんいましたね♪」

 ”それリーチやし!”

 そう突っ込むのはやめときました。きっかけは何でもいいのですよ、ファンになってくれさえすれば。

 「トンプソン、最後まで渋かったすねぇ!一人だけ短パンにメガバンクのロゴが入ってましたけど、個人的なタイアップですか?やるわーっ♪」

 ”えっ、そこ?”

 思わずそう叫びそうになりましたが、あれは明らかにレギュレーション違反です。破れまくってストックなくなってPNのを履いたんでしょ。

 「田中まで髭はやしてましたけど、ラグビー選手って、みんな髭伸ばさないとダメなんですか?」

 「うん、山中のためにね!」

 そのセリフを思わず被せそうになりましたが、既の所でとめましたよ、良かった、人として

 ”天国のお父さん、お母さん、僕もようやくまともな大人になれました、褒めて下さい!”

 まぁ、そういうわけで、ラグビー世間の皆さんに注目されたというのもそうですが、何より多くの方に楽しんでもらえた、ということが嬉しい限りですね。観れば観るほど面白くなるスポーツなので、にわかファンの皆さんにも末永く楽しんでもらいたいものです。

 

 <本日のお品書き>

 

ワールドカップ招致の裏

 ラグビーワールドカップが日本で開催されることが決まった当時、大丈夫か? という声が多く聞かれました。私もそりゃそうだ、と日本代表のあまりのダメっぷりに素直に納得しました。実際のところ今もってそうですが、ラグビーマイナー競技でしかなく、当時はアイコンになるような選手もいません。更にはリーマンショックの真っ只中ということもあり、弱気な発言が大勢を占めました。

 それにあまり知られていませんが、実は招致活動もその途中までは単独開催には全く拘っていませんでした。香港シンガポールも巻き込み、初のアジア開催的な位置づけでプレゼンしていた時期もあったのです。背景には票集めもありましたが、資金、そして何より集客に自信がなかったのだと思います。箱は腐るほどありますが、それを埋めるだけの人を用意できるのか、そこに問題があったのです。例えばプールの四番手と五番手の試合なんて、そうそう集まるもんじゃありません。因みにそこについては今回も如何ともしがたく、自治体による動員はあったようです。

 結局、国際ラグビーから物言いがつき、渋々単独開催に舵を切ったように映りました。このあたりは泣く泣く共同開催を受け入れざるを得なかったサッカーのそれとは真逆皮肉なものです。

 大したライバルも現れず日本に決まったのも、世界的な不況に恵まれたのかもしれません。どこの国の景気も悪かったのです。そして、決定した直後、大変なものを持って帰って来やがって、そういう雰囲気が漂ってなかった、といえば嘘になるでしょうね。日本開催はそんな中で決定し、そして走り出したのです。

 もちろん心配性の私はというと、開催決定から開幕前までほぼ十年に渡って不安に駆られ続けました。しかし、それとは裏腹に、案外いけるかも、と思わないでもない部分があったのも事実です。

 

漫画喫茶でラグビーの需要を推し量る

 私は三カ月に一度くらい、つまり季節の変わりに促されるように漫画喫茶インターネットカフェに入って、週刊漫画雑誌を片っ端から読み込むようにしています。理由はというと、もちろんラグビーのためです。

 でも、決してラグビーを題材にしたものを探すというわけではないのですよ。二、三年に一本ぐらいですかね、それを見つけたりしますが、そのほとんどが三カ月ぐらいで打ち切られています。そもそも15人でやるスポーツは漫画向きではないのです。描き切れません。去年も連載があったようですが、速攻で終わっていました。

 そこではストーリーを追うことはしません。連載第何回とか、単行本第何巻とかの数字、面白さはそれに比例し、直接それが人気を示す指標になるので、読者の支持の有無だけを確認することにしています。

 ではどんな漫画に注目しているのか、それは格闘技系です。

 特に少年や男性などが、屈強な敵とガチンコ勝負する、そんな漫画がどれだけあるのかを数えるのです。そしてそれはたいてい一冊につき一本はあります。

 何故それをするのか?そうすることで潜在的ラグビーの需要を確認できる、そんな気がするのです。

 漫画を流し読みしていて感じるのは”闘い”に対する需要の高さです。闘いの舞台はスポーツである場合も多く、ボクシングや柔道、また”戦い”として球技モノもほぼ定番になっていて人気の高さがうかがえます。それは私の子供の頃と案外変わっていません。今の子供たちにも、自分と同じような心が流れているのだな、そう自らに言い聞かせる時、少し安心したりします。

 逆に変わってきたな、と感じるものもあります。それは格闘技モノにおける対戦相手のサイズです。主人公の二倍もあるような、そんな描かれ方をするものが結構増えているのです。

 私の幼いころの場合でいうと、柔道プロレスの漫画にそういう傾向があったように感じますが、それでもリアリティを持たせるためか、それなりのサイズの範囲に収まっていたように思います。もちろん、大型ロボット怪獣などとの闘いを描く幼稚なものもありましたが、今はもっと現実的な設定(そこが作者の腕の見せ所かと)の中で、大きな敵に立ち向かう、そんな構図のものが多いのです。敵の強さがインフレを起こし過ぎたせいで、結果としてサイズにもそれが反映したものになっているのかもしれません。

 

ラグビーの醍醐味とは

 ”柔よく剛を制す”。日本人の心をしっかりと掴んでいる言葉だと思います。相撲でも小兵力士に殊の外人気があるのは頷けます。ですから、至極単純に申し上げれば、”闘う”相手が大きければ大きいほど面白い、そういうことかもしれません。強大な敵を倒した時、それは胸のすく思いをすることでしょう。そういうこともあるのか大きな敵が描かれる、そんな漫画が増えたのかもしれません。人気作品になると男性に限らず、女性のファンも多いのだそうです。

 きっとゲームの世界なんかもそういう傾向にあるのでしょうし、その影響も強く受けているだろうと思っています。

 でっ、当たり前といえばそれまでなのですが、漫画は漫画、ゲームはゲーム、ということで、あくまで虚構の世界なわけです。なので、すべての読者がそう思っているとは限りませんが、やっぱり現実の世界でそういうのがあれば凄いな、っていうのは根強くあると思うのです。じゃあ、それはどこで叶うのか、もしくはどこでリアルに観れるのでしょうか?

 武道には基本的に階級制という枠があります。格闘技全般もガチ度が高いものほど階級制が導入されていて、それがないのは相撲を含めたファイティングオペラ系のものばかり。まぁ、最近の相撲は色々とあって変わってきているようですが、逆に心の入れ替え度合いが高くなればなるほど、力士のサイズは均一化していく傾向にあるようにも思います、っていうか、普通そうなっていくでしょ。

 では、階級制ではどうなのかと問われれば、日本人が重量級で活躍できる世界というのは、もうほとんどありませんお家芸である柔道でも08年の石井慧選手以来、金メダルからは遠ざかっています。ボクシングの世界はもちろんのこと、打撃系の総合格闘技などは、重量級で活動する日本人のその姿すら、残念ながら私には想像できません

 まして”柔よく剛を制す”よろしくどこにでもいるような等身大の主人公大男をなぎ倒すそんな世界観というのは現実的にはなかなか存在するものではありません。だからそれを望む人は割り切って筋書きのあるショーを観に行くか、漫画やゲームの中に戻ってそれを探すしかないのです。

 私はそこに光明を見る思いがしました。

 もうここまででご理解いただけたと思います。ラグビーの中にそれはあります

 でもほとんどは逆で、大男に小兵はぶっ飛ばされる、そんなシーンの連続です。しかし、たとえミスマッチだとしても、身長170cmにも満たないSHが2m強のロックに対し、たった一人で覚悟を決め足元めがけて飛び込む、それをしなければならない場面がある、それがラグビーなのです。

 そしてそれこそがラグビーの醍醐味なのです。

 どうか、これからも御贔屓に、そう願いたいものです。