Till Eternity

どこよりも遅く、どこよりも曖昧に・・・・

2019ラグビーワールドカップ開幕前夜

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 ラグビー日本代表の活躍で巷を大いに沸かせたのは去年の秋のこと、あれから半年以上になります。日本ラグビー界はその熱量を追い風にしてトップリーグを盛り上げようとしていましたが、あいにくのコロナ感染渦で早々に今シーズンの中止を余儀なくされました。追い打ちをかけるように、先週日本代表のテストマッチの延期が決定。せっかくあれだけ盛り上がったのにと、ラグビー関係者の歯ぎしりの音が聞こえてきそうです。

 

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 しかし、である。何もラグビーだけが自粛しているわけではありません。国内だけではなく全世界ですべてのスポーツが一斉に止まりました。ですから、ここはポジティブにその現実を受けいれましょう。
 今、世界中の人々は等しく、スポーツが織りなす一篇の大活劇、その予告編を観ることすら許されてはいません。だから誰もが筋書きのないドラマに飢えているのです。我々の脳内のスポーツに割り当てられたメモリも、今年に入ってから一切更新されていません。つまり、いまだ去年の秋のラグビーワールドカップあの感動こそが、最新の出来事なのですよ。その証拠に、というか何の証拠にもなりませんが、私はと言えば、春先よりこの方、ずっと開幕戦から一試合一試合、すべて改めて見直しているほど、頭の中は今でもラグビーワールドカップ去年の秋でしっかりと時間を止めているのです。

 

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 いやぁ、やっぱりラグビー良いですよね。ワールドカップの盛り上がりは、日本スポーツ史上、ある意味最高だったのでは?
 日本代表がどうこうというよりも、スタンドの雰囲気観客の反応、そしておもてなしの演出も、”これ本当に日本なの”っていうぐらい気が利いていました。海外から来た観客の方にも十分に楽しんでもらえて、それがこちらにも伝わって来て、もちろん我々との交流もふんだんにあって、あんなにインパクトのあったスポーツイベント、これからもそうないと思います。
 というわけで、コアなファンもにわかファンも、あの感動を決して忘れてはいません。そしてそのみんなが、ラグビーの再開を待っています!

 

www.theguardian.com


 とはいうものの、正直、開幕前はどうなるのか、真剣に不安で仕方がありませんでした。アジアで”最初”の開催でしたが、実際のところ日本ラグビー界にとってあの大会は文字通り”最後”のチャンスだったからです。危機感を持って一期一会の意味を噛み締めていたほど。つまりここでいつも通りの平常運転や気合の空回りをやらかしたら、今度こそ間違いなく日本のラグビーは終わっていました
 第一回大会からラグビー日本代表を追い続け、暗黒時代の底の、その底の更に底まで見せられてきた身とはいえ、ここで負けたらすべての底が一気に抜けて雪崩を打って崩れ落ち、もう天井や底もあったもんじゃないぞ、そんな悲痛な思いで人生で一度しかない母国開催のラグビーW杯を迎えることになりました。

 そんな私の当時の日記、人知れずそのうちブログでも始めるか、っていう薄っぺらい想いでつらつらと書き連ねた落書きを、望外なまでの大団円のうちに幕を閉じたことを知る現在の視点から突っ込みを入れながらご紹介いたします。

 

TE's 日記(2019年9月中旬頃)

 ラグビーワールドカップが始まる、というか、もうすぐそこに始まろうとしている。五輪以外では、我が国初の超大型スポーツイベントの単独開催である。少しはワクワクしていいものであるが、今の私はというと期待よりも悲壮感に圧し潰されそうである。

やっぱり入りからこんなこと書いているよこの人・・・・

 ラグビーワールドカップというのはその期間中、当たり前の話だが来年の五輪のようにいろんな競技があるわけではない

そりゃそうだ

そこには屈強たる男たちラグビーしかない。この機会にと興味を持った方々も、きっとラグビーだけと向き合うことになるのでしょう。

そんなやついねぇよ

 しかも一か月半の長丁場である。一体、ライト層はどのような反応を示すのだろうか。

あっという間の一か月半でした

 もし日本代表が早々に敗退、というか無様な試合を予選で繰り返そうものならと、私の不安は尽きない。

ほんとうに心配だったわ、あのころ・・、っていうかそもそも予選じゃないし

 当然、ラグビーの中の人たちは誰もがワールドカップを通じてラグビーを文化としてこの国に云々と唱えている。傍らにいる私ですら同じ思いだ。

おまえがいうな

 何とかしてラグビーという競技を日本に根付かせたいと切に願っている。

だから、おまえがいうな

 協会はこの大会のキャッチフレーズを”一生に一度!”と銘打った。正真正銘今回が最初で最後のチャンスってわけだ。つまりそこに退路はない

そこはそのとおり

 果たしてラグビーワールドカップがどのような形で人々に受けとめられるのか、正直わからない。日本代表の勝敗よりも混沌としている

まあ確かに、心配のタネでしたよ。

 ただはっきりしていることはその位置関係だろう。”人々の受けとめ方”というのは日本代表が闘った”結果”の、その奥にあるということだ。

ちょっと何言ってるかわからない

 更に言えば、”ラグビーが文化として根付くこと”はその先、遥か彼方にある。

そんなに遠いんかい?

 つまり、人々にラグビーを受けとめていただいて、大切にしてもらうためには、まずは手前にある日本代表の試合結果が、心に響くものであるということが前提となる。

まぁ、いいか

 ハードルは決して低くはない・・・・否、かなり高い

どっちやねん!

 前回のワールドカップで我が日本代表はスポーツ史上最大の番狂わせを起こし、それは多くの人々の心を大いに揺さぶったと思う。

そらそうよ

 じゃあ、今どうかと言えば、4年も経ち大半の人は忘れている・・・・。それはまだラグビーが世間に根付いているとは言えないことでわかる。

えっ、そうなの

 じゃあこの大会でどこまで爪痕を残せばいいのか・・・・?私の感覚でいうと、おそらく予選突破ぐらいではダメだろう。

いや、十分だったよ。ってかプール戦だよ、何度も言わすな

 決勝トーナメントで一回ぐらい勝たないと・・・・、それってベスト4じゃん、大丈夫か?

だからそこまで勝たなくても大丈夫だったって

 しかし人々の記憶に残るには勝ち続けるしかないのだ。何度も言うが退路はない

ちょっとくどいぞ、お前は顔もくどいけど

 もしこのチャンスを逃すと、日本ラグビー界は再び衰退の一途を辿ることとなる。

お前に言われたくないわ

 今しがた少し興味を持ち始めた人も、あっという間にここを去っていくだろう。それだけではない、まさに今、ワールドカップを支えてくれている人たちも、ラグビーから静かに離れそして、二度と戻っては来ないかもしれない・・・・。

今はコロナで在宅勤務、会社にも戻ってません

 恐らく残されたいつもの顔ぶれで完全なプロ化を目指すと思うのだが、それはパフォーマンスで終わるだろう。伝統校による内向きな対抗戦思考にどっぷりと浸かった人たちに、それができるとはとても思えないからだ。

こら、伝統校さまを小バカにするな!この不届き者めが!

 でもそれも仕方のない話。ラグビー界における唯一の成功体験、それは旧国立競技場を大観衆で埋め尽くした早明戦や大学選手権以外ないのだから。しかも昭和時代の。

そのへんにしとけ、怒られるぞ

 だからラグビーの良さなんてわからない人にはわからなくていいのさ、だって紳士のスポーツなんだから、とか・・・・、そうやってどんどん細っていく。そんな様が今から目に浮かぶ。

うーん、何言ってるかわからない

 一生に一度のチャンスを受けとめると同時に、その重さで一気に土俵際まで押し込まれたような感じ。

おまえ最近相撲の喩えが多くないか、好きでもないくせに

 私の言う悲壮感、ご理解いただけたであろうか。

はいはい

 勝とうが負けようが一時のもの。そう片付けるのは容易い。

えっ、もうまとめに入るの?

 なでしこJAPANの世界制覇ですら、記憶の片隅で埋もれてしまっている人も多いのだろうし。

サッカーディスったらあかん!

 しかし、サッカー日本代表はロシア大会でベスト16に残り大喝采だったぞ、あれ、なんかハードル低くないか?冷静に思い返せば、大会中一回しか勝ってないし。

おいおい、サッカーファンに喧嘩売ってどうすんねん?

 にもかかわらずマスメディアは手放しで褒めたようだが、果たしてそこに世間の熱量は伴うものなのか、一度検証してみたいと思うが。

あれは電通、いや、だから、これ以上サッカーファンを挑発するなっていうの

 結局のところ、それはサッカー日本代表には、本選に連なる予選も含めて積み重ねた4年で完結する長い物語があるからだと思う。

確かにラグビーにはない

 フランス大会以降、6大会連続出場で5勝し3度ベスト16に残ったという実績は、層の厚いサッカー界にあって中堅国として合格点と言えよう。

中堅国いうな・・・・そうだけど

 じゃあ、ラグビー日本代表はどうなのかといえば、8大会でたった4勝、それも手前の大会で3勝だからそれ以前は1勝(それも最弱ジンバブエから)、第一回から全部出てるけど、それまで何やってたのっていう代物ですわ。

マジでなにやってたんじゃ、特に平尾っ!ああっ・・・つい・・・、ごめんなさい

 出場大会数や試合数はサッカー代表を上回るが、歴史的な積み重ねは皆無、っていうか1試合で145点取られたり、5大会に跨って16連敗とかワーストレコードホルダーの不名誉なものならたくさんある。

だから平尾っ!ああ・・・また・・・すいません

 ほんま、あんたらずっと何やってたん、昭和の終わりから。

そのとお・・・、いや、ああ、また、その・・・・ごめんなさい

 しかもラグビーの場合、サッカーのような量的な層の厚さはないので、今の日本代表でも時折ベスト10にランキングされるほどの薄さ(現在10位、一か月前は9位)

だからサッカーを引き合いに出すなっ!それにちょっと自慢してるし、いやな奴

 だから地区予選に勝っても当たり前の状態なので、そこで勝利を重ねても世間のアピールにはならないという・・・・。

もう地区予選に出ることはない、多分

 しかも格闘技であるため、番狂わせは極端に少なくトップ5の壁は非常に高くて険しい

いやぁ、ラグビーって、ホンマそうなんですわ

 それでも個人的な見立てでいえば、目の前の大会でベスト4の奇跡を見せなければ、ライト層の心をつかむのは無理だろう。

それはやっぱり無理だったけど、心はつかんだっぽい

 嗚呼、もう少し昭和の終わりから真剣に日本代表の強化に取り組み、それなりに人々の心を定期的につかんでいれば、この大会に課せられたハードルはもう少し下がったというのに、今まで何してたんだよ。

代わりに謝るわ、すまんかった

 ラグビーワールドカップにおけるほぼすべての試合を観戦している。別に自慢じゃない、暇なだけ

おまえホントに最近ラグビーばっかり見てるな、嫁に逃げられるぞ

  最初の大会が開かれた当時、”国際化”というのはビジネスの世界の言葉で、まだスポーツには馴染んでいなかった気がする。

 気のせいじゃね

  オリンピックは注目度も高く、世間に浸透してはいたが、それはどちらかといえば4年に一度、普段は光を浴びることの少ないマイナーな競技のお披露目の場のような感じだった。

 おいおい、次はレスリングか?

  だからメダルを取って時の人が現れても、その競技自体に対しては、「また4年後を楽しみにしているからね」って感じで、いやいや毎年普通にやっているけどとは誰も突っ込みませんでした。

水泳や柔道の悪口を言うな!

 一番人気のプロ野球からしメジャーへ挑戦を口にする選手は皆無、誰もがそんなレベルの試合を満足して観ていました。私もそんな一人です。

野球だけはやめとけ、敵に回すと大変!

 だからラグビー日本代表が世界のチームと試合をすることには期待と同時に違和感が交錯する、そんな感じだった。

そんな感じだったかもな

  第一回大会はNZとオーストラリアの共同開催だった。時は昭和最晩年の62年。日本は協会からの推薦という形で後ろめたく出場。

ええ、まぁその・・・

  確かワールドカップ開催の実現にはKDDマツダ、横河など日本の企業がかなり深くかかわり貢献していたと聞きました。

おまえ試合より脇の広告の看板ばっかり見てるだろ

  注目度はというと、当然のように低く、夜中にNHK録画で放送してたかな。

なんかそうだったかな

 その栄えある日本代表の初戦の相手はアメリカ、少し格下で日本ラグビーが国際舞台で狼煙を上げるには絶好の相手でした。

そうだったそうだった。

  同じグループには強豪2チーム、宗主国イングランドとオーストラリアがいたので、初戦のこの組み合わせは少し異例だったように記憶している。日本企業への配慮が伺えるマッチアップだったかもしれない。

せっかくお膳立てしてくれたのにね

  ところが勝てる相手だったアメリカに惜敗。敗因を上げればいろいろとあるのでしょうが、最大のそれはプレイスキックを10本中8本も外したことでしょうね。まぁ、そんなことでは勝てる試合も落としますよ。

それ今回田村がやらかすと思ってたわ。

  2戦目のイングランドには大敗、最後のオーストラリアにはスコア上はそこそこでしたが、すでに決勝R進出を決めていた相手が無理をしなかったというのが本当のところ。

確かにそうだがもうそのへんにしとけよ

  思い起こせばその最初の試合がその後の日本ラグビー界の長期に渡る低迷を見事に暗示しているように思います。

おまえ占い師なの?

  この第一回大会のありように、平成に入って以降も何度も繰り返されるがっかりの様が縮図のように・・・・・・

 

まだまだ8回大会まで延々と日記という名の愚痴は続くのであった。